第27首 初穂の月影
※このノートでは、秋の和歌をご紹介します。各和歌のイメージを記した【イメージ】のあとに、【ちょこっと古語解説】というパートを設け、和歌中の古語を簡単に説明しています。和歌によっては、【ちょこっと背景解説】というパートがあるものもあり、そこでは、鑑賞する際に知っておくと、より深く和歌を味わうことができる知識をお知らせしています。
秋の夜も ややふけにけり 山鳥の をろのはつをに かかる月かげ
《あきのよも ややふけにけり やまどりの おろのはつおに かかるつきかげ》
(続後撰和歌集/土御門院《つちみかどのいん》)
【イメージ】
向こうの森から聞こえる山鳥の声。
その尾のような初穂は神への供物。
いつの間にか秋の夜も更けていたようだ。
祭壇を染める白い月光から今気がついた。
【ちょこっと古語解説】
○にけり……「に」は、元の形は「ぬ」で、完了を表す助動詞。「けり」は、今気がついたことを表す助動詞。全体で、「~したのだなあ」ほどの訳。
○山鳥のをろの……「山鳥」は、野鳥で、キジに似た日本の固有種。「をろ」は、尾のこと。次の「はつを」を導くための前置きの語句。この語句自体に意味は無く、「はつを」を言いたいがために前に置かれている。このようなある語句を導くための七音以上の前置きの語句を、序詞《じょことば》と言う。
○はつを……初尾と書く。元、初穂と書き、その年最初に実った稲の穂のことで、神仏に供えられた。
○月かげ……月の光のこと。「かげ」は、古語では「光」のことも指すので注意。
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