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YOASOBI「夜に駆ける」の原作小説「タナトスの誘惑」まとめ(ネタバレ)

 ものすごく短い作品で、詩のように醸成された文章でかかれています。現代的であり、オチにビックリもありで面白い作品だと思います。

 自殺志願の女の子がビルの屋上にいる、僕が助けに来るのももう4度目となる。彼女には死神が魅力的に見えるらしく、その恋心は揺れ動かない。僕は彼女を止めようと呼びかけるが、彼女は死にたいと言う。そして言ってしまう僕も死にたいと。彼女こそが僕の死神だった。二人は夜空に駆け出してしまう。

 短い作品でドッキリさせるのは手練れでないとできません。こういった作品は書き続けることが難しく、技術やアイデアが豊富に必要でいつも同じやり方だと飽きられてしまいます。そんな意味で、この作家さんの才覚はショートショートや、ミステリー小説のへの才能に近いかもしれません。
 シーンもキャラクターもどこかで見覚えがありますが、死と恋を上手に掛け合わせているところ、オチがギリギリまで見えないところ、そして心にのこるところ、が良いポイントと言えます。

 YOASOBIというユニットの代表曲の元ネタになったことがこの作品の運命です。でも作家の女性は自信が小説を書くこと、に熱中しないことが見えているんじゃないかなというニュアンスも感じます。なんとなくですが。作品は自分のことではないし、様々な既視感のあるもののありあわせであることで、要領よく作った、という印象をご自身が何より痛感しているのかもしれません。作り続ける意思があるならば、情熱の片りんを感じるものになると思います。
 こういったライトな読み物が非常にうけるという土壌があることと、何より夜に駆け出すというワードセンスが音楽という二次創作での飛躍を見ました。

 小説はそれ自体で完結せずとも、イメージの源泉として光を放ってもいいものなので、こういった目立ち方もあっていいと思います。

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 自殺の話、が元ネタということでYOASOBIの曲も聞いてたら死にたくなるんじゃないかという風評が立ちそうですが、この小説は良くも悪くも技術的に作らており、作者も自殺志願者ではないと思います。
 そのタナトスという表現はリビトー(生への欲求)と対照されるものですが、「よくわかんないけどそれって恋みたいなもの?」という、作者の星野舞夜さんの無邪気な解釈は子供っぽいところすらあります。あくまで小説のトリックとしての自殺でしかなく、人生テーマではないようです。

 上から偉そうに解説しましたが、面白かったです。

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