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真雪アナザー [2]

○登場人物紹介
・真雪(まゆき)
自称ちょっと憂鬱なセブンティーン、確かにちょっとはそうだが確かにちょっとである。自分で思っているより自己分析が得意で客観視を自然に行える、が気付いてやってるわけではないので得意なんだかどっちだか分からないかもしれないがそのバランスが味を出してる(はず)。無意識のバランス能力とタイミングの良い大胆さが役立つのはもう少しあとの話。
・沙衣(さえ)
からかい上手の高木さんみたいな髪型をしている。高木さんよりは丸顔。真雪とは中3からの知り合いだがそれから4年間同じクラスで行動のほとんどを共にし、真雪にとって唯一無二の友人。明快な思考から柔らかな受け答えができる、故にからかいの表情を度々する。怒るとより歯に衣着せぬ物言いになり言われた方はなかなか堪えるが内容に筋が通っているので言い返せない。

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「真雪、まだ言えてないの?三者面談始まっちゃうよ」

卵焼きを箸で掴んだままぶらぶらさせながら得意のニヤニヤ顔で沙衣は言った。

「わかってるから困ってる」
「困ってる顔だから言ってる」
「それもわかってる」

細いストローでピルクルを飲みながら沙衣のおでこと生え際を眺めながら真雪は生返事をする。
そんな真雪を見つめてから少し目を細め口をニコッとさせながら沙衣は言葉を続ける。

「明日やろうはバカ野郎だよ」
「じゃあ私は昨日の明日が積み重なってバカの十乗だよ」
「あたしは真雪はバカじゃないと思うけどなあ」
「私だって早く言い出したいよ、そして今日はホントに言い出すつもり」

ぼんやり朝の決意を思い出した。桜が舞い落ちるのがやけにゆっくり再生される、花びらは落下速度に合わせて淡いピンクから鮮やかな桃色へ変化していく。つい数時間前の記憶だって切り取られて一部分になって美化される。17歳の真雪には心を打つ情景はそうして長い人生の贅沢品として蓄えられるということを知らなかった。

弁当箱を袋にしまい机に肘から大きく腕を伸ばすのに合わせて沙衣は「えいごぉぉ」と言いながら突っ伏した。

「あ、英語」

真雪は右手を口にあて目を見開いた、今の今まで予習を失念していた。
そんな真雪をクスと笑って沙衣は顔を上げた。沙衣にとって真雪のこの表情は見慣れたものなので顔を上げてフフと口元が和らぐ。

「また予習忘れたんだ真雪ちゃん、また忘れたんだ。なんと単語テストもあるよ」
「はあ、終わった」
「何も始まってないでしょ、ほらあと20分でやるだけやりな」
「は〜い」

バババッと弁当をカバンに片付けそのままその手でファイルから英語のプリントを取り出し机に広げる。たぶん沙衣は10分くらいしたらヒントを出しながら手伝ってくれるだろう。そんな淡い(甘い)期待を抱きながら英文を左から右へ読みつつ動詞を薄く丸で囲んではまた左から右へ視線を追う作業に意識を注いだ。

遠出の散歩