四話タイトル

4-1 福海大学いきなりのボス戦闘


風景 (31)


 タブレットをにらみながらナミが叫ぶ!


メインキャラ (12)

「来るよ! ボス戦だっ」


キャラ (1)

「い、いきなりかよ!」


 ――最後の火属性

 そいつを探して俺たちは『福海(ふくみ)大学』を訪れた。

 属性の『傾向』をざっくり言うと、こんな分類らしい。

 情に厚く前向きだが、ちょっとうるさい『火』

 優しく穏やかだが、ネガティブな『氷』

 こだわりや自意識が強く、我が道を行く変人『風』


メインキャラ (2)

 高校からの友人『カスガ』は、友情を大事にする熱い男だ。

 ……少なくとも表面上は。

 なんだかんだと、アリバは俺のまわりの人間関係ばかりだし、カスガが火属性のアリバであっても不思議じゃない。

 大学はいま夏休み中だったが、卓球部に所属するカスガは、今日行われる全国卓球大会の予選に出場するため、ここに居るはずだった。

 大学に到着するなり、俺たちは挙動不審の男に出くわした。

 男は手に鉄の発煙筒のようなものを持っていた。
 
 そいつを見てナミが叫んだのが冒頭のセリフだったってわけだ。


pナミ

「相手は火属性っ。氷属性のメンバーをぶつけて!」


pハヤト

「氷というとヤノだな。いっちょ頼むぜ!」


pヤノ

「……ったく。ひと使いが荒いぞお」


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 ぶつぶつ文句を言いながらも、ヤノは敵に向かっていく。

 相手は宗教の法衣のような恰好をした、どうにも不気味な男だった。大学という場所にまったく似つかわしくないぜ……。


e_33_boss_爆弾魔

「ぬっ。なんだキサマたち! 我が革命を邪魔するつもりか!」


 革命って、そのネタはもう前回やったろ……。

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「腐りきった学府を再建する我が革命の邪魔をする者は、木っ端微塵に爆破してくれるっ!」


 言ってることはご大層だが、ヒョロイし、顔色も悪いしで、見た感じ弱そうだぜ。


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『無邪気な破壊妖精』
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『怒りのメガトンゴリラ』
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『東和の肉弾鬼教官』

……数々の激戦を繰り広げてきた俺たちの相手としちゃ、役不足の感は否めねえ。

キャラ (1)

「なあ、ところで、氷属性って他に誰が居たっけ?」


メインキャラ (12)

「もうっ。今そんなとき? ヤノさんのサポートしないと!」


「ヤノに任せてれば大丈夫だろ」

 ナミはタブレットを見る。

「えと、鼻眼鏡のカムラくん……と、カワハラくん……居たっけ? そんなひと」


pカワハラ

「……っひでっ。居るし」


「そーいや、コイツらのステータスはろくに確認してなかったな」


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 カムラ・カワハラ・ヤギハラの三人については、最初から期待してないもんだから、ステータス画面もまともにチェックしていない。

 なにしろ、あのとき東和で仲間にしてすぐ、ナミのタブレットをチラッとのぞいたところ……


pカムラ

 『カムラ レベル1【缶コーヒー】……自分だけ体力を微回復』


pカワハラ

『カワハラ レベル2【脱兎】……自分だけ必ず逃走(ボス戦以外)』


pヤギハラ

『ヤギハラ レベル1【すり足】……回避率大幅アップ。攻撃力大幅ダウン』


 ……ナメてんのか、というガッカリ技ばかり。


メインキャラ (12)

「……あ、あれ? 前は気づかなかったけど、なんだろこの数値……おかしいよ……」


キャラ (1)

「……それ、もはや恒例になってないか? ……で?」


「カムラくんって、すべての能力値が最低ランクなんだけど、なんか、防御力だけが突出して高いっ。物理防御も特殊防御もSランク。しぶとさで言えば、メンバーでもぶっちぎりの一位だよっ」


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「……まあ確かに保身にかけては天才的な男だけどよ……」

 ていうか、アリバってなんかいろいろじゃねえか? なんでそんなに極端なステータスばっかなんだ……。

「それからカワハラくんってひと。シモカワくん同様【スピードタイプ】なんだけど、そのスピードがちょっと尋常じゃない。Sランク中のSランク。シモカワくんにしたって相当速いのに、そこからさらに一段上だっ。
 おまけにアリバも超強力で、氷属性三人の中でも、属性力だけで言えば、頭ふたつ分くらい抜けてる! コレものすごい強キャラだよ!」


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「……こいつが強キャラ? 信じられねえ」

 俺はカムラの隣で虚ろな目をしたカワハラを見やった。


キャラ (18)



e_33_boss_爆弾魔

「爆発は芸術だあああああああ!!」


 ゴバアアアンンン!

 男の叫びと爆発音がして、巨大な物体が黒い煙を引きながら転がってきた。

 見ると、それは真っ黒にすすけたヤノだった……!


pヤノ

「ぐぐぐ……これ以上は……無理だな……ったくよお」


 ガクッとヤノは気絶。


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pハヤト

「お、おい! なにやられてんだよお前!」


pナミ

「ほら! もう。よそ見してたからっ。ボス戦だって言ったのに油断しすぎ! 相手が使う爆弾は火属性特殊! これ相当ヤバイやつだよ! 属性補正があっても、大ダメージ食らう!」


「かと言って、属性補正のないヤツ出すわけにはいかねえだろ?」

「ほかの属性だと瞬殺されるよ!」

「こうなったら仕方ねえ! 行け! 氷属性のカムラ、カワハラ!」



キャラ (192)

行けって、俺らポ〇モンじゃないっつーの! あんなヤバそうな犯罪者、関わりたくもねえっつーの! だいたい、ヤノさんがぶっ飛ばされた相手に、俺らが勝てるわけないでしょ!?」


キャラ (18)

「え? え? 行くってどこへ? 池?」


キャラ (1)

「うるせえ! 言うこときかねーと、俺がお前らぶっ飛ばすぞ!」


「げえええええ。こっちにも犯罪者がっ。……つーか、前々から言おうと思ってたけど、ハヤトさん、どっちかと言えば悪意寄りだっつー話で……」

 俺はカムラにためらいなく必殺パンチ! バキッ!

「ぐええっ! そういうところが悪意だっつーの!」

 カムラはあからさまなイヤイヤ顔で爆弾男に近づいていく。

 そして、もみ手しながら、おもむろにポケットから取り出したのは……

 白い布切れ?


「ヌヘヘ……降参です。お、俺はあんたの手下になりますぜー……!」

 あ、あいつ白旗かかげて、秒速で裏切りやがった!?


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「む。信念なき者には死を!」

 悪意の男は、そんなカムラの態度に腹を立てたように爆弾を投げる!

 ちゅどーーーーん!

「ぎゃああああああああ! 痛ッ。熱ッ。こ、殺す気かっつーの!」


「ホラ。言うほどダメージは食らってないよ」


 確かに大騒ぎしてるわりにピンピンしてやがる。

 カムラは不満そうな顔で、どこからか取り出した缶コーヒーをグビリと飲んだ。しかも、自前で回復しやがって……。

 とはいえ、まともな攻撃手段もないみたいだし、オトリにしか使えねえか。


「カワハラ! カムラが敵を引き付けているうちに、お前も攻撃しろ!」


 強キャラだなんていまだに信じられないが、あとはコイツに賭けるしかねえ。



pカワハラ

「ええー。おれっすか。だりぃー」


 必殺パ、まで出かかったがグッとこらえた。

 打たれ強いカムラと違って、ヒョロいカワハラは俺がKOしてしまいかねん。そしたら、氷系は全滅だぜ。


「か、カワハラクン……な、ナミが、チミはとても優秀な氷のチカラを秘めているとホメていたよ。ここはイッパツ頑張ってはくれまいか」


「え。そーなんすか。ヨンキュウー

 ピシッ。全身に悪寒が走った。

 これ、もしかしてサンキュー(39)とヨンキュー(49)をかけてんのか? 
 
うわっ。寒ッ。

 カッキーーーーーーン!

 見ると、奇妙な服を着た爆弾魔は氷漬けになっている。


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カワムラくんのレベル1必殺技、【寒い言葉】だよ! な、なんてすさまじい威力……こんなのレベル1のダメージじゃない……!」

「それはいいが、ナミ……カワハラだ……」

 あっけなくヤノを倒した強力なボス敵が、カワハラのお寒い「ヨンキュー」で一撃かよ……。

 パリーーーン!

 氷の柱が砕け、悪意のボスは地面に倒れた。

「……う、うう……」

「お。気づいたみたいだぜ」

 なんか今回の悪意騒動は拍子抜けするくらい簡単だったな。


「ここは……ぼくは……いったい?」

「なにも覚えてないんですか……? 革命とか言ってたけど」

 俺は自分より年上に見える男に手を貸しながらたずねた。

「……かくめい? なんのことだろう? なにもわからない……」

 毒気が抜けたように男が言った。人畜無害そうな兄ちゃんだな。こうなると、着ている妙な法衣もすごい違和感があるぜ。


「……シモカワくんのときと同じだよ。悪意に染まっていた間のことは、全部忘れてしまうんだ


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 事情を聞いてみると、男は福海大学理工学部の助教授で、ここ数日の記憶がまったくないらしい。

 ただ、教授との間に確執があり、大学に対して恨みがあったのだという。


キャラ (1)

「……事情はよくわからねーけど、大学に対する恨みから悪意に取りつかれたんだろうな。爆弾なんか持ってたけど、何かしでかす前に正気に戻したから、問題はねーよな」


メインキャラ (12)

「……そうだね……たぶん」


「ん……? なんだこれは……」

 元爆弾魔は、法衣のポケットから何かを取り出した。

 その顔が一瞬で凍りつく。
 
 震える手で持つその紙片を、俺は引ったくった。

【愚民どもよ! 貴様らの目を覚ますため、この大学に爆弾を仕掛けた! 私にしか見つけられない、私にしか解除できない爆弾だ! 現実から目を背け、目の前の快楽に耽るだけの、年老いた胎児どもよ! 革命のときだ! 天に怒号轟くとき、貴様らの眠たい目も覚めるだろう! 現実を見ろ! 自分で自分を守ってみせろ! 貴様ら以外の誰も、貴様ら自身を助けてはくれんのだ!】

 それは……大学に爆弾を仕掛けたという犯行声明文だった!

「なんだよコレ! 爆弾!? 本当に仕掛けたのか!? どこにある!?」

 ガリガリの身体を激しく揺する。

 だが相手はオロオロしながら首を振るだけだった。

「……ま、まったく覚えていない……しかし、おそらく……爆弾を仕掛けたのは……本当だ……!

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