森家ファイト__ver1

2-7 風のコミネ覚醒


画像1


キャラ (13)

『兄貴。電車に詳しいパソコン通信ユーザーの話だと、このまま西鉄電車が暴走を続けたら、『雑餉隈(ざっしょのくま)~春日原(かすがばる)』区間のカーブを曲がれ切れずに脱線しちまうらしいよ!』


キャラ (1)

「マジかよ……それで電車の現在位置は?」


『さっき平尾の手前だったから、通過して、いまごろは高宮あたりかも』

 くそっ。当の俺たちの目の前にあるのが平尾駅だっ。

 このままじゃ絶対に間に合わねえっ。どうする? どこかでバイクを拝借しても、暴走してる電車にはさすがに追い付けねえ!


キャラ (16)

「……ハヤトよお。コミネどうする?」


 そうか! いまコミネはその電車に乗ってるんだった!

 俺は、ヤノからケータイを引ったくった。


pハヤト (2)

「コミネ! 俺だ! 聞こえるか!?」


画像2

『その声は……我が旧友《とも》ハヤトかっ』


 相変わらず、独特の喋り方だぜ……。

 コミネは、ヤノと同じくガキの頃からの腐れ縁だ。

 と言っても、独特すぎる世界観を持ついわゆる変人で、まともに話すと疲れるから、普段は距離を置くことが多いけどな。


キャラ (1)

「おい。おまえの乗った電車が暴走してるってマジかっ?」


キャラ (6)

『うむ。急行でもないのに、先ほどからどの駅にも止まろうとせんのだ。速度もやたら飛ばしている。これをひとは暴走と呼ぶのだろう』


「いいか! よく聞けっ。このまま『雑餉隈』を過ぎちまうと、カーブで脱線する危険性がある! その前に緊急停止レバーを探して、お前が電車を止めろ!」

『む、むう……だが、電車を勝手に止めると、莫大な損害賠償が発生すると聞く……おいそれとは、止められんだろう……?』


画像3



pハヤト (2)

「だから、今がその緊急の事態なんだよ!」


キャラ (6)

『だが! しかし!』


 くそ。変人キャラのくせに、妙なところで常識人なのは相変わらずかっ。

 仕方ねえ。長い付き合いだ。コミネの扱い方は心得ている。


キャラ (1)

「……聞いてくれ、コミネ。今こそ、おまえの『正義』が必要なんだ」


キャラ (5)

『せ、正義!?』


「ああ。正義だ。おまえ、正義大好きだろ?」

『……正義……おれが……正義……!?』

「そうだっ。いま頼れるのは、正義に目覚めたお前しか居ねえ!」

『……このコミネ神拳を、いまが使うときなのか……?』

 コミネ神拳? なに言ってんだこのバカ。

 極度の『北〇の拳』マニアでもあるコミネは、昔からつかめない男だが、『正義』というものに並々ならぬ憧れと思い入れを持っている。

 とにかくここは、『正義』って単語でうまくノセて、なんとか緊急停止レバーを引かせねえとっ。


pハヤト (2)

「コミネ! いま福岡市が『悪意』という敵に狙われているんだ! 俺とヤノは、アリバってチカラに目覚めて、ソイツらと戦ってる! お前の『正義』の力も貸してくれ!」


キャラ (6)

『……わかった……わかったぞ、ハヤトよ! このコミネ! 正義のために戦おう! 見届けるがいい! コミネ神拳の七つの星の輝きを!


 ホーウアチャオォォッッ!

 怪鳥の雄たけびのような声を残して、電話はプツンと切れた。


キャラ (1)

……き、切りやがった


キャラ (16)

「コミネ、だいじょうぶなのかよお?」


「まあ、あの調子だと、緊急停止レバーくらいは引いてくれると思うが……」


キャラ (1)

「ハヤト。その友達、なんて言ったっけ」


 今まで黙っていたナミがタブレットを見ながらつぶやいた。

「あ? コミネだけど……」

「ちょっと、いわく付きのひと?」

「まあ、かなりのワケあり物件だな」

「おう。ハヤトも相当非常識だが、コミネには負けるぞお」

「……やっぱり」

 ナミは言って、くるっとタブレットの画面を俺に見せた。

 そこには……


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


画像4

【コミネ】 レベル4 EXP70 属性 風

 HP 78 (A)
 攻撃力 61 (A)
 防御力 28 (B)
 特殊攻撃 42 (A)
 特殊防御 28 (B)
 素早さ 28 (C)
 
 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

【福海大学三年生。21歳。天上天下唯我独尊を地で行く孤高の変人。ハヤト、ヤノとは中学から一緒。正義に並々ならぬ思い入れがある。
 オリジナルの『コミネ神拳』を編み出すほどの北〇の拳マニアだったが、アリバに目覚めたことで、その思い込みは昇華した。彫りの深すぎる顔立ちだが、れっきとした純国産品】
 ――――――――――――――――――――――――――――――――――

レベル1 秘孔 30/30 威力65 命中率85% 追加効果・麻痺】

《どこかの世紀末救世主漫画でもおなじみのアレ。人体に存在するツボを突き、敵を内部から破壊する……ワザを模したコミネ神拳の基本技。敵は爆砕できないが、威力は申し分なく、かなりの高確率で麻痺させる》

レベル2 激怒 6/6 能力変化 攻撃力30%アップ】

《世紀末救世主漫画の主人公のようなシリアス顔で「お前らに今日を生きる資格はない!」と激怒して攻撃力を格段に上げる。重ねがけ可能。演出上、全身の筋肉が隆起し服がビリビリに破れるが、すぐ元に戻っている》
 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


キャラ (1)

「……………………」


キャラ (4)

「……………………」


キャラ (2)

「……なんか、いつのまにか、勝手にアリバに目覚めてるんですけど。このコミネってひと……」


「……………………」

「……………………」

「あれれ? ふたりとも驚かないの?」

「だってなあ。コミネだしよお……」

「そうそう。コミネだもんな……」


メインキャラ (12)

「な、ナニソレ。この、コミネってひと、いったいどういうひとなのー!?」


キャラ (1)

「ナミ。ひょっとしたら、アイツ、緊急停止レバーを引くだけじゃ済まないかもしれないぜ?」


画像5



 西鉄電車を追いかけ南に移動していると、またもコミネから電話がかかってきた。


pハヤト (2)

「コミネ!」


pコミネ

『ハヤトか……いま俺の目の前に、緊急停止レバーがある……』


「引いたのか!?」

『……今からだ』

「なに溜めてやがんださっさと引けボケ!」

『フッ。急《せ》くな騒ぐな慌てるな』

 いつも通りへんな口調だが、ますますエスカレートしてるのは気のせいじゃない。

『アタァッッッ!!!』

 電話越しに、レバーのプラスチックカバーをぶち破る音と「キキキキキキーーーーー」という耳障りな金属音が聞こえる! やったか!?


キャラ (5)

『……フフフ。まずは一手』


キャラ (1)

「よ、よしっ。よくやったぞ、コミネ」



『むう?』

「どうした!?」

『なにやら車内の様子がおかしい。妙な殺気をまとったやつらが俺をにらんでいる……。目が赤い』


画像6


pハヤト

「そいつらが悪意だ! だがコミネ、今のお前なら戦える。さっき話したアリバってのにお前も目覚めてるんだ! なんかいつもと身体が違うだろ?」


pコミネ

『うむ。身体中に正義がみなぎっているようだ。ホワタッ!


 いきなり電話口で叫ばれて、俺は顔をしかめて電話を耳から離す。

 ナミはタブレットを取り出し、怪訝そうな顔。


メインキャラ (12)

「あれ? おかしいよこのコミネってひと。なにこの能力値……」


キャラ (1)

「またなにかへんなのか? 今度はなんだ?」


「コミネってひとはハヤトと同じ【バランスタイプ】なんだけど……能力値が高すぎる! 異常だよっ。これがホントなら、ハヤトよりよっぽど万能の主人公タイプじゃないかっ」

 くそ。なんだよそれっ。

「アリバのチカラも強いし、特殊能力まで持ってる。それに必殺技も、名前はヘンだけど、みんなすごい性能だよっ。なにこのバトルマシーン


キャラ (4)

「コミネ神拳の使い手だもんなあ」


pハヤト

「コミネ! 聞こえてるか? 今はお前だけが頼りだ。そのアリバってチカラを使って……え? アリバは『いっしそうでん』かって? なんだそれ。あ、一子相伝か。いや、俺も使えるし、ついさっきヤノも目覚めた……って、なんで不満そうなんだお前。誰が正当継承者かで勝負? 知るか! おまえもう黙ってろ!」


 ちくしょう。こんなアホが俺よりずっと性能が上かよ……。


pヤノ

「ハヤト! シンジローから電話で、電車は大橋駅と井尻駅の間くらいで緊急停止したらしいぞお」


キャラ (1)

「よしっ。コミネ、俺たちが行くまでなんとか持ちこたえてくれ! 敵に向かって、必殺技をイメージすれば戦える! ……ああ、そうだ。コミネ神拳でもなんでもいいっ……だから、耳元でホワッとか叫ぶな!」


 俺たちが電車に着くまではもう少しかかる。いくらアリバに目覚めたとはいえ、コミネひとりが悪意の中に孤立している状態だ。急がねえとっ。

 通話をオンにしたままの電話からは、そんなコミネの『指先ひとつ!』とか『お前はすでに……言うまでもないな?』とかわけのわからないセリフが聞こえてくる。


画像7


キャラ (5)

『ォアタタタタタタタ! オワタッ! ……むう、ハヤトよっ』


キャラ (1)

「こ、今度はなんだっ!?」


『俺の秘孔で敵は倒れるのだが、爆砕霧散せんのだっ』

「スプラッタ殺人でも起こす気かおまえは!」

 ……こいつの相手は本当に疲れるぜ……。

 俺たちは暴走した西鉄電車へと急いだ……。


森家ファイト! ver1.05taki 2019-07-26 19-22-02.mp4_snapshot_01.30.775



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?