森家ファイト__ver1

幕間4 カムラの懸念


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キャラ (192)

 拷問のようだった大学の爆弾探しが終わり、なんで俺までと思いながら警察から必死に逃げたあと、ハヤトさんは「せっかくだからみんなで飯でも食いに行くか」と言い出した。

 俺とカワハラはこっそり離脱して、行きつけのゲーセン『大橋センチュリー』に逃げた。

 そんなのに付き合ってられるかっつーの。


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「よーう。おまえらー。どうしたとやー? なんか疲れとるぜー?」


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 大橋センチュリーの常連である『ジーサン』が話しかけてきた。

 年齢不詳、本名不明。昼でも夜でも、平日でも休日でも、このゲーセンに来たら必ず居るひとだ。

 見るからにフケてるから、常連仲間からはジーサンと呼ばれているけど、ハヤトさんとはタメ口で、高校の同級生というワウサもある……。


キャラ (18)

「あ、ジーサン! こんちはー」


キャラ (192)

「ヌヘヘ。俺たち、福岡市を守る戦士ってのになりましてね」


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「なんやそれー。おまえらゲームのやり過ぎったいー」


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 ゲーセンの住人みたいな自分を棚に上げ、ジーサンはブヒャヒャと笑う。

 俺とカワハラはこのジーサンと仲がいい。

 こういうダメな人とは一緒に居て楽だし、波長も合う。その点、ハヤトさんみたいなひとは、一緒に居ると疲れるし色々とキツい。

 俺とカワハラとジーサンはしばらく対戦格闘ゲームで時間を潰した。

 ここは居心地がいい。

 昨日も、明日も、明後日も、俺らはここで、変わらない毎日をダラダラ過ごしていく。そう思っていたのに……。

 ふと俺のケータイがブルブル震えているのに気付いた。

 ハヤトさんの元カノ『ケイ』からだった。


e_36_boss_ケイ



 実は、俺はハヤトさんより以前から、ケイとは知り合いだった。

 飛び抜けて美人のケイには俺も猛アタックしたのだが、まったく相手にされなかった。

 いや、俺に限らず、ケイってひとは、男を野菜かなんかのようにしか見てないところがあった。

 常にヤローどもからの視線を集め、取り巻きに囲まれてチヤホヤされながら、誰も眼中になく、誰も近寄らせない……。

 そんな鉄壁女王が、唯一異性として見たのが、なぜか『あのオトコ』だったわけだけど……。


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キャラ (192)

「ケイさんですか! あなたのカムラです!」


キャラ (5)

『遅いワケ。こらカムラ。私からの電話は五秒以内に出なさい』


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 プチッと切られた。

 俺はゲーセンから飛び出して、すぐにリダイアル。


pカムラ

「ケイさんですか! 失礼しました! あなたのカムラです!」


e_36_boss_ケイ

『あんたに話があるワケ。三分以内にハピネスに来なさい』


 プチッと切られた。

 三分って……ここからハピネスまで6キロはあるっつーの……。

 俺はカワハラを呼びにゲーセンへ戻った。


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「おっ。なんやカムラ。もう帰るとー? 今度美人のねーちゃん紹介しろってー」


キャラ (192)

「ヌヘヘ。お任せを! キレイどころを見つくろって合コンセッティングしますぜっ」


キャラ (18)

「じゃあねー。ジーサン!」


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 適当なことを言い捨てて、俺とカワハラはハピネスへと急いだ。


風景 (12)


e_36_boss_ケイ

 ハピネスに着くと、ボックス席にはすでにケイさんが居て、気だるげな顔でアイスコーヒーを飲んでいた。

 その恐ろしいほどの色っぽさに、店内の男やバイト連中が、みんなチラチラ見ている。


キャラ (192)

「カムラ、カワハラ。参上しました!」


キャラ (5)

「……三分で来いって言ったわよね?」


 横目でゴミでも見るように言われた。6キロを十分で来たというのに。

「はっ! すいません!」


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 くそっ。美人だからってムチャばかり言いやがって!

 こんなメンドくさいワガママ女王と、ハヤトさんみたいな俺様男が、どうやったらくっ付くんだっつーの!


pカムラ

「そ、それで、お話というのは……?」



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 卑屈に笑いながら、俺とカワハラはボックス席のケイの前に座る。


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キャラ (5)

「……ハヤトのことよ」


 またか、と俺はウンザリした。

 並みいる取り巻きの中で、美人のケイの話し相手として選ばれるのはうれしいが、なにしろ話題の九割はハヤトさんのことなのだ。

「アイツどうしてる? どうでもいいけど

 目を伏せたままアイスコーヒーを飲むケイ。

 ふと、意地の悪い考えが頭に浮かんだ。


キャラ (192)

「ヌヘヘ。どうもこうも……ハヤトさんめ、さっそく新しい女作ってましたよ! ナミさんって言うんですけどね」


 ヒュウウウウウウ。

 いきなりハピネス店内の気温が下がった。エアコンでも壊れたのだろうか。俺やカワハラは氷属性らしいから、寒さは気にならないんだが。

「ふうううううん。どうでもいいけど

「ヌヘヘヘ……そうとう関係は進んでいますぜ……?」

「へええええええ。どうでもいいけど

 ケイは言って、コトリとグラスを置いた。なんか……アイスコーヒーが凍って固まってる?


キャラ (5)

「ところで、カムラ。カワハラ。あんたたち、ハヤトのことどう思う? 好き? 尊敬してる?」


キャラ (192)

「え? ハヤトさんをすか?」


 はっきり言って俺は、アリバとかいうわけのわからない面倒ごとに引き込んだハヤトさんを恨んでいた。


メインキャラ (71)


 あのひとはヤバい

 たとえ間違ってようが、自分の考えを貫き通すうえ、下手にカリスマがあるもんだから、まわりの人間も引きずられてしまう。爆弾の一件だって、一歩間違えたらとんでもないことになっていたはず。


キャラ (192)

「も、もちろんキライですよ! 憎んでます! ハヤトさんには、今まで何回ヒドい目にあわされてきたか! なあ、カワハラ!」


キャラ (18)

「そそそそ。カムラの言う通り!」


キャラ (5)

「……そう。じゃあ、私の計画を手伝いなさい。私の手下になって、ハヤトをギャフンと言わせてやるのよ」


「え。あの。ハヤトさんを……ギャフンと……すか?」

 ふと冷静になった。

 はっきり言って、ハヤトさんは敵に回したくない。本気でキレたハヤトさんはマジで怖い。しかも、それすらシンジローに言わせれば、「兄貴はまだ二段階の変身を残している」らしい。


メインキャラ (67)

「なあに? その顔。もしかして、私とハヤト、どっちにつくかで迷ってるワケ?」


 閉じていたケイの長いまつ毛のまぶたが、ゆっくり開かれた。

 中から美しい双眸が現れ……怪しくきらめいた。

 その色は……深紅。

 こ、こ、この瞳の色ってまさか……。


キャラ (18)

「か、カムラぁー……ケイさんもしかして……」


キャラ (192)

「も、ももも、もちろん! 俺がつくなら断然、ケイさんのほうですぜ! なんでも言うことききますっ。にっくきハヤトさんに、目にもの見せてやりましょーぜ! な、なあ、カワハラ……!」


「……そ、そそそそ。カムラの言う通り!」

 紅い光を目に宿したケイは、満足そうに「くすり」と微笑むと、艶然とした口調で、独り言のようにつぶやいた。


メインキャラ (67)

「……ハヤト。この私をフッた代償……高くつくわよ……!」



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 第4話 【爆弾狂騒曲】 終わり


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 第四話終了時のステータス
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メインキャラ (51)

【カムラ】 高校生 レベル5 EXP182 属性 氷属性 身長176センチ 体重88キロ

 HP  28(E)
 攻撃力  20(E)
 防御力  170(S)
 特殊攻撃  25(E)
 特殊防御  155(S)
 素早さ  10(E)

《東和高校二年生。ハヤトの被害者その1。別名・裏切りのカムラ。シンジローやクリハラとは幼馴染。自己防衛と保身の権化で、強いものにはへつらい、有利な方に取り入り、メリットがあるほうに飛びつく。
 抜け目がないぶん、物事の本質を見極めるだけの鋭さを持っており、ハヤトの独善性を唯一危険視している男でもある。

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レベル1 裏切り 10/10 威力30 命中率15% 氷属性・通常 追加・睡眠】

《白旗をかかげ、もみ手しながらこびへつらって敵に取り入る。敵も警戒しているため、成功率は非常に低い。ただ、成功すれば相手は完全に油断するため、無防備な背中をポカリというのも可能は可能》

レベル2 コーヒー 15/15 体力微回復】

《懐から缶コーヒーを取り出しホットタイム。カムラのアリバと作用することで、本人のみ体力が微回復。ただしカムラは防御力が非常に高いため、この技を使い続ければ、まず倒されることはない》

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【カワハラ】 高校生 レベル5 EXP182 氷属性 身長170センチ 体重55キロ

 HP  55(C)
 攻撃力 31(D)
 防御力 15(D)
 特殊攻撃 150(S)
 特殊防御 13(E)
 素早さ 200(SS)

《東和高校二年生。生徒会書記。ハヤトの被害者その2。カムラの手下。存在感が薄く、そのくせ空気をまったく読まないトンデモ発言をしては、場を凍りつかせる。口ぐせは『ヨンキュー』。カムラを非常に慕っており、すべてにおいてカムラ基準。
 陸上部に所属しているが、大事な大会で転倒。その後『コケのカワハラ』と呼ばれている。実はメンバー中最速のスピードと、最高レベルの属性力を誇り、使い方次第では屈指の強キャラになる》

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レベル1 寒い言葉  15/15 威力100 命中率90 氷系特殊 追加・睡眠】

《「おまえそれ言うか……」という寒い言葉で場の空気と敵を凍らせる。レベル1で威力100を超えるのはこの技のみ。火属性キラー。追加で睡眠までさせる》

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レベル2 脱兎 50/50 特殊】

《ボス戦をのぞき、敵から必ず逃走できる技。ただし本人のみ》

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友情の炎護(えんご)【カスガ】 大学生 レベル5 EXP182 炎属性 身長179センチ 体重80キロ

 HP  101(A)
 攻撃力  70(B)
 防御力  95(A)
 特殊攻撃  68(B)
 特殊防御  82(A)
 素早さ  45(C)

《福海大学三年生夜間学部。ハヤトの自称親友で、ヤノ・コミネとも親交が深い。一見のんびり屋だが、友情に厚い熱血漢。ハヤトがもっともヤサぐれていた時期に、辛抱強く向き合って友達付き合いを続けた過去があるため、ハヤト自身も特別な相手だと認めている。
 トップクラスの卓球プレイヤーで、身体能力は優秀なのだが、必殺技の使い勝手が悪く、高い能力値を活かしきれていない。福海大学の騒ぎの際、一瞬だけレベル3必殺技【守護】を発動し、ナミの度肝を抜いた》

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レベル1 あいさつ 10/10 威力0 特殊・混乱】

《バイト仕込みの明るいあいさつ。攻撃力はない。時々混乱させる》

レベル2 炎の張り手 15/15 威力35 炎系・通常 追加・混乱】

《炎をまとった張り手をブチかます。無意識に力をセーブしており、カスガ自身の高い攻撃力がイマイチ反映されていない。ごくたまに混乱》

レベル3 守護 3/3 特殊】

《カスガの切り札にして象徴的な必殺技。超強力な防御幕を生み出し、仲間全員を護る。4-4で風属性の悪意爆弾からハヤトを護るため、無意識に発動させた》

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第五話 【焼けぼっくいに氷の微笑】に続く




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