森家ファイト__ver1

5-2 星降るテラスとキミの笑顔


キャラ (3)

「いーくーぜーオラアアアァァァァ!!!」


キャラ (8)

「し、シンジロー! INABIKARI!  INABIKARI乗るばい!」


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 火属性コンビはさっそくテンションマックス。犬みたいに走っていく。

  格ゲーのコスプレらしく、シンジローは改造学ラン、シモカワは白いハーフパンツの美少年風。歪んだ性癖のお姉さまたちが、ヨダレ垂らしそうな恰好だ。


キャラ (17)

「どら。天上で宇宙でも感じますな」


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 ブ〇ース・リーみたいな黄色のピッチリ全身ジャージを着たヨシオが、ザッザッと足音を響かせながら、巨大観覧車のほうへ歩き去る。


キャラ (7)

「ムホホホ。無重力下でシャドーボクシングと洒落こみますかねえ」


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 袖の破れた道着に赤いハチマキというクリハラが、『無重力体験MOR』へと向かった。


キャラ (4)

「お、おれは絶対に『絶対恐怖館ホラーハザード』なんかには行かないぞお。言っておくが怖いんじゃない。怖いんじゃなくて、ただ生理的に気持ち悪いだけだあああっ……」


キャラ (5)

「じぇ、ジェットコースターなどというただ速いだけの危険な乗り物に正義などない! 俺は……俺は断固としてそんなものには乗らぬうううぅぅぅぅ」


キャラ (6)

「まあまあ。ふたりともー。せっかく来たんだから、全部まわろうネ」


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 ヤノは……上半身ハダカ、赤いハチマキに弓? ラ〇ボーか?

 コミネはいつもと同じ格好だな。どうやら普段着が北〇の拳コスプレと思われたようだぜ。

 わめく二人の巨体を、海賊の姿で不気味に微笑むカスガが、超強引に引きずっていく。


キャラ22

「うわーーい。なんにも楽しくにゃーい。……ゲーセンでも行くか……」


 ヤギハラも剣道着と防具姿のままか。コイツも常時コスプレみたいなもんだしな。


キャラ (2)

「は、ハヤト! 150メートルの高さから落下の『ファンキースリリング』だって! 360度高速回転の『海賊王』ってのもあるよ!」


 子供のようにはしゃぐナミ。それはそれで珍しいし、青みを帯びた黒髪を後ろでまとめ、緑色のミニスカワンピースを着た『ティンカーベル』姿のナミは、息が止まりそうなほどキュートだった。思わず見とれちまう。

 ……勢いでアリバの戦士なんかになって、つい忘れがちになるけど、ナミって並外れて美しい女の子なんだよな……。

 それも、俺の理想をそのまま形にしたような。

 それでも俺はハシャぐ気になれない。何しろ、たったひとりで囚われの【大切な女性】を助けに行かねばならないのだ。

 ……ったく。どいつもこいつも他人事だからって、浮かれやがって……。


キャラ (1)

「……おいおい。ここに何しに来たかわかってんのかよ?」


メインキャラ (12)

「ああ。そうでしたね。ハヤトは忙しいんでしたね。ハヤトにとっての大事な女とかって、どーでもいい相手を助けにいかないとダメでしたね。それがマユなのか、スエって女なのか、それともまだまだ他に知らない女がポロリと出てくるのかはわかりませんが」


「……お、俺だって、誰だかぜんぜん思い当たらねーよ……」

 実はシンデレラパークに来る前、セーブカンパニーでスエの無事は確認した。だからますます誰だかわからない。

 ……まさか本当にマユなのか? でも、小学生の女の子を【大切な女性】だなんて言うか?


pナミ

「あ。『ミラーハウス』だって。おもしろそう。ボクちょっと行ってこよっと」


 短いスカートをヒラヒラさせながら、ナミは駆けていった。緑の葉っぱで作ったようなきわどいワンピースからのぞく、健康的な白い太ももがまぶしいぜ。でも、パートナーがそんなのでいいのかよ……。


pコミネ

「っひ、ひでぶううううううううぅぅぅぅぅぅぅ」


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 遠くのジェットコースターからコミネらしき悲鳴が聞こえてきた。

 みんなノンキなもんだぜ……。

 それにしても暑い。炎天下でウロウロしているからか、クラクラしてきた。

 ふと見ると、『氷点下の占い部屋』といういかにも涼しげなパビリオンがあった。ちょうどいい。ここで少し休むか……。


 室内は薄暗く、冷凍庫のように涼しかった。白い冷気が煙になって漂う中、ムーディーなランプが、オレンジ色の明かりを灯らせている。

 奥にズズッと進むと、怪しい装飾で飾られた一角に紫色のフードを被ったジプシーのような女性が座っていた。顔は見えない。

「来なさい」

 よく通る声で命令され、俺はフラフラ近づいた。

「……あなたには探しているものがありますね」

「え? ハイ。わかるんですか?」

 占い師の前の椅子に座る。

 その女性は、水晶玉を撫でるようにして、おごそかに言った。

「……それは女……あなたはあなたにとって【大切な女性】を探している……」

「そ、そうなんです!」

「……その女性は……美しく、清潔で、誇り高く、頭の回転も速く、背はスラリと高くて、髪は長く、目はタレ目で、意地っ張りだけど実は素直で心優しい……そんな女性……」


キャラ (1)

いえ違います


 ばきぃッ!

 突然水晶玉が砕けた。

 見ると、占い師のしなやかな手が、水晶玉を粉々に握りつぶしていた。

「ん……んん! ……では質問を変えましょう」

 占い師はわざとらしく咳払いして続けた。質問って……いつのまにそういう流れになったんだ?

ナミ

「え?」

「ナミという女性を知っていますね?」

「あ。ハイ。すごいな。さすが占い師」

「……大切な女性ですか……?」

 低いけど力のこもった声で占い師は言った。フードの奥で、瞳が薄赤く輝いた気がした。


キャラ (1)

「はい。大切な……

 ……パートナーです。

 そう答えようとした瞬間、フッと明かりが消え、部屋が闇に閉ざされた。

 そして、元々冷凍庫のようだった室内の気温がさらに下がり、痛いくらいになった。


pハヤト

「な、なんだ!?」



メインキャラ (6)

「ハイ。おっけー。あんたの気持ちはわかったワケ」


 闇の中から、聞き覚えのある声。

「!?」

「……やっぱりそうなるサダメのようね」

「こ、この声……まさか、おまえ……!」

「……私はアイスクイーン。シンデレラパレスで待ってるわ。一時間以内に来なさい」

 フッとまた明かりがついた。

 そして、『氷点下の占い部屋』の中に、俺以外の人影はもうなかった。


 ◆



 初めてケイと出会ったあの日。

 ……粉雪が舞い散る冬だった。

 だからケイという女には、冷たく気高い、清潔な氷のイメージがつきまとう。


キャラ (5)

「……はあ? いまなんて言ったワケ?」


 ライトアップされた夜のシンデレラパレス。

 俺たちは、賑やかな舞踏会が開かれる大広間の、星の綺麗なテラスでたまたま出くわした。


キャラ (1)

「……イケてないって言ったんだよ」


 空には季節外れの花火が上がり……

 遠くには光に彩られた遊具が輝き……

 眼下には、様々な仮装のパレードが、川のように流れていた。


e_36_boss_ケイ

「イケてないって、この私のこと?」


pハヤト

「まあね」


 華やかなドレスを着たケイは、そのテラスでひとり、気だるげに夜景を眺めていた。

 俺のほうは……白いマントに蒼い鎧という恥ずかしい騎士の姿

 入場ゲートで仮装を悩む俺に、女の係員が「これきっと似合うっすよ」と適当に選んでくれた。何かのアニメのキャラらしいが、俺は知らなかった。

「……まさかこの私にそんなこと言うやつがこの世に居るとはね」

 気品あふれるドレス姿のケイは、氷のような瞳で俺を見た。

 気の弱い男なら逃げだしそうな眼力だった。

三秒以内に視界から消えなさい。そしたら許してあげるわ」

 俺はその言葉を無視してケイの隣に並び、テラスの大理石の手すりに体重をもたせかけた。

 眼下に広がる夜の遊園地の、夢みたいな光をぼんやり眺める。

「おーおー。いい景色だな。これだけでも来たかいあるね」

「……………………」

「まあ、イケてないというか……もったいないかな」

「なにがもったいないの? 聞いてあげるから、五秒以内に答えなさい」

 当たり前のように命令口調で話すエラそうな女。なんとなく、無理して気を張っているのがすぐにわかり、つい意地悪してやりたくなった。

 それでわざわざ十五秒くらい経ってから答えた。


キャラ (1)

「キミには、もっと可愛い恰好のほうが似合ってる」


キャラ (5)

……あ、あんたバカじゃないの? 私のどこをどうしたら、可愛い系が似合うなんて思えるワケ?」


「そっかな。俺、ひとを見る目はあると思うけどな。キミは、そういう女王様みたいなケバケバしいドレスより、もっとキュートで可愛らしい服のほうが好きなんじゃないかと思った」

「……………………」

「間違ってたら悪い」

 そう言ってその場を立ち去ろうとした俺を、ケイは「待ちなさい」と止めた。


e_36_boss_ケイ

「……五分だけ


pハヤト

「?」


「五分だけ、おしゃべりしてあげるわ。だからその続きを聞かせなさい」

十分だけなら、付き合ってやるよ」

 俺は笑顔で答えた。ケイもまた、つられたように顔を緩めた。


キャラ (5)

「ところで、あんたのそのコスプレ……悪くないわね」


キャラ (1)

「これか? これなんの衣装なんだ?」


「う、うそっ。知らないで着てたの!? あの国民的名作アニメを知らないなんて、ひととしてあり得ないワケ! いい? そもそもまずカツモクすべきは、作画監督の圧倒的こだわりで……」

 そのあと俺は、コスプレ男女の舞踏会が開かれるおとぎの城の片隅で、無限の星々と夜の遊園地のイルミネーションを眺めながら、ケイの『オタクトーク』を三時間以上聞かされた

 ……それが俺たちの出会いだった。


e_36_boss_ケイ


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