森家ファイト__ver1

4-4 友情の炎護カスガ

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メインキャラ (12)

「む、無理だよ! 無属性にはなんの属性補正もない! 爆発の衝撃をまともに食らう! そんなことをしたら、本当に死んじゃう!」


キャラ (1)

「ほかに方法がねえ! 俺の判断ミスでこうなった! 最初から全員を避難させるべきだったんだ! だから、俺が……」


 遠目に、音花火の筒が点火されようとしているのが見えた。音は聞こえない。変に静かだった。無音の世界で、ナミの声だけが聞こえていた。

「逃げろ、ナミ!」


pナミ

「だめええええええええええ!!!!!」



 ナミが絶叫した、そのとき。

pカスガ

 

 突然現れた人影が、爆弾を腹に抱え込んだ俺に覆いかぶさってきた。



キャラ (1)

「か、カスガ!?」


キャラ (6)

「ハヤトー!」


「なにやってんだお前! 死ぬ気か!? 離れろ!」

「お前だけに危ない目には遭わせないよー!!」

「俺にはアリバがある! けどお前には……」

親友を放っておけないー!」


キャラ (11)

「……タイムリミットだ」


 ササハラの静かな宣告。

 無意識だった。俺は目の前のカスガに向けて怒鳴っていた。


pハヤト

「カスガ! アリバだ! 目覚めろ! 心の力を燃やせ! お前にもチカラがある! 絶対あるはずなんだああああああ!」


pカスガ

「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」



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 ドンッ! ドドンッ!

 まぶしい夏空に号砲が轟く。
 カッと俺とカスガの間で爆弾が光り……ズンッとくる衝撃があった。
 思わず目を閉じる。

 ……しかし、痛みはない。

 まぶたを引きはがすように、ゆっくりと目を開いた。

 カスガが、大きな透明のボールでも抱えるようなポーズで立っていた。

 まわりを見渡す。そこは、まだまだギラつく太陽に照らされた、賑やかで平和な、夏の夕方の広場だった。


キャラ (1)

「ぶ、無事……だったのか……?」


 全身から力が抜け、俺はその場にヘタりこんだ。


メインキャラ (12)

「ひ、火のアリバ……まさか本当に目覚めちゃうなんて」


 そうか。カスガがアリバに目覚めて、火属性を使って爆破の衝撃を抑えたのか。

「にしても、なんつードラマチックな目覚めだよ……」

 尻もちをついたまま、さっきから同じポーズのまま固まって動かないカスガを見上げた。

「カスガ?」


キャラ (6)

「……………………」


キャラ (4)

「どうやら気絶してるみたいだぞお」


 やれやれ、と言いながらヤノが歩いてきた。


キャラ (1)

「やっぱりカスガが火属性のアリバだったんだな」


メインキャラ (12)

「……………………」


「お前、聞いてんのか? タブレットの表示はどうだ? カスガのステータス、『あっぷでーと』とかいうの、されたんだろ?」


pナミ

「信じられない」


 ナミはまたまた恒例のアレ


キャラ (1)

「またかよ」

 と、俺は苦笑。緊張と恐怖の反動で、顔がへんな風に歪んでニヤけてしまっていた。


メインキャラ (12)

「カスガさんが無意識に使ったのは……【守護】……本来はあり得ない、『レベル3必殺技』だった」


「つまりどういうことだ?」

「覚醒直後にレベル3なんて普通は使えないってこと。そんなのマユくらいだよ」


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 マユ……覚醒直後にレベル3【ジンストーム】を使ってナミが驚いていたっけ。

 ……なんだかアピロスの戦いがもうずっと前みたいに思えるぜ。

 マユは『最強の悪意の幼生体』だったって言ってたな。てことは、カスガも同じくらいすげえアリバの持ち主ってことか?


メインキャラ (12)

カスガさんのレベル3【守護は、その名の通り、強力な防御バリアを張って仲間を護るんだ


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キャラ (1)

「なんかほんとにドラマチックだったんだな。そんな都合のいい必殺技をカスガがたまたま発動させたから、無事に済んだってわけだろ?」


メインキャラ (12)

「そうだね。出来すぎてる……」


キャラ (6)

「あれー? ハヤトー?」


「カスガ。起きたか?」

「あれれー? おれどうなったー? なんか爆弾みたいなのはー?」

「みたいじゃなくて、爆弾そのものだったんだよ。お前がアリバに目覚めて、【守護】とかって、すごい必殺技使ったおかげで、大事にはならなかった」

「しゅごー? もうなにがなんだかー」

「はは。さて、何から話したらいいものか……」


『……以上をもちまして、本日のプログラムはすべて終了となります……』

 そのとき、校内放送がプログラムの終了を告げた。

 そして、俺はようやく、今この瞬間、目の前に居ちゃいけない男が居ることに気づいた。


キャラ (1)

「カスガっ!? お前、決勝戦はどうした……?」


キャラ (6)

「……………………」


「おまえ……」

「……また来年頑張るよー。親友のピンチのほうがおれにとっては大事だったしねー」

「……………………」


 ……すまねえ。

 素直にそう言いたいのに、口に出すのはなんとなく気恥ずかしかった。カスガも俺のそんな殊勝なセリフは聞きたくないだろう。そう思った。

 カスガは俺のことを親友だとはっきり口に出す。俺は恥ずかしくていつもそれを否定する。けれど、やっぱり俺にとってのコイツって、特別な存在なのかもしれない。



キャラ (1)

「……なあ。カスガ」


キャラ (6)

「んー」


「……その、な。あー……」

 ちくしょう……言いにくいぜ……。

 そのとき、ヤノがわけ知り顔で声を上げた。


キャラ (4)

「……さてと。シンジローやコミネたちのチームはまだ捜索を続けてるかもだな。おれは、もう終わったって告げてくるぞお」


キャラ (11)

「……私は警察や大学職員が動き出す前に、我々の痕跡を消しておこう。ふたりで話したいことがあるなら、今のうちに、な」


メインキャラ (12)

「フンッ。ボクも……向こうに行ってる」


 ナミは俺たちから少しだけ離れ、広場の街路樹にクールにもたれかかった。俺は苦笑してカスガを見た。


キャラ (1)

「……カスガ。俺たちはいま、アリバってチカラに目覚めて、福岡市の事件を解決し、敵と戦っているんだ」


キャラ (6)

「んー」


「でな、どうしてもって言うなら、特別にこの俺を手伝わせてやってもいいぜ?」

「あははー。なんだよそれー」

「お前も参加させてやるって言ってんだよ」

 俺はわざとらしくエラそうに言った。

「んー。そうだねー。全国大会へも行けなくなって、夏の予定がポッカリ空いちゃったもんなー。手伝わせてもらおうかなー」

「決まりだな。……まあ、卓球もいいけど、俺たちと過ごす夏だって、それなりに楽しくなるさ」


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 こうして三人目の火属性。そして11人目の仲間『カスガ』がメンバーに加わった。

 ちょうどそこへ、ヤノが他のメンバーを引き連れて戻ってきた。ずいぶん走り回ったんだろう。みんなクタクタの顔だ。


キャラ (1)

「ササハラ。お前はどうする?」


キャラ (11)

「私には残念ながらアリバはないらしいが」


 ササハラは意味深な顔でナミを見る。

 ナミはぷいっと顔をそむけた。

 俺はササハラに言った。はじめから決めていたことだ。


キャラ (1)

「お前さえよければ、俺たちのメンバーに入らねえか?」


キャラ (11)

「……いいのか?」


「ああ。『参謀』って立場はどうだ? 見ての通り俺たちは、知的とはとても言えねえゲンコツ集団でな」


キャラ (4)

「……知的じゃなくて悪かったぞお」


キャラ (5)

「ムウ……正義では負けぬのだが……」


キャラ (3)

「おれは賛成! ササハラくんが居てくれたら、諸葛孔明が味方についたようなもんだよ!」


 シンジローがはしゃぐ。こいつ、ササハラのこと慕ってんだよな。

 他のメンバーもみんな賛成だった。三人ほど、


キャラ (192)

「だっ、だったら俺らはお役御免ってことで……」


キャラ (18)

「なに? このひと誰? ハヤトさんの友達?」


キャラ22

「に、にぎゃあー。順調に泥沼じゃよおおお」


 ……と騒いでいたが黙殺。


メインキャラ (12)

「…………………………」


キャラ (1)

「ナミ。お前はどう思う? ササハラをメンバーに入れてもいいか?」


「……………………ハヤトがそれを望むなら」


ササー

「フッ。私はどうも嫌われているのかな?」


pナミ

「アリバじゃないからね」


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 そのとき、もはや定番コントのようになった『ウーーーーーー』というサイレンが大学の外から聞こえてきた。

 さてと、と俺は仲間に笑いかけた。


pハヤト

「んじゃあ、いつものアレ行きますかっ」


 そして、総勢13人でワラワラ走り、福海大学から逃走した。


ササー

「フッ。フフフ。ファハハハハッッッ!!」


 走りながら、突然ササハラが高笑いした。

 クールなコイツがこんな風にバカ笑いするなんて珍しい。いや、中学からの付き合いだが、初めて見たぞ?

「ハッハハハハハハハハ!!!」


pハヤト

「お、おいどうしたササハラ!? いきなりなに壊れてんだ?」


キャラ (11)

「いや。こうやって、悪さするお前に無理やり引っ張りまわされ、普段の私が絶対にしないようなことをさせられる。それが、懐かしくて、面白くて、痛快でな……フフフッ……ハーハッハッ!!」


 俺もなんだかおかしくなって笑った。

 笑いはいつしか仲間たちみんなに伝染した。

 俺たちは、黄金色の夏の夕暮れの中、みんなで大笑いしながら、汗まみれになって走った。懐かしい何かを思い出すように。



 色々あったが、こうして、ついに俺たちはそろった。


pハヤト

無属性の俺。

pシンジロー

火属性のシンジロー。


pシモカワ

シモカワ。

pカスガ

カスガ。

pヤノ

氷属性のヤノ。

pカムラ

カムラ。

pカワハラ

カワハラ。

pコミネ

風属性のコミネ。

pクリハラ

クリハラ。

pヤギハラ

ヤギハラ。

pヨシユキ

電波属性のヨシオ。

ササー

参謀のササハラ。

pナミ

そして……ナミ。


 それは、俺たちの住む町・福岡市を舞台にした、俺たち自身を登場人物としたアドベンチャーゲーム

 幼いころから思い描いていた

 夏休みの大冒険


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 だが、時は動いていた。

 のちに俺が知ることになる『11の絶望の因子』

 深い場所に眠る『狂気の種子』

 ナミがひた隠しにする真実

 水面下でうごめくグロテスクな計画

 仕組まれた物語。悪意とアリバの正体。突きつけられる現実

 そして迫る『審判の日』……

 ……時は、確実に、動いていた。






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