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1-7 妹。のような少女に闇はひそむ。

風景 (22)


 表に出ると、高宮駅前広場にある街路樹のベンチに座ったナミが、全身からドス黒いオーラを放っていた。

キャラ (1)

「な、ナミ……!?」


メインキャラ (12)

「ねえ……ハヤトだったよね? どうしても話があるから、顔貸せって家から連れ出したの。
 なのに、どうして、ボク、こんなところで、灼熱地獄攻め味わっちゃってるの?」


「あ、いや、その」

「喧嘩売ってる? ……買おうか? 相場的に、買いどきだと思うし」

「ちょっと待て待て待て。遊んでたわけじゃねーだろ? セーブしてきたんだ。手続きは万事滞りなく完了だっ」


「……おそすぎない? それに、なんか店から出てくるとき、妙にウキウキ機嫌よさそうだったような」


「とりあえず、ハピネスに行くぞ!」


「はあ?」

「暑かったし腹も減ったろ? 近くのファミレスに昼飯食いにいこーぜ!」

「暑かったしお腹も減ってるけど、そういうので誤魔化されると思ってんの?」

「うぐっ」


「ねえ。…………ハヤトって、ぜったい女の子にモテないでしょ? はっきり言って、残念なタイプ」


「なっ、なにィ」


 くっ。言いやがる……!

 ケイにこっぴどくフラれた傷がうずくぜえ。

 しかし、ここは変に逆らわず、まずはご機嫌取りだ。

 そんなわけで、俺たちはハピネスへと移動した。 

 高宮通りを『西鉄大橋駅』方向に少し歩く……。

風景

    ハピネス。

 九州地方を中心に展開する、黄色い看板にオレンジ色のロゴでお馴染みの、二十四時間営業のレストラン。

    お手頃な値段が貧乏学生に愛されている。

 俺たちは席につき、とりあえず日替わりランチを二つ注文した。

    なんにしても、これでようやくゆっくり話が聞ける。


風景 (2)


キャラ (1)

「……で、だ。ナミには色々聞きたい事がある。まずは……」


 悪意ってなんだよ、と口を開きかけた瞬間、俺を呼ぶ声がした。


キャラ (10)

「おにーちゃん!」



 見ると、ふたつほど離れたボックス席から、愛らしい女の子が手を振っている。

「お。『マユ』じゃないか。今日も来てたのか」


「うん!」


キャラ (1)

「誰? お兄ちゃん……てことは、妹も居たの?」



「……だと嬉しいが、違う。まあ妹みたいな……トモダチだ」


森家ファイト! ver1.05taki 2019-07-25 19-12-37.mp4_snapshot_05.09.523


 マユ

 近所に住んでいる小学生で、なぜかひとりで良くハピネスに来てる。

    つい気になってしまって、話しかけたのがきっかけで、俺たちは仲良くなった。

 以来、マユは俺を「おにーちゃん」と言って慕ってくれる。

 ツインテールが可愛らしい、見た目も性格もすごくいいコだ。

    本当に俺の妹ならよかったんだけど、実際は、ニキビ面の弟だもんな。神を呪うぜ……。

妹みたいに思ってる女の子?    ……まさか、そんな子との『ひと夏の恋』とか言い出すんじゃ……」


「なんの話だよ、それ……」

    どっかで聞いた事あるようなないような。


e_23_boss_23_リン

「こんにちはー」


 近寄ってきたマユが、礼儀正しく挨拶する。

    うんうん。小さいのに感心な子だ。


pナミ

「………こ、こんちは」


 なのにナミのほうはぎこちない。コミュ力低いな、オイ。


 マユが、どうしていつもひとりぼっちでファミレスに来てるかは知らない。

    どう考えても複雑な家庭事情があるんだろうけどな……。

 他人の俺が踏み込むのもどうかと思い、あえて聞かないようにしている。


pハヤト

「マユ。今日もひとりか?」



「……うん」


「じゃあ、俺たちも一緒していいかな?」

「うわーい。いっしょにたべよう!」

 それから俺達は、三人で日替わりランチを食べた。

 いつも通り、最近始まったアニメやマンガの話なんかで盛り上がった。

 ナミに話を聞く機会をのがしたが、まあ、マユが嬉しそうだったからよしとしよう。

    ナミからは後で改めて聞き出せばいいしな。


キャラ (10)

「おにーちゃんたちは、このあとなにするの?」


キャラ (1)

「ちょっと用事があるんだ」


 ……なんとなく、マユはまだ俺と一緒に遊びたいんだろうな、と感じたけど、そう答えた。

    いい加減、ナミから話を聞き出さないと。

 マユは一瞬すごく残念そうな顔をしたが、すぐに健気な笑顔を作った。


「うん。わかった。マユはおカイモノいくね」


アピロスか?」

「そう。文房具、買わなきゃ」

 俺たちは一緒に店を出た。

 おごってやろうとする俺に、「おかあさんからおカネはもらってるから」と言ってマユは自分で支払った。


「じゃあね、おにーちゃん。それから、おねーちゃん」


 たたたっと走り去るマユの小柄な後姿に、俺は手を振った。

 ナミはマユの後ろ姿をじっと見つめている。


「……………………」



「どうした? さっきからぜんぜん喋らねーな」


「あの、マユって子……」

「ああ、可愛い子だろ」

「…………ひょっとしたら……いや、たぶん」



「マユが……どうした?」


 ナミの真剣な顔を見て、緊張が走る。

 そうだ。いま、福岡市でおかしな事が起こり始めているんだった。

 まさか……マユが何か関係してんのか……?


「あとを追ったほうがいい」


「え?」


「『あぴろす』に行くってなに?」

「ああ。『野間ダイエー』っていうショッピングセンターのことだ。アピロスってのは、地元の人間の愛称だよ」


「すぐ追いかけよう!」


 ナミはいきなり駆けだした。アピロスの場所もわからないくせに。相当慌ててるぜ。


「……わ、わかったよ。なんなんだ……」


 でも、他ならぬマユの事だ。放ってはおけない。

    俺はナミを連れて、野間大池方面、『アピロス』へと急いだ!


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