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虚無僧研究会総会に行く☆新宿法身寺にて

先日、新宿法身寺にて行われる虚無僧研究会に参加してまいりました。


虚無僧研究会とは?

その名の通り、虚無僧寺及び尺八に関する研究を目的とした会。
新宿法身寺に事務所がおかれています。

虚無僧研究会会則↓

故山田悠氏所蔵のもの

虚無僧研究会では、機関誌『一音成仏』が年に1回、会報誌が2回発行されます。
そして、春は総会(事業報告、講演・展覧会)、秋は献奏大会が行われる。

機関誌『一音成仏』に「設立趣意書抜」が最初の頁に書かれています。

(中略)この日本文化の遺産ともいうべき古典本曲の伝承者であり、作曲者である虚無僧達、そしてその土壌である虚無僧寺の遺跡や資料や語り部が、今、まさに各地で消し去らんとしています。又、不時の災害による消失の憂も多であります。
 この時期に当り、普化尺八を愛し、虚無僧を慕う現代の我々が大同団結して記録だけでも調査し残さなければ永久に無くなり分らなくなってしまうおそれがあります。
 ここに同好の相寄り本会の設立を企図きとしたものであります。
 何卒、右趣意御賛同下され、あまねく同好各位の御参加を切望する次第であります。

  昭和五十六(1981)年四月

設立から40年がたち、調査も先人の皆さんのおかげでずいぶん進んだと思います。



先程の会則は、虚無僧研究会の幹事であった故山田悠氏所蔵で、見事にきちんとファイルされていたものです。


こちらは虚無僧研究会から山田悠氏宛に届いた、第一回尺八本曲献奏大会の案内。

顧問が大御所。



『虚無僧研究会創立30周年記念誌』にも第一回献奏大会(1988年)から第三十回(2011年まで)の詳細があります。

確か数年前は虚無僧研究会のホームページがあったのですが、現在は無いようなので、この貴重な会をご紹介したく、一参加者として先日の総会の模様をこちらにnoteしようと思います。

本来なら、まずは会員になられて直接法身寺に行かれることをお勧めしますが、ネット上にも情報がほとんど無いようですので、題して…、


チラ見せコム研☆総会篇


実は私は、20数年前に東京に移住してから会員になりましたし、その後一度総会に参加したきりで、昨年からの参加です。

流派を超えた会ということで、色んな方と知り会えるとても貴重な会であると思います。ただし、コロナ以降、懇親会が無くなったので、自己紹介をしにくくなってしまったかもしれませんね。私なぞ、十数年ほど前に参加した時、岐阜からひょっこりやってきて、知り合いなど誰一人いない虚無僧研究会は怖くて(笑)懇親会には参加できませんでした。

今は、少しずつお知り合いも増え、(すっかりオバサンになり図々しくなったのもあり)全然気後れせずに参加でき、尺八や虚無僧の事を知れば知るほど、この講演や展示がとても興味深く楽しいです。

春の総会は、先ほども書いたように事業報告と、講演・展覧会です。

今回の講演は、


マット・ギラン氏講演による、

真実と虚構の狭間で
中里介山と高橋空山の交流と『大菩薩峠』に見る尺八の表象

マット・ギラン氏は虚無僧研究会の機関誌『一音成仏』にも樋口對山のことなどを執筆されており、国際基督教大学の教授でもいらっしゃるので、専門家視点からの時代小説を、どのように読み解かれているのか期待大。

小菅会長のご紹介にもありましたが、日本人で『大菩薩峠』を全部読んだ人はいないでしょう、というくらい、長〜い時代小説ですが、マット・ギラン氏は完読された、とのこと。まずはそれがスゴい。


私は恥ずかしながら『大菩薩峠』は全く読んでいなかったので、虚無僧研究会から講演のお知らせが来てから急いで読んだという、にわか大菩薩峠状態。しかも第七巻『東海道の巻』まで。

とりあえず、大まかな登場人物などは頭に入りました。

超簡単に言うと主人公の机竜之介の放浪記。机竜之助は、剣は強いのかもしれないが、人間的にどうなのよ、という人でなし。政治的な理念もどっち付かずで、投げやりな人生を歩んでいる印象ですが、こういう言わばアウトローな生き様が読者を魅了したのでしょうか。やはり、主人公を取り巻く色んな人達の波乱万丈な人生が、読者の心を惹きつけると思います。

ただし、この講座で重要なのは主人公机竜之介ではなく中里介山と高橋空山の関係。

尺八研究家の神田可遊師が大変貴重な本を貸して下さりました。

柞木田龍善たらきだりゅうぜん
『中里介山と武術  下』


一見、題名を見ても「尺八」も「高橋空山」も記されていないのですが、「机龍之介のもう一つの魅力」において、かなりの頁数を尺八関連に割かれており、写真多数、海童道まで登場する貴重な情報が満載でした。感謝です🙏



さて、

チラ見せコム研に話は戻ります。


マット・ギラン氏の講演は、

まさに尺八愛に溢れ、次から次へと関連する古い記事、史料がスクリーンに映しだされ、参加者の皆さんの感嘆にまた溢れる講演会でありました。


ここでの、重要人物は高橋空山ですが、おなじみ『普化宗史』の著者。

柔剣槍にも長け、尺八は明暗流、越後明暗流、布袋軒と免許を得ている古典尺八伝承者の大家たいか


テーマにもあるように「真実と虚構の狭間で」とあるのは、江戸時代末期の物語に明治33年生れの高橋空山が登場することです。


中里介山と高橋空山やその他の人々との関係は、ギラン氏の調査でさらに色々な資料からピックアップされ、その記事や写真がスクリーンにも映し出されました。

そして、最後の質問コーナーでは、藤由越山師の証言も加わり貴重な情報を知ることが出来ました。大変勉強になりました🙏


展覧会


「各虚無僧寺の普化本則」21種


「古管」各種


そして、写真は無いですが、
「高橋空山師遺品」


「高橋空山師遺品」は、前回のnoteにもチラリと書きましたが、空山最後の弟子、藤由越山師宛の手紙がありました。
空山師の字がめちゃめちゃ几帳面であったのが印象的でした。



私が個人的にいちばん興味深かったのは、本則。月海文庫所蔵品(法身寺)と、國見昌史氏所蔵品。


直筆!!!

(以下心のつぶやき)

…とか、感動もの。
そうだよねー、ホントにいたんだよねー、虚無僧。
すごいなー。
愛璿の直筆もある!
静岡の無量寺看主だった頃の。
字、うまいなー。
この頃、仙石騒動に巻き込まれるなんて思ってなかった頃かなー。
いやー、どれも綺麗に残ってるなー。色々共通点もあるけど、特徴もある。
判子がまた沢山!
そうだよねー。判子がなかったら、ただの手紙だよねー。
どんだけ判子あったん!


と、見ているだけで興奮。笑


判子の種類について、神田可遊師がまた教えてくださりましたが、名前が覚えきれない…。

神田可遊師も、くるくる丸めた本則を持っていらした。この本則には、看主が変わるたびにそれを書き記してあるとのこと。

マジメな人だったのでしょうね、と神田師。和紙って丈夫!ということも改めて思い知ります。

このように貴重な本則を、古物商やオークションなどで手に入れるという労力もまたスゴい。



最後に、

今回の虚無僧研究会参加にあたり、また新たに気が引き締まる思いであります。
私の世代では、先人の皆さんの調査後、例えば住職の代替わりなどしていて、すっかり廃れてしまった虚無僧の墓参りを継続することがとりあえずの責務でしょうか。(同世代が近くに居ないのでどうしましょうか汗)

『虚無僧研究会創立30周年記念誌』より

例えば、1988年の様子。
こんなに大勢集まって羨ましい限り。
今や、こちらの法泉寺にある澤水寺の虚無僧の墓は誰も訪れていないようでしたし、案内板も何も無いので、行ってもすぐには分からない状態。

世の中には、流行り廃りがあるので仕方のないことですが、細々と虚無僧の遺跡巡り伝承も続けるしかないですね。


そして、虚無僧研究会の会員が益々増えることを祈るばかりです!🙏


古典本曲普及の為に、日々尺八史探究と地道な虚無僧活動をしております。サポートしていただけたら嬉しいです🙇