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公務員にもマーケティングは必要ですか?(2)~そこにニーズはありますか?~

前回はじめて投稿させていただきましたが、予想よりも多くのみなさまに読んでいただけた上に、「スキ」までしていただけて身に余る光栄です。かたじけない。読んでいただいた皆さま、本当にありがとうございます。
なんとか毎週更新できるように頑張りたいと思っています。目指せ週刊!

ところで、タイトルで「公務員にもマーケティングは必要ですか?」と問いかけておりますが、私の答えはもちろん「必要」です。
ただし、それはマーケティングを担当する部署(マーケティング戦略課とかマーケティング推進室など)や専任の担当者を置くという意味ではなく、各課や係の事業を担当する職員が意識すればいいと思っています。
それも、「○○総合計画」とかの複数年以上にわたる大きな施策よりは、担当者が毎年実施しているような事業の方が分かりやすいのではないかと思っています。期間が短い方が「仮設→検証→改善」というサイクルがより早く・多く回るのでマーケティングの精度も上がるはずです。

前回の「公務員にもマーケティングは必要ですか?(1)」で、マーケティングは属人的な手法やテクニックをシステム化(見える化)することだと言いましたが、それは個人の思考の抜け漏れをチェックするツールや、企画を立てる際の物差しにもなるということです。
業務量が増える一方で、人員削減が進む公務員業界においては、かつては複数の担当者で行っていた事業も、今では担当者一人で行っていることも珍しくありません。チェック機能の強化にも活用できるのではないでしょうか。

2.そこにニーズはありますか?

さて、本題に戻ります。
ビジネスの出発点として、①やりたいこと(will)、②できること(can)、③求められていること(needs)、この3つが重なり合うところが最も実現性の高い領域と言われています。
言われてみれば当たり前のことなのですが、しかし、ビジネスにおける失敗原因の多くは「求められていること」が欠けていることのようです。

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つまり、人は「やりたいこと」があって、それが「できる」となった時に、「求められているかどうか」はさておき、とりあえずやってしまう傾向にあるということです。「こんなに素晴らしい商品なのだから、きっと誰もが欲しがるはずだ」と思い込み、ニーズの確認をしないまま開発・販売してしまうというケースです。

この傾向は、行政においても当てはまります。
首長や議員からの要望があって、それを実現する予算もあるという時、それを本当に住民が望んでいるかどうかを調査せずに実施してしまうことはありませんか?
「首長や議員は選挙で選ばれた住民の代表なのだから、当然彼らの要望は住民のニーズに基づいている」という意見があるでしょう。もちろんその通りなのですが、では、その選挙が僅差の票数で明暗分かれた接戦だったとしたらどうでしょうか?
たとえその事業が選挙公約に掲げた1丁目1番地の事業だったとしても、それは反対派の住民も多く存在する賛否両論分かれる事業ということになります。
あるいは、「しなければならない」や「するべきだ」という行政側の想い入れや思い込み、使命感が強すぎる場合もあるかもしれません。

いずれにせよ、「やりたいこと」と「できること」が揃ったからと言って、無批判に実行してしまうのはリスクが大きいので、「本当に求められているのか?」と一度は冷静になる必要があります。

ニーズはあくまでもヒントであり、素(もと)にするもの

一方で、ニーズをそのまま実行するのも危険が伴います。
消費者が企画・提案したアイデアをそのまま商品化した場合、一過性のものが多く、ロングセラー商品にはならないケースがあります。
例えば、「女子高生が作った○○」といった類のものが話題になることがありますが、発売当初こそ物珍しさからメディアにも取り上げられたりしますが、一時的な盛り上がりを見せて終息してしまうことが多いようです。

はじめから話題性や意外性だけを求めて、「やっぱり王道(定番商品)が一番だよね」と原点回帰させる戦略、つまり新商品には定番商品の引き立て役になってもらうという戦略であれば別ですが、ニーズはあくまでもヒントであり、それを素にプロが作るものがより高い価値を生むのだと思います。
先ほどの例で言うと、「女子高生が作った○○」ではなく「女子高生の声から生まれた○○」という感じでしょうか?

最近では、プロダクトアウト(作り手側の論理や技術を優先する考え方)とマーケットイン(消費者のニーズを優先する考え方)のどちらか一方を選択するのではなく、両方を意識した戦略が主流になっています。

行政においても、要望や苦情があった時に、その情報を鵜呑みにせず情報の出所や正しさを確認することが必要です。また、その「声が多い(多数のニーズがある)」のか、それとも「声が大きい(少数だが発言力が強い)」のかを見極めることも重要と考えます。
そして、公務員も「住民の声」に耳を傾けながら、そのニーズを満たすための施策や事業を、行政のプロとして企画立案することが重要なのではないでしょうか。

つづく。

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