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オードリー若林正恭 / ナナメの夕暮れ 推薦図書 書籍レビュー

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「芸人が真面目にぶつかるとそれはそれで凄く面白いです」

この本は若林正恭が書いたエッセイ集の作品である
雑誌ダ・ヴィンチでの連載にさらに書き下ろしを加えて構成されている


まず私はオードリーのラジオのヘビーリスナーである
そして彼の著書「社会人大学人見知り学部 卒業見込」
「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」も読んでいる


そこで読み取れる彼の考え方が好きだし少し救われる気持ちもあるので
今作も楽しみにしていたのだが少し色合いは変わっていた
基本的な不器用さや面倒くさい所はもちろん残っているのだが
世の中と自分との戦い方が上手くなっていて
明らかに違う場所にたどり着いた感じが伝わって来た

初めはそれは少し悲しくもあり
そらそりゃそうだよなと思う気持ちもあり
変な感覚になってあまり読み進めることが出来なかった
でも少し読めばその感覚は薄れて行った
場所は変わったとしてもこの人は変わらず戦っていたからだ


この本は自己啓発本ではないし小説でもない
こちらがただ一人の人間のエッセイを読めば良い話なのに
妙に自分のピントに合わせようとしすぎて読んでしまっていたのだろう
救われようとか影響されようなんていうことは一番邪魔なものである
自分のプライドを守る為に誰かの意見を盾にしてどうするんだという話である
色々と自分に落とし込むことはあってもそれをただ装着しても意味がないのだ


今までの自分を否定することになったとしても
人生を素直に楽しむこと今幸せな事をするという道を彼は選んでいた
その境地に来るまでの戦いを書いているのだが濃い話だった
分かるところもあればどこまでこの人こんがらがってるのと思う所もあった

その中であったかくて人間らしい話がいくつかあって
ただ戦っている訳ではなく少しずつ明るいものを感じられた
行きつけの定食屋が無くなってしまった話を
ああいう風に書いてるのは心を掴まれた

キューバ・モンゴル・アイスランドに行った話も
凍える手や最後に書いてた体力の減退の話も
戦い途中のこれ以上ない安らぎと活力を書いていた
この一瞬の安らぎだけでこの人は一生戦い続けるのだと思う


結構色んなテンションが混ざっているエッセイだと思う
その時その時のモードで書いているからぶれている所もあるが
これは矛盾とかでは無く人間だからという解釈をした
もちろん世に出すという上で整えたりする事は必要だと思うが
この作品の中で書いていたように
外のジャッジがあってるか分からないと言うことを考えると
今思うことを出すという事の鮮度に勝るものはあまり無いと感じた
外を気にしすぎて整えすぎるよりよっぽど大事な事だと思う


この先を意識しすぎて冷めているふりをしている彼より
今熱くなれるものに素直な今の彼の方が面白い
斜めの時代が終わりかけている彼だがまだそれは終わらないし
そこで戦っている姿をあがく姿を隠さず見せて欲しい
自分を認めるというシンプルで最大の難問に答え続ける
汚くて歪な美しさを表現し続けて欲しい
芸人が真面目にぶつかるとそれはそれで凄く面白いです
是非皆様も読んで見てください


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変幻自在のクリエーターユニット「KATANAGARI」です。基本ミュージシャンとライターです。Apple musicなどでカバー音楽、オリジナル音楽を配信しています。 https://itunes.apple.com/jp/artist/katanagari/1288449046