電楽サロン
短編が置いてあります
お肉仮面と電楽サロンがこれまで作ってきた音楽がおいてあります。
2023/11/29〜2023/12/29にかけて行われる「第三回お肉仮面文芸祭」の収集マガジンです
謎のマッシュアップを掘り、future funkの話をする
第2回逆噴射小説大賞に出したお話の続きを書いています
8時きっかりに時計のアラームが鳴る。その3分前に奏太は目を覚ます。いつも通り床が冷えきっていた。ガレージをすこし住みやすくした程度の「訓練所」は乾燥している。奏太は空咳をする。小さな窓には鉄格子がはめられ、光がほとんど入らない。灰色がかった光を見て今日は曇りがちな晴天なのだろうと奏太は想像した。 秋に近づき、コンクリートの上で眠るには肌寒かった。毛布から出た足を奏太が戻そうとする。関節が鈍く痛んだ。ズボンの裾をまくると、腿が青黒くなっていた。昨日の「武器訓練」で鉄パイプで
承前 メキシコ、オアハカ州郊外。真夜中に一発の銃声が響いた。住民はカーテンの隙間から外の様子を窺う。メキシコシティに比べてオアハカは滅多に銃声が鳴り響かない。慌てた野良犬が通りを走りぬける。片足を立たせてよたよたと走り抜ける野良犬への関心は街の住人にはない。 銃声の出所は、通りに面した家からだった。家は大きな平屋だった。白い外壁は太陽に当たると柔らかな光を反射する。よくある家だった。むしろ、そうでなければならなかったのだろう。 住民は平家に住む人物はオアハカの人間では
浦井先生はボルゾイに似ている。輪郭がしゅっとしてるところなんてそっくりだ。高校時代はバレー部の主将だったらしく、筋肉質な身体はボルゾイの白くてがっしりした姿と重なる。 他にもまだある。今日の先生は無印の白いブロードシャツを着ている。肌の白さとマッチしていてかなりボルゾイだ。 そんな浦井先生が駐車場に倒れている。舌を出して目を半開きにして尻を突き出したまま微動だにしない。センター分けにした黒髪が血に濡れている。すぐ横に車のキーが落ちていた。駐車場に一台だけ止まった、先生の
えびのお葬式用
「そのまま俺の爪研ぎになるんだ! 死ねッ!」 小鬼が動いた時だった。 老人が視界から消えていた。5メートル先で確かに胡座をかいていたはずの姿がどこにもなかった。 確かに見ていたはずだ。見逃すほどカメラのメンテナンスを怠っているはずがない。 鋼鉄の足が宙をかいた。 ヴァーユが探しだす前に身体が浮いていたのだ。小鬼は自分が投げられたのだと気づいた。頭の位置が地面に近づくにつれ、老人の姿が目に入った。 衝撃が脳天に走る。ヴァーユは床に打ちつけられていた。ぐわぐわと視界に
港区に居を構える覇金グループのビルは不夜城と化していた。 タイピング音、電話の着信、怒号。さらに怒号。それらが止むことはない。生き馬の目をくり抜くような都心では当たり前となった光景だ。 だが、覇金グループの雰囲気は異様だった。怒号やタイピング音に混じって、鉄の軋む音や打撃音もオフィスの環境音として聞こえてくるのだ。 音の出所は、DX推進室本部の修練室からだった。 修練室にソファやシャンデリアなどの調度品は一切ない。代わりに砂袋、バーベル、煮えたぎる鉄桶などが置かれて
弾丸のような頭だ。姫華が間違えるはずがなかった。だが、信じられなかった。 ライダースーツの鉄人が走ってきている! 時速150キロで飛ばす姫華に己の脚で追いつこうとしていた。 《私はカンフーチップを侮ってたみたい》 姉は笑いを噛み殺しているようだった。 「何笑ってるの」 《蒔いた種がこんな風に育つと思わなかったから》 姉は、死んでよかったのかもしれない。 「さあ、ロードファイトと行こう」 バイクが言った。電子音を組み合わせた人工的な音声だった。 背後から爆走するタク
座布団のような大きさのフォカッチャに、拳大のアイスがふたつ乗っている。カナエはフォークをぶっ刺し、大口を開けて頬張った。 「んま!」 もぐもぐと咀嚼しながら、水に手をつけかけ、結局酎ハイに手を伸ばした。好きなものを好きなだけ摂る。そういう食べ方だった。 「すごいな」 俺の感嘆にカナエが不明瞭な言葉で返す。 カナエのテーブルにはパスタ2皿、食べ終わったアヒージョ皿にバゲット3個が積んである。酎ハイは5缶空いており、新しくワインを頼んでいた。 一体、俺より細い身体のどこ
むせかえるような血の匂いで俺は目が覚めた。部屋の中は夜闇で満ちている。それが返って血の匂いを強めていた。 汗の匂いまで混じってきた。俺は頭が痛くなった。最悪なときはどうするか。まずは酒だ。一杯やらないと気がすまなかった。立ち上がり、二、三歩歩いて躓いた。夜に目が慣れてくる。足元に女がうつ伏せで倒れている。ピンクと黒のフリルのブラウス姿で、チョーカーを首に巻いている。背中には楽器ケースを背負っている。奇妙な地雷女だ。 一旦忘れよう。俺は戸棚からジャックダニエルを取り出す。
こんにちは。電楽サロンです。 逆噴射小説大賞が終わりました。私のお話は……最終選考には行きませんでした! めちゃ悔しい〜〜〜!! 今日は自分の書いたお話の話とタイトルの話をします。 自分の大好きが入ったお話なので書けて大満足です。でも、悔しい。 今回の逆噴射は絶対自分が続きを書きたくなるお話にしよう!と思って作りました。 逆噴射は書きっぱなしで終わらせられるけど、それで選ばれたら絶対後ろめたい気持ちになりそうだったからです。選ばれて「続きは?」と訊かれたら「鉄
高速道路にエンジンの音が鳴り響く。風が耳元で吹き荒れている。姫華の操るバイクにはカウルがなく、風が直撃してくる。 出せる限界の速度を出していた。 真夜中だった。ヘッドライトが行き先を示すように伸びている。 交通量は少なかった。たまにポツポツと目の前に現れる車を姫華は追い越す。 マローダーとのカンフーデスマッチの後、山道を出て中央自動車道を走り続けていた。 今は八王子に入ったあたりか。 「……」 姫華は痛みに耐えていた。 ハンドルを握る手が絶え間なく疼く。姉の言
朝のお散歩をイメージしたlo-fi hiphopをつくりました🥩 お肉仮面も朝ごはんの時に流しているようです。
こんにちは。電楽サロンです。 夏頃からずっと聴いているアーティストの窓辺リカさんの話をします。 きっかけは、Apple Musicの自動再生で流れた「The shilver key」という曲でした。 交通事故でした。一発でぶっ飛ばされてしまいました。曲全体に感じるのは終末です。夏休みの終わり、学校の下校時間、元が何か分からない瓦礫の山、百貨店で聞く蛍の光。記憶にある色んな終わりの要素が、ひとつの音楽になって襲いかかってきました。 もの寂しくて清々しい。刺々しいの
こんにちは。電楽サロンです。 風が冷たくなってきましたね。みなさん風邪を引いていないでしょうか。 ここはひとつ、熱いnoteイベント『お肉仮面文芸祭』で身体を温めて冬に備えましょう!! お肉仮面文芸祭とは? 電楽サロンとお肉仮面が主催する写真と文章を組み合わせたエキサイティングなお祭りです。 お肉仮面の写真からもっと世界観を広げたい、写真を見た人がどんなお話を紡ぐのか見てみたい、というお肉仮面氏たっての希望で始まりました。 賞はありません。写真を見て感じた
診察室の天井には採光窓がはめられていた。薄い病院着に光が差す。満月を眺めながら、姫華は相手の反応を待つ。 「見事です」 しばらくして医者は言った。頭のレントゲンには弾丸が写っていた。 「どこまで覚えていますか?」 姫華は順を追って話す。ホストクラブで遊んだこと。帰り道で銃口を向けられたこと。 「誰が銃を?」 「あ……」 訴えようにも声が出なくなっていた。喉が詰まっているわけではなさそうだ。咳すら出ず、混乱した。 《待って》 頭の中に声が響いた。姉の