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女性作者の漫画と男性作者の漫画

  以前ネットで、女性作者が書いている少年漫画を判別できるか、というまとめサイトの記事を読んだことがある。その記事にはミソジニーとかそういうネットくさい言葉が書かれていてなぜか多少荒れていたが、この話題自体は結構面白いなと思った。


  
  私の中でこの漫画(いまは少年漫画に限定する)の作者は女性っぽいなと判別する要因は何だろうかと考えたところ、ストーリーラインに自然な恋愛が挟まってくるかどうかという点が大きかった。ドラゴンボールに代表されるような少年漫画ではバトル!バトル!バトル!という画角が多い。ベジータの息子、トランクスは気付けば生まれているし、ドラゴンボール超で悟空が「おめえがうむわけじゃねえんだから」と言い放って物議を醸したことは記憶に新しい。(まあドラゴンボール超に関しては鳥山先生は監修として関わっているだけらしいが。)ワンピースでもナミやロビンとの恋愛が始まる気配は微塵も現れない。そういう意味では漫画ナルトでサクラの個人的な恋模様がちゃんと描かれているのは、岸本先生が比較的女性っぽい考えの持ち主だからなのかもしれない。


  それに対して鋼の錬金術師のエドワードとウィンリィの恋や、結界師の良守と時音のやり取りなどはごく自然な営みとしての恋愛が素朴に描かれているように思う。幼馴染の2人が甘酸っぱいやり取りをしてこちらがちょっとはにかんでしまう、みたいなことが男性の描く少年漫画には少ない気がする。ちょっと前に鬼滅の刃の作者が女性だったということが暴露されていたが、わたしはそれをネットニュースで読んだとき少し納得した。甘露寺さんが「自分より強い殿方を探すため」と言って鬼殺隊にはいったところなど、恋愛が物語の中に違和感なく意識されているところがひどく女性っぽいなと思っていたからだ。


  すぐに思い浮かぶ有名どころの漫画しか検証していないから、もしかしたら反例はいくらでも出てくるかもしれない。ジャンプでは少年ウケのために冒険!絆!未知の敵とのバトル!みたいなことをことさらに強調して描いている可能性もある。けれど漫画を長期的に連載していると、作者自身の考え方がそこに反映されていくから、女性っぽさ、男性っぽさがそこに現れていくのはむしろ当然ではないかと思う。わたしは上記に挙げた作品がどれも好きだからそこに優劣などないと考えている。


  他に細かいことを言えば、キャラの言い回しが心情描写的だったり、悪い言い方をすれば少し回りくどかったりすると女性作者っぽいなと思うことがある。女性は得てして心理描写を優先しがちだからだ。また女性がサキュバスみたいな格好をしていたり、コスプレみたいな格好をしていると男性作者っぽいなと感じることがある。しかしこの条件は漫画上の演出であることも多く、そんなに信憑性は高くない。絵柄で見分けられた試しはない。私がもしシャーロック•ホームズだったらもっと的確に作者の性別を判定することができたかもしれないが、残念なことに私は凡人である。結局はどことなく女性っぽい、男性っぽい程度しかわからないのだった。

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