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かっこいい苗字に憧れる

  かっこいい苗字になりたい。バリバリ現役中二病患者であるわたしは、今でもそう思っている。わたしが「かたなしはらい」という名前をつけたのも、半分は「なんかカッコいいかも…?」という理由からである。


  アニメや本に出てくる苗字というのは見栄えが優先されるから、実際には日本に10世帯くらいしかいないような苗字が見栄えがいいという理由一点だけでどんどん採用される。戦場ヶ原という名前は日本にはいないらしいが、こんな名前を名乗れば例えどんなところでも一発で特定されてしまうことだろう。韓国では金、李、朴、崔、鄭だけで人口の50%を占めるというから、日本の姓名の多様さというのは驚嘆に値する。
  


  かっこいい苗字であることのメリットはなんだろうか。目立つ、覚えてもらいやすくなる、突然エヴァに乗れと言われた時により物語の主人公っぽさを演出できる、「佐藤」という名前は多すぎるからという理由でデスゲームに巻き込まれたりしない、とかだろうか。ただ珍しい苗字は大抵、漢字が難しいので小学生くらいまではテストで名前を書くときに難しくて他の人より余計に時間が取られる、というデメリットはある。しかし藤原さんとかはありふれた名前なのに画数が多いから、これくらいはかっこいい苗字の代償としては小さいものだろう。わたしの本名も全国に4300人程度しかおらず珍しいと言えば珍しいのだが、ありふれた漢字の組み合わせのため、かっこいい苗字への憧れは脳内に燻っている。


  もしかっこいい苗字の人に求婚されたら、もしかしたら1%くらいはそれが理由で心が動いてしまうかもしれない。たとえば篠原とか小野寺とか、それほど珍しくない苗字でもいい。篠原はらい、とか小野寺はらい、とか。病院で名前を呼ばれたわたしは颯爽と立ち上がり、診察室に闊歩していくのだ。苗字ばっかりは生まれによって全て決まってしまい、大抵の人間は結婚でしか変えることができない。だからわたしが裁判所に行って「新しい名前に変えたいんです…!」と直訴でもしない限り、これから名前を変えるチャンスはそう多くは訪れないはずだ。


  果たして実際にかっこいい苗字の人たちは自分の名前についてどう思っているのだろうか。えっへん、とおもっているのだろうか、それとも名前負けを気にしているのだろうか。わたしもかっこいい苗字になった時のために自己研鑽を積み、名前に恥じない自分になるよう努力しなければいけないだろう。そうでなければ人前で堂々と名前を名乗れなくなってしまうわけなのだから。

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