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SwaggaとSEAHAWKSの物語

【YOKOTA HOOP FEST 2015 備忘録(その2)】

米軍横田基地内のジュニアチームのコーチと連動し、2015年にYOKOTA HOOP FESTという大会を開催しました。

同大会に出場された  は、本当に素晴らしい戦いを見せました。運営事務局の1人として、ベストゲームの1つとして鮮明に覚えています。当時のFBへの投稿。


■SwaggaとSEAHAWKSの物語

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2015年5月23日、24日。横田基地内の中学・高校の体育館を舞台とした日米のジュニア世代選手(15歳以下)の試合運営に関わった。以前の投稿の通りである。
大まかな概要は記載したのであるが、一つだけ記載忘れがある。これだけは自分が忘れない為にも記載しておきたい。


今回、アメリカでは非常のポピュラーな方法であるという”Double Elimination Tournament”で試合が行われた。トーナメントを基本としているのであるが、敗者チームにも、再び優勝戦線に残れる可能性がある仕組み。勝敗によって、一日の試合数や、試合時間が不確定になる部分も多いので、実際に運営しようと思うと、良い部分も悪い部分もある。事実、初日は体育館コートが一つしか使用できない事もあって、色々とトラブルもあった。詳しくは割愛。


この仕組みの中で良かった事。それは、小川太コーチが率いるShizuoka Swagga(静岡市/日本人)とWatsonコーチが率いるYOKOSUKA JR. SEAHAWKS(横須賀/アメリカ人中心)のリベンジマッチ、及び、それに至るまでの物語に触れることが出来たこと。


大会のオープニングゲーム、または2試合目だろうか。細かな事は忘れたが、組み合わせ抽選によって両チームが合いまみえることとなる。Swaggaは、素晴らしい技術とシュート力、ディフェンスの脚、チームとしての組織力、何よりも監督である小川さんの気迫が乗り移ったような、非常にエネルギーに溢れた素晴らしいチームである。

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中学生年代にしてはサイズのある選手が、アウトサイドからのドライブイン、ミドルシュート、華麗なハンドリングを駆使してゴールへと迫る姿は圧巻で、時に筋肉隆々のSEAHWAKS選手を圧倒する場面もあった。

サイズの小さい選手も、サイズが無い選手の生き残る術をすでに知っているかのような対戦相手にしたら小憎たらしいプレーを見せる。突破力、スティールの感性、ディフェンスを欺くパス、ここぞのシュート力、非常に高いレベルである事はすぐに分かった。

事実、コートに隣接する観客席(この仕組みを、日本の体育館でも導入できるとしたら、どんなにバスケットボールの試合が創り出す空間が特別な空気になるだろうか!!)にいるアメリカ人の父兄も驚きと賞賛の声を上げていた。
それでも、拠点は違えども、HOMEであるSEAHAWKSにも意地がある。帽子を深々と被り、非常に体格の良いWatsonコーチが選手に指示を送り、タイムアウトで作戦を授ける。


徐々に試合の行方がSEAHWAKSへと傾く。ネイマールのような髪型をしたエースガード。ほぼ全ての突破は右ドリブルなのだが、鋭さとパワー、そして接触を厭わずにゴール下まで挑み続けるプレーがチームに勢いをもたらした。もう1名。幼くして既にファイターに必要な身体的、精神的な資質を持ち合わせているインサイドの選手の活躍(大会を通じて、私はファイターと呼んでいた)の活躍。徐々にリバウンドを支配し始めた。
そして、勝負どころでSEAHAWKSが変則的なゾーン(1-1-3?)を仕掛ける。

慣れないレフリング、ゲームレギュレーション、システムは勿論、気迫で守るSEAHWAKSが勝り、僅差で勝ち星を掴んだ。この結果、Swaggaは敗者復活トーナメントへと回る(Double Elimination Tournamentにより、勝ち進めば、決勝戦へと辿り着く)。


試合後、悔しそうな小川コーチ、選手の表情が印象的だった。


その後、お互いに試合を消化し、翌日の第2試合、再び両者が合いまみえる事が決まる。慣れないトーナメント表を眺めながら、「よし、、」と静かに気合を入れていた小川コーチの息遣いを覚えている。


基地内のホテルに宿泊し、翌朝を迎える。


この日、前日まで使用できなかった体育館の一つが使用できるようになり、試合前のアップや急遽のピックアップゲームで使用できる事となった(詳しくは前回の投稿に掲載。RGKと日光フェニックス連合軍(本選で出場機会の少なかった選手を中心に構成)対YOKOTA SURGEなどの試合も即興で実施)。

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決戦を11時頃に控え、この機会をSwaggaは見逃さない。即座に1-1-3のゾーンブレイクの練習を始め、対策を練る。対戦を前に、コーチングにも熱が入る。メイン会場への通用道路にもなっていた。歩く人が、Swaggaの熱のある練習風景に足を止める。アメリカ人も、だ。


オフェンスエントリーのポジショニング、パスのアングル、狙いどころ、非常に細かな指導が行われている。主催者のWilliamsも様子を見に来た。嬉しそうに練習風景を眺めている。対戦相手のSEAHWAKSが到着する。試合前に練習をするに目を向ける。少し驚いた表情を浮かべ、メインコートへと向かう。


筆者は、運営委員でもあるので、色々と各方面と話をしながら誤認識やミスコミュニケーションが無いようにコートとコートを往復し、様々な人と話をし大会の安全な運営へと奔走する。(そもそも、そんなに英語は上手くないが、小回りは効く)。


いよいよ、SwaggaとSEAHWAKS試合が始まった。残念ながら、筆者は別コートで急遽企画したBチーム戦のレフリーの為に試合を見る事が出来ない。Bチーム戦の行われているコートから中庭を挟んだ体育館がメインコートだ。歓声が聞こえる。白熱した試合展開である事が分かる。


ハーフタイム、レフリーの合間にコートを見に行く。Swaggaのリード。ゾーンへの対応は抜群で、何よりも自信に満ちている。SEAHWAKSのベンチ、父兄も熱を増す。誤解を恐れずに言えば、日本のミニバスなどで観客席から聞こえる、選手に対する指示や命令ではなく、目の前の熱のある試合に対する感情の発露。見事なプレーには歓声が起こる。対戦相手のプレーであっても、だ。それが良い。競技への理解と愛を感じる。

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試合終了の笛が鳴る。Swaggaの勝利。見事にリベンジを達成した。主催者のWilliamsは、観客席で嬉しそうに試合を眺めている。小川コーチ、Watsonコーチが握手をする。試合後、すぐにWatsonコーチ側から練習試合の打診があったようだ。事実、この大会の数か月後、静岡の地を横須賀のチームが訪れている。

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静岡市でジュニアクラブチームとして活動するSwaggaのHP。TEAM STANDARDという項目には" I love basketball "と記載がある。ここで大切なのは、何に対しての" love "なのか、と言う事だ。


全力を出して試合に挑む事、どうしても勝ちたい相手を前に、知力を尽くして準備をする事、分析、研究、改善。同時に、目の前の勝利に左右されない選手の確固たる育成。勝利への愛。勝利へのlove。


チームのHPには「バスケットボール道」と称し、下記のような詩も書かれている。私は、この句が非常に好きだ。
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バスケットボールを道として選び、それ故に礼儀を重んじ、コートで精神を鍛え、心を練り敵は相手ではなく、自分であることを知り、己に勝てる人間になりたい。他人より2倍も3倍も努力し、やらされる3時間より自ら進んでやる1時間の価値を知り、最後までやり通し決して最後まで諦めない根性のある 
〝バスケットボール選手になりたい〟
失敗を人のせいにせず、簡単なプレイほど慎重に扱い、同じミスを2度と繰り返さず、人の気持ちになって物事を考えられる心豊かな
〝バスケットボール選手になりたい〟
練習は人生の縮図と悟り、今日出来ることを明日に伸ばさず、研究と精進を怠らず、やれと言われたらすぐに行動できるファイトある
〝バスケットボール選手になりたい〟
我慢の味を良く知っており、物を大切にする温かな心を忘れず、ライバルすら協力したくなるような、男に惚れられる
〝バスケットボール選手になりたい〟 
バスケットボールは、人間を練り
バスケットボールは、人間をつくる。
そして、バスケットボールは、人生を導く。

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大会終了後、SwaggaのFBページに、主催者のWilliamsがコメントをする。
Swagga,great team!!
彼は、Swaggaの初戦の敗戦を見ていた。そこからの勝ち上がりで再戦の機会を得るプロセスも見てきた。そして、試合前の猛練習も見つめ、白熱のリベンジマッチも見ていたのであろう。
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我慢の味を良く知っており、物を大切にする温かな心を忘れず、
 ライバルすら協力したくなるような、男に惚れられる
〝バスケットボール選手になりたい〟
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上記の詩からの再引用。つまり、Swaggaは男に惚れられるチームだったのだ。間違いなく。対戦相手が認め、主催者が認めた。Swaggaのチーム一丸
となった勝利への執念。見事だった。

お互いに真剣勝負に挑んだ。ある時は一方が勝ち、他方が負けた。次の機会では、その逆の展開となった。勝利の喜びも敗戦の喜びも、その順番こそ違えども、短い期間でお互いに分かち合った。間違いなく、お互いに勝利を目指す中で精一杯に取り組んだ。主催者冥利に尽きる瞬間でもあった。


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