シナリオ【 逃避行 】

昔々あるところで出会った少女と男の冒険譚。HPで全文公開中↓
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●黒い画面に白い文字が出る

昔々あるところに…


●隠れ家・小屋

F.I.

毛皮の寝具をかけられた少女が目を覚ます。15歳くらいの少女。うつろな目で周囲を見まわし、一方に気づく。

薪の燃える囲炉裏のむこう、髭を生やした男が縫物をしている。少女に気づいて見る。

少女は怖がり自分の衣服を確かめ、寝具にもぐって身構える。

男「安心しろ(少女から目をそらし縫物を続ける)どこから来た」

少女「――(警戒)」

男「なぜここに――落ちたのか。身投げか」

少女「(目が泳ぐ。記憶を辿ろうとする)」

少女の荒い息が先行し、


●記憶・雪の荒野

月明かりのなか、何もない雪原を少女が走る。後ろを振り向く。たいまつの火が遠くにいくつも見える。

たいまつを持って馬に乗り少女を探す追手たち。雪上の少女の足跡を辿る。

逃げる少女の行く先が突然途切れ、足元は崖。その下に川がゆったり流れ、川幅は暗闇ではっきりしないが渡れないのはわかる。

少女は引き返して追手が来るのとは別方向に逃げる。

迫る追手たち。

疲労と深い雪で少女の足がもつれ転ぶ。

少女の目の前が再び途切れる。見下ろすと断崖絶壁。月光に照らされる波。

少女は絶望の表情。後ろを振り向く。追手たちがそばまで来る。ひとりの男が馬を降りてたいまつを片手に来る。

追手の男「おとなしく来い」

少女は無言のまま後ずさり、背中から崖下に身を投げる。

海から突風が吹くなか追手たちが駆け寄る。眼下は闇。少女の姿は見えない。

追手たち「クソ」「なんてことを」「命はあるまい」「引き揚げるぞ」

追手たちは再び馬に乗り、雪原を去っていく。

カメラが絶壁を下りていくと窪み。落ちる時の突風で煽られた少女がその窪みの雪の中に落ちて気を失っている。

雪の吹きつける寒風のなか目を覚まし、周囲を見る。崖の途中になんとか歩けそうな幅がある。

しかし少女は諦める。目をつぶる。

間あって再び目をあける。崖の途中にわずかな湯気が見える。

寒さに凍えながら体を起こし、少女はなんとか立ち上がって湯気の方に向かう。

狭い場所をカニ歩き。絶壁を伝って強風に耐えながら進む。眼下は死を感じる闇。


●記憶・洞窟

大人がかがんでやっと入れるような狭さ。そこから流れ落ちる水が湯気を立てている。水量は多いが強風で撒き散る。

少女が触れてお湯と確かめ、洞窟に入る。入口は狭いが中は広く天井も高い。湿気がこもっていてあたたかい。奥にわずかな明かりがある。

流れるのは温泉。いくつか堰き止められ段々になっている。人の手が加えられているのは明らか。上流に行くと温泉はさらにあたたかく、少女は寒さに震える手を浸して辿る。

一段登り角を曲がったところで気づく。奥に小屋がある。壁の隙間から漏れる明かり。少女は恐怖で近寄れない。しかし寒さと疲労が限界でしゃがむ。岩のあたたかさに気づき、うつ伏せになって頬をつける。震えがとまらないまま目をつぶる。

小屋の扉があいて男が顔を出す。物音に気づいていて洞窟の闇を窺う。少女が倒れているのに気づく。


●現実・小屋

冒頭の隠れ家。

男「(縫物を続けていて)探して来られる場所じゃない(少女を見る)」

少女「――(男から目をそらし、何か話そうとするが言葉が出てこない。苦しい表情)」

男「(気づいて)話せないのか」

少女「(涙目で見る)」

男「言葉はわかるか」

少女「(小さくうなずく)」

男「――そうか(目をそらして縫物に戻る)」


●断崖絶壁(朝)

夜が明けている。雪がしんしんと降り続く。風はない。断崖の突端、洞窟の入口から流れ出た温泉はまっすぐ落ちて湯気を立てている。しかし湯気は崖上まで届かない。洞窟は崖上から気づかれない場所にある。

降り続く雪で少女と追手の足跡は消えかけている。


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