シナリオ【 Joker 】

中学3年の三浦佳代は夏休みを前に不登校を続けていた。彼女を宇都宮の自宅から連れ出したのは変わり者の叔父、馬場浩介。ふたりは東京で同居生活を始める。新たな一歩を踏み出す少女の成長物語。

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●馬場家・茶の間(夜)

F.I.

古い和風の家。馬場浩介(39)と笹原有希(37)と三浦佳代(14)が夕飯中。浩介と有希が早口でしゃべっている。

有希「今日地下鉄に乗ったら電車んなかで牛乳飲んでるのがいてさ」

浩介「パック?」

有希「そう。こうして」

浩介「1リットル?」

有希「違う。さすがに500だったけど」

浩介「混んでた?」

有希「まぁまぁ。立ってヨロヨロしながら飲んでて、ないわーって」

浩介「ないね。いくつぐらい? ガキ?」

有希「ううん、20代半ばとか(佳代に)ね」

佳代「うん」

浩介「田舎もん?」

有希「軽装だったからね。オノボリには見えなかったけど」

浩介「ふーん。外国人とか」

有希「わかんない。服のセンスは普通だった」

浩介「そういうの教えんのが先だと思うけどね、学校って」

有希「マナーね」

浩介「マナーっていうのもどうかと思うけど。マナーってほら、根拠もなく守らなきゃってとこあるじゃん。例えばメシのマナーだとさ、食器持つのが日本でよその国は違うじゃん」

有希「逆だったりね」

浩介「麺すするのがあり得ないとかも日本じゃ全然アリで。むしろ音立てないで食ってるヤツなにって感じじゃん」

有希「うんうん」

浩介「国によって文化の違い? 国なのか? 地域? 文化ってのもやな感じだけど。勝手にこれが本当ってつくって違うのはハシタナイって。箸の持ち方もそうじゃん。食えりゃなんでもいいっちゃいいのに。スプーンが楽ちんなら全部それでもいいのに、無理矢理ルールつくって意味持たせてっけどよくよく考えたら意味なくねってこと多くね?」

有希「多いね」

浩介「マナーどうこうより神経の問題じゃん。そこそこ混んでる電車内で牛乳パック飲んだらどうか。急に揺れたらこぼさない? まわりにかかんない? まわりはビビってない? そういうとこに気が行かんのがどうよってね。それでもどうしても飲まなきゃダメだったんか。そんなに喉かわいてたんか。一度駅に降りて水分補給じゃダメだった? 超急いでた? 買う時ストローもらえんかった? いろいろ選択肢あったはずなのに安易にそれ選んじゃうのがもうアホで(と話してる声が低くなり)」

N「(佳代の声)この人は私の叔父さん。母の弟。私は2日前からこの人の家にいる。おととい突然私の家に来て」

トントン、とノックが先行し、


●三浦家・佳代の部屋(午後)

佳代が部屋着で座椅子に座りネットサーフィン。あいたドアの方を見る。

浩介「おす佳代」

佳代「あ」

浩介「学校行ってねんだって?(部屋に入りドア閉める)」

佳代「うん」

浩介「なにしてる(パソコン画面を見る)」

佳代「ネット」

浩介「YouTube? ユーチューバー? ユーチューバーじゃんけん?」

佳代「ん?」

浩介「東京来ないか、俺んち。家にずっとじゃつまんねぇだろ」

佳代「え」

浩介「パソコン持ってっていいよ。Wi‐Fi飛んでる。ネットはできる。どうせもう夏休みだし。学校行かねぇだろ。来いよ俺んち。犬いる。見たことあったっけうちの犬」

佳代「ない」

浩介「かわいいぞボーダーコリー。オスの2歳。会わせてやっから来い。ついでにしばらく東京で遊べばいい。用意しな。荷物はパソコンと着替えと、まぁなんでも好きなの。車で来たから積めるだけ積んで。ママには話しとくよ。行くな?」

佳代「う、うん――」


●三浦家・前の道

路駐した車に浩介がキャリーバッグを積む。女子向けの色のキャリーバッグ。浩介の姉、三浦沙織(42)と佳代がそばにいる。佳代がリュックを渡し浩介はそれも積む。

沙織「荷物それだけ? 教科書は?」

浩介「ん? いる?」

沙織「当然でしょ」

浩介「勉強なんかしないよなどうせ」

沙織「受験生なのにふざけないで」

浩介「だってさ。持ってきなうるせーから」

佳代「うん(玄関へ)」

沙織「甘やかさないでよ」

浩介「甘やかすよ。滅多ねんだこんなこと」

沙織「やめて」

佳代「(ふたりの声を背に玄関を入り2階へ)」


●走る車

浩介が運転し佳代が助手席に乗っている。

N「名前は馬場浩介。浩介叔父さん。昔はジョーカーって呼んでた」


●三浦家・リビング

10年前。正月。三浦家に来た浩介。そして沙織と幼い佳代(4)がトランプしている。

佳代「なんでババっていうの」

浩介「それは俺に聞かれてもな。ママだって昔は馬場だったんだぞ」

佳代「ふーん。ババってジョーカー?」

浩介「お、いいねそれ。気に入った。俺のことこれからジョーカーと呼べ」

佳代「(笑って)ジョーカー」


●現実・馬場家・茶の間

夕飯中の浩介と有希と佳代。浩介と有希がまだしゃべっている。

N「さすがにもう呼んでないけど」

有希「でも何が迷惑かってのは人によるじゃない。こっちにたいしたことなくても相手にとっては不快とか。考えたらキリないからルールってできたんじゃん。とにかく決めちゃえば考えなくていい。迷わなくて済む」

浩介「なるほど」

有希「それが常識とかになって沁み込むと、またそれに左右されて、ますます考えなくなる。そんなことずっとやってんじゃんて」

N「この人は叔父さんの彼女。有希さん。近所にお母さんと住んでてこの家にはしょっちゅう来る。私が来た初日もそうで」


●馬場家・ガレージ(夕方)

車から降りた浩介がリュックとキャリーバッグを出してると有希の声が「おかえり」

浩介と佳代が見ると、

有希「(あいた玄関からサンダルで出てきて)お疲れさん」

浩介「おお、ただいま」

有希「(笑顔で佳代に)いらっしゃい」

佳代「(勉強道具の入った鞄を持っていて一礼)」

有希「なにチャンだっけ?」

佳代「あ、三浦佳代です」

有希「そうだ佳代、佳代ちゃん。よろしく」

浩介「有希おばさん」

有希「NO! おばさんは許さん。おねーさんとお呼び(笑って佳代から鞄を取り玄関へ)」

佳代「ハイ」

玄関に来ると廊下にボーダーコリーの小鉄がいる。尻尾を振って足踏みしてる。

浩介「これが小鉄(頭をちょっとなでてどんどん上がっていく)」

佳代「わぁ」

有希「仲よくしてね(上がる)」

佳代「はい(小鉄をなでる)」

N「小鉄って名前は『じゃりン子チエ』って漫画の猫から取ったらしい。模様が似てるって。でもそれ言ったらボーダーコリーはみんな一緒だし」


●現実・馬場家・茶の間

小鉄が隅で丸くなっている。おとなしい。

N「手袋と靴下はいてる。尻尾の先も白くてカワイイ。これがこの家の家族全員」

浩介と有希がまだしゃべってる。

浩介「なんかこの話いいな」

有希「ネタになりそう?」

浩介「なるなる。あとでメモっとこ」

N「はじめは緊張したけどだいぶ慣れてきた」


●馬場家・外観

茶の間の明かりが見える。タイトル。


●ゲーム画面

マリオがステージクリア。


●馬場家・茶の間

テレビでゲームをしてるのは佳代。浩介と有希が後ろで見ていて「やったぁ!」と歓声。「イエーイ」とハイタッチ。佳代とも強引にハイタッチ。

浩介「(スマホの振動に気づいて画面を見)はいもしもし」


●三浦家・リビング

沙織「佳代どこ? 電話出ないんだけど」


●電話のやりとり・カットバック

浩介「あぁ、今ちょっと取り込んでて」

沙織「どこいるの」

浩介「いるよ目の前。茶の間」

沙織「出して」

浩介「電話すりゃいいじゃん」

沙織「それが出ないからこっちにかけたの」

浩介「ちょっと待って(佳代に電話を向け)ママだ。電話。ハイハイって」

佳代「(ゲームに集中していて)ハイハイ」

沙織「佳代」

浩介「ほらな、いたろ」

沙織「勉強してる?」

浩介「来たのおとといじゃん。固いこと言うなって」

沙織「遊んでばっかいるの?」

浩介「いい子にしてるよ。家の手伝いもするし、元気にやってる」

沙織「そう」

浩介「気になんならLINEしとき。メールでも。あとで返すよたぶん」

沙織「うん」

浩介「じゃあ(電話を切る)」

沙織「あ」

佳代はゲームを続けてる。有希は後ろで見ながら応援。床に置いた佳代のスマートフォンに「ママ」の文字が出ている。着信履歴の表示。

N「叔父さんも有希さんも勉強しろとは全然言わない。昨日は渋谷と原宿に連れてってくれた。今日は有希さんとふたりでお台場に行った」


●馬場家・茶の間(時間経過)

有希「(紙袋から水着を出して掲げ)ジャーン、佳代の水着」

浩介「(佳代とゲームをしていて)あ?」

有希「さらにジャーン(もう1枚出して)私の水着」

浩介「買ったの?」

有希「今日ね。見たいっしょふたりが着てんの」

浩介「なに企んでる」

有希「だから今のうち海にさ。夏休み入ったら混んじゃうじゃんどこもそこも」

浩介「泊まりがけ?」

有希「行こうよ車で房総あたり」

浩介「大学生はもう夏休み入ってんじゃん」

有希「それでもまだすいてるって絶対」

浩介「小鉄いるじゃん」

有希「連れてけばいいよ。今はペット可のホテルいっぱいあるし」

浩介「そんな都合よくあっか?」

有希「あるある。ホテルじゃなくてもペンションとか。見つけたらいい? 申し込んでOK?」

浩介「2泊までな」

有希「よっしゃ。佳代パソコン。持ってきて探して」

佳代「うん」


●夜道

佳代が小鉄を連れて散歩。浩介と有希もいる。有希を自宅近くまで送ってきたところ。

有希「じゃあおやすみ」

浩介「ああ、おやすみ」

佳代「おやすみなさい」

有希「(佳代に)早く寝てね。明日また早いから」

佳代「うん」

有希「バイバイ(自宅へ)」

佳代「(手を振り返す)」

浩介「おー」

少し見送って浩介と佳代は戻っていく。

N「叔父さんはエッセイを書いて暮らしてる。最初は小説だったけど今はエッセイ。小説が売れなかったわけじゃないらしいけど。理由を聞いたら」


●馬場家・書斎(朝)

浩介「(ノートパソコンを前に手をとめ)うーん(真剣に考える)ま、飽きちゃったんだな」

N「有希さんは働いてないらしい」


●お台場のレストラン

有希「プーよプー。この前まで派遣で働いてたけど体壊して。弱いの私。療養期間に貯金なくなって、よくなったら働いてまた病気になって、その繰り返し。もういいからしばらく遊んでろって浩ちゃんに言われて。お小遣いもらって暮らしてる」


●千葉の国道(昼前)

浩介の車が走ってくる。

浩介の声「(先行して)いやぁ皆さんお勤めご苦労だねぇ」


●車内

浩介が運転し有希が助手席、後部座席に佳代と小鉄。

浩介「みんなが仕事とか学校のとき遊んでるって最高だね」

有希「だねぇ」

夏の沿道で働いている人々(工事現場や配達の人)そして学校帰りの自転車の学生たちなど。

それを見ている佳代は少し取り残された気分。


●外房の海

大きい波が次々押し寄せる。波間にサーファー。


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KATARA

オリジナルの小説、およびシナリオをHP[ http://novelsofkatara.web.fc2.com/ ]で公開後、電子書籍で出版しています。 最新作は湘南・江の島を舞台にした夏の恋【 あの夏あの島で 】シナリオ版全文公開中。

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