見出し画像

話題のスーパーマーケット、ロピアのこれからについて予測

某テレビ局の人気アナウンサーが、スーパーマーケットの2代目社長と結婚したということで、話題になっている。

そのスーパー、ロピアは近年急成長している企業ではある。

私の知り合いのスーパーマーケットのコンサルタントも訪問し、その品ぞろえなどについて解説している。

品ぞろえの一部は確かによく、また総菜での目玉商品(ピザなど)も魅力的な商品ではある。

しかし、今後こういった「生鮮品ディスカウント」のお店は競合過剰になるとみている。

個人的には、私が仕事でかかわっている水産会社の商品をある時点から「もっと値下げしろ」ということで、あまりにも低い金額の提示をしてきたので、取引が続けられなくなったことをこの目で見たし、大阪の市場関係者でもこのスーパーの担当者にサーモンを買いたたかれていて泣いていた、ということを話していた。

まあ、こういう厳しい商談は、何もロピアだけがやっていることではない。ただ、今後このような「生鮮ディスカウント」というジャンルが伸び悩むだろうというのが生鮮流通の現場にいる人間からの見立てである。

少し話題になったこの画像。関西圏で、スーパーの価格や店舗規模について個人的に分類したというものだが、よくできていると思う。もちろん、細かいところまで正しいわけではない。LIFEなどはもっと安めの方だと思うし、イズミヤや平和堂もそこまで上かな?などと思う。

ここで注目するべきは、ロピアの位置は決して業界最安ということではなく、急成長している会社であればラムーやトライアル、業務スーパーなどが競合として存在するのだ。

ディスカウント生鮮スーパーというジャンルが伸びているという考え方はできる。ただ、ここで問題になるのは商品確保などで、そこまで拡大できるのかということである。

・店内でのオペレーションコスト削減に限界がある。例えば、キャベツをスーパーのバックヤード、厨房で半分や4分の1にカットすること人の確保も難しいので、それをセンターで委託するなど。魚も、店内で調理することができないので、頭を取って真空パックしたものばかりが並び、鮮度感が伝わりにくくなるなどもある。
・輸入食品は円安だけでなく、中国アメリカの需要回復などの理由で高騰する(すでに、アフリカのタコはとんでもなく上がっている)

・国内の生産者はこれ以上の流通側の圧力、価格引き下げ要請に耐えられないとして、産地としてまとまる方向性を見せている(もちろん、産地形成をすることによってコストを削減し、小売業の求める価格に応じようという活動も見られる。)

生鮮品はすでに国内ではスーパー同士の奪い合いになっている。農家が販路に困っているというような話を聞くことがあるかもしれないが、正確にいうと「高く売るための販路開拓に困っている」ということがあり、ECサイトに注目が集まっているのはそのためである。しかし、ECサイトで野菜を買う人は所得の高い人であり、通常はイカリスーパーなど高級スーパーを中心に買い物できる人である。一方で、流通の主軸である市場経由だと、価格は安く集まる可能性はある。荷受業者が集積機能を果たし、物量確保と価格調整を行ってくれる。しかし、これでは他社との価格差別化がしにくくなる。

一方で、独自のセンター機能を作り、物流コストや市場流通の中間マージンを削減して価格を抑えていこうという動きはある。自社での独自の物流を持つにはある程度の店舗規模が必要だが、イオンはじめ大手スーパーはそういった機能を持つ。

ディスカウントスーパーでもこの動きはあり、ロピアの競合であろうラムーは来年夏に京都府城陽市あたりに大規模なセンターを稼働させる。こういった動きをロピアもしてくるだろう。となると、コスト面でも当然どこも限界はあり、差別化はできなくなる(むしろ、市場流通を使わなくなった分、自社のバイヤーの業務などが増えるという、調達コストは上がるかもしれない。水産品に限って言えば、各市の中央卸売市場の荷受が載せる金額は8%~10%程度である。それを吸収するくらい自社流通で頑張れるのだろうか。正直、机上の空論のような気がする。多店舗スーパーの数だけ生鮮流通センターが全国各地にできるのだろうか。日本アクセスなどのように、日配品の流通に関してはいくつかのスーパーをまとめて受託するような仕組みがあるのだが)

生鮮品だけでなく、菓子やカップラーメン調味料などの加工品はどうか。今後フードロス削減の傾向が強まることもあるので、大手の加工品メーカーなどは「売れる商品だからと言って大量に生産する」ことはしなくなるだろう。適正な供給量を日々計算して、利益率を最大化していくように動くだろう。小売業の要望に応じて値段を引き下げて供給するというということはいままでよりは頻度は減っていく。新商品のプロモーションなどは行うだろうが、それをするなら利益率が高いある程度客単価の高いスーパーに集中する方がいい。「市場シェア獲得のため、積極的に小売業の値引き要請に応じる」ということも減っていくだろう。すでに菓子業界などは、値引きでスーパーの棚を取る「プッシュ戦略」ではなく、棚替え作業のお手伝いや陳列のサポートという、ある意味ルールすれすれの作業をスーパーがメーカーに「おねがいする」ことで関係を保っている状態である。

記憶に新しいところでは電気販売業界で問題になったが、小売業でも日々日々行われていることでもある。

なので、菓子業界やカップラーメンなどの商品は、WEBやTVCMなどによる「プル戦略」に力を入れていくだろう。

こうした事情を考えてみると、ロピアが目指す「1兆円」というのはとても難関であることがわかる。もちろん、イオンや広島のイズミなどのようにM&A戦略で規模を拡大していくことも考えられるが、バイヤー権限を一括化するなどしないと、グループ内での戦略は各子会社ごとで温度差が生じたりする。また、店舗担当者がしっかりしているところは店舗担当者の移行が売り場づくりに反映されるため、バイヤーが統一した価格や商品規格で販売するという戦略が実はうまくいきにくい。店舗の判断の方が重視されるので、同じ茄子でも2本入り袋がいいとか3本入りがいいという要望がばらばらで、発注が統一しずらいのだ。こういう現場営業と商品部の「対立」「調整」をどのようにやっていくか、実は多くの小売業が悩んでいるところでもある。

おそらく、ロピアとしては今後どこかで同じジャンルの生鮮ディスカウントを合併するなどのM&A戦略を行うだろう。ある程度規模の拡大ができたところで、中堅クラスのスーパーも傘下において、中堅からやや上位の商品品ぞろえの小売業態にも進出しようと思っている可能性がある。そうしなければ、商品調達能力の向上や産地との強い連携が行えない(生産者側から見れば、ディスカウント系店舗は全く商売として旨味がないので、忌避する傾向が強い。産地がまとまっていけばいくほど、こういった業態よりは、イオンやイズミ、LIFEあたりのスーパーとの商売を重視する。つまり、ディスカウントストアにはそれなりのものしか集まらなくなる。消費者の目線がいつまでもそこで満足するとは思えない)。また、こういうディスカウント系のところはカテゴリーキラーに狙われやすい。野菜・鮮魚・精肉に特化した安い店(鮮度や品ぞろえ、魅せ方でこういうディスカウントスーパーとの競争力がある)が出てくる可能性がある。生産の上流側が小売業に進出するとこういう事態も考えられる。例えば、牛兆というお店は関西ではいろいろなショッピングモールに進出する肉の販売店で、価格面ではかなり一般スーパーを圧倒する(品質についてはいろいろアレなところもたまにあるが)。

また、ロピアは肉屋出身のスーパーということが強みとあるが、その肉のメインの供給も、どこまで優位性があるのか。国内の食肉の提供の6割以上は日本ハムや伊藤ハムである。

https://gyokai-search.com/3-meat.html

今後TOP2社のシェアはますます高まると思われる。そうなると、ロピアは相当独自でルートがあったとしても、安定性と価格で競合他社に勝てる要素があるのか。仕入れのルートが調査不足なので何とも言えないが、少なくとも将来にわたって優位性が保てるものではない。

まあ、勝手に将来性を心配することもないのだが、小売業にかかわる人間としては、「生鮮ディスカウントスーパー」というジャンルは、いうほど将来性が非常に高いものではないと思っている。

というより、これ以上日本でデフレ状態が続いてディスカウントスーパーがもっと広がる状態は、おそらく日本経済にとって暗い未来でしかないという根本的なところを肌で感じているからなんだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?