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Fate/Revenge 15. 聖杯戦争五日目・昼──願いのある場所-②

割引あり

 二次創作で書いた第三次聖杯戦争ものです。イラストは大清水さち。
※執筆したのは2011~12年。FGO配信前です。
※参照しているのは『Fate/Zero』『Fate/Staynight(アニメ版)』のみです。
※原作と共通で登場するのはアルトリア、ギルガメッシュ、言峰璃正、間桐臓硯(ゾォルゲン・マキリ)です。
※FGOに登場するエンキドゥとメフィストフェレスも出ますが、FGOとは法具なども含めて全く違うので御注意下さい。

 同時にアルトリアの胸に街の人々やホテルの従業員の顔が浮かんだ。抑圧され、痛ましいほどに互いを気にする人々。あの疑念は異常なものだが、人々はごく普通だ。だからこそ彼らは傷つき、怯えている。
 昨日今日現れたくせに、いったい何を根拠に。
「何故、そんなことが言えるのだ」
 静かに問うアルトリアに、ギルガメッシュがジャケットの襟をつまんでひらひらと振ってみせた。
「一日あれば、それなりのことが出来るものだぞ」
 まともに答えないギルガメッシュに腹が立つ。彼はさっさとグラスを空けてシャブリを注いでいた。今度の酒も彼にとっては大した物ではないのかもしれない。アルトリアが作法を沿ってグラスを空けると、英雄王が無言でグラスにワインをついだ。
 アルトリアはグラスを引き戻して口をつける。今度の酒は辛かった。すっきりと切り裂くような岩の味。制定の剣が刺さっていた岩を思い出させた。
「貴様はどうなのだ。貴様もそうして強大に一帯を支配した王ではないのか」
「いかにも」
 ギルガメッシュの細い眉がわずかに上がり、アルトリアを見下ろした。彼はからかうようにグラスを揺らして薄く笑う。
「一帯ではなく世界だ。エンキドゥは言わなんだか。オレこそ世界の王なのだ。オレのあるところが世界の中心であり、世界はオレとともにあるのだ」
「ならば答えは簡単だろう。他国は貴様の国が強大だからひざまずいたのだ。自らの国を強大だと思わせればこそ攻めこまれずにすむのだ」
「はき違えるなよ、セイバー」
 ギルガメッシュがテーブルに肘をついて乗りだした。長身のせいか思った以上に近く見え、ふわっと乳香の薫りがした。海の向こうの亜刺比亜アラビアの薫り。それは黄金と等しい重さで取引されたと聞く。彼が世界の富を独占していたというのは本当なのだろう。
 彼は穏やかに語りかける。
「人は国など怖れぬ。人は人を怖れるのだ。奴ばらめはウルクにひざまずいたのではない。このオレにひざまずいたのだ。どれほど優れた民だろうと、頭たる王なくば烏合の衆。この国の過ちは、王たるべき人物を王に据えなかったことに尽きる」
 アルトリアは胸を突かれる思いだった。
 貴様を王とは認めん……遠い言葉が頭をよぎる。
 ギルガメッシュの声が教え諭すように語りつづける。
「民草が王を選ぶなど笑止千万。真に王たる者なれば、放っておいても頭を出すものよ。自らの力で王たる地位をもぎ取れぬならば、王たりつづけることも出来はせぬ。そんな奴ばらがひょんなことから権力を得たとて、最後は国を道連れにする。あるいは民を売る恥ずべき貪婪どんらんとなりはてる。そんなことも分からぬか。だとすれば王の器とは言えぬぞ、セイバー」
 ギルガメッシュの笑顔はあくまで優しい。
 アルトリアはぎっと歯軋りして胸に手をあてた。
「器であろうとなかろうと構わぬ。私は私の身命を賭して民を守る。皆の代わりに私が為せることがあるなら、私が為す! それが私の王としての在り方だ。誰にも変えられはせぬ」
「ははははは」
 突如、ギルガメッシュが高らかに笑う。彼は額を手で押さえて苦しげなほど笑った。
「いいぞ、セイバー。それだ、そなたの稀有なる美しさよ。器を越えた願いをしょいこみ、それでもなお諦めようとはしない。そなたの願いは、そなたの首を絞めつづけるぞ」
 ギルガメッシュがふわりと、アルトリアの顔に息が触れるほど顔を寄せた。
「さあ、際限なく脹らむ民の希望に、そなたはどこまで応えつづける? 十万、二十万、あるいは百万、そなたにぶら下がりつづける民をどこまで背負える? そなたは自分の限界を越えて破滅してなお、それに気づくまい。それは、そなた自身の願いが民なぞよりも、ずっとずっと大きいからだ」
 硬直するアルトリアの耳元にギルガメッシュが囁いた。
「それほど巨大な願いを抱く小さきそなたよ、その身を以て聖杯に如何なる願いを懸けようとてか」

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