それで人は性別を捨てるとどれほど楽になるかということを実感したあたりで、むしろXジェンダーこそが「ありのままの」人間の姿に近いのではないかということを思うに至るわけである。

例えば別の例でいえば、会社の偉そうな部長と下っ端の私、などという構図が考えられる。どう考えても偉そうな部長は生まれながらにして偉そうな部長であって、家に帰っても寝ても覚めても、ずっと偉そうな部長だということは考えづらい。それに偉そうな部長も昔は下っ端だったことがあるはずだ。

それではなぜ偉そうな部長は偉そうな部長になったかといえば、そのようになるように教育された、もしくはそれが自分にとって一番最適な役割だと感じて意識的に偉そうにしているのかもしれない。いや、私の観察によれば無意識でそうなっているので、教育されたもしくは社会の枠組みに適応するようにそうならざるをえなかった、というのが妥当なのではないか。

それで話をXジェンダーに戻すと、私の仮説ではほとんどの人は生まれながらにして社会における「女性的な性格」と「男性的な性格」の双方を持っているので生まれた時はほとんどがXジェンダーなのではないか、ということである。それを教育などの社会適応手段によって、後天的に「性別らしい」振る舞いをするようにプログラムされる。