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⑩【小説】 さくら坂のほのかちゃん ほのパパの5



 「内村さんの奥さんがね、お父さんが『ほのパパさんに世話になった』って。
『オヤジの笑顔が見れました』それだけ伝えてもらえばわかるって言ってはったらしい・・・
いったい、なにお世話したの?」

「ああ、競馬をちょっと勧めてみたんだけど」

「なにそれ? ケイバ?
 内村さんの旦那さん、真面目そうな人なんだから変なこと教えんといてよ!」

「男のロマンってやつかな・・・」

「パパ、いつも『惜しかったぁ!』って、負けてばっかりやない!
 何言うてるの。
内村さんとこには、子供会とか、登校の班とか、色々お世話になってるんやから、               パパが余計な迷惑かけたらアカンのよ!」

「はいはい、わかってますよ・・・」


* * 


♪ハッピバースデートゥユ~ ハッピバースデートゥユ~
ハピバースデー ディア ママ マァ~

 ホノカ、マがひとつ多いよ・・・

 2月4日は、ママの誕生日だ。
毎年恒例の、ママの実家に招かれての誕生日パーティー、ミノリにつられながらも、ホノカもちゃんと歌っている。

 徳心園の頃には、毎月誕生日会もあったので、この曲はしっかり歌える。
 
用意されたローソクは、早くケーキを食べたいホノカが、歌い終わって直ぐ、フッと、吹き消してしまった。
 
 お義母さんが笑いながら、
「ほのちゃんがフッってするのは、ほのちゃんのお誕生日の日!」

 ホノカはお義母さんのナイフを持つ手元をじっと見つめながら、ケーキが自分の皿の上にくるのを待っている。


 ミノリは、ケーキの上にあった、メッセージが描かれたチョコレートのプレートが食べたくて、一生懸命おねだりをしていた。

「ほのちゃんと、半分こね!」
と、お義母さんに言われて、お義母さんが2つに割ったチョコ、

「どっちが大きいかなぁ?」
と迷いながら、懸命に見比べている。

 ミノリは、食べている時と寝ている時以外は、ずっとしゃべっている。
いつも、ずーっと、しゃべっている。


 姉妹で、こうも違うものか・・・


 前夜も、にぎやかな夜だった。

ミノリは、幼稚園で自分で作ってきた赤鬼の面、喜んで自分で着けて、ママに見せた。
そしたら自分がオニ役になってしまって、

『あぁっ!
アカオニ発見!オニはぁー外』

ママから、殻つきの落花生を一つ、ヒョイと投げられ、大泣きをして怒っていた。

 
 まだミノリが生まれる前、ホノカだけの節分の時は静かだった。

ホノカが小吹台保育園で初めて作ってきた赤鬼の面は、愛嬌のある目をしていた。
ママが、大事そうに、大きくなったお腹の上にそれを乗せて

「この、お面、ママにチョーダイね!」

 ホノカは、キョトンとママを見上げている。
その赤鬼のお面は、ホノカからママへの、初めての誕生日プレゼントになった。


もう、4年経つのか・・・


 我ながら、成長したもんだ。
4年前の事、今では、懐かしく想い出せるようになっている。


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