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【Pauper】『指輪物語:中つ国の伝承』メタゲーム考察

『指輪物語:中つ国の伝承』

『指輪物語:中つ国の伝承』が6/23(金)に公式発売されました。
パウパー環境で採用を多く検討されている2枚と、それらの影響に対する考察を書いています。

《火の中へ投げ捨てる》

火の中へ投げ捨てるは現状のメタゲームにぴったり嵌まる有用なサイドカードです。
このカードの登場は、採用できる様々な赤いデッキが環境上そのデッキ自体を使用する理由になり得るほどのインパクトがあります。

ボロスシンセサイザーは親和に対する強力な呪文を扱える白を有するデッキでありながら、実験統合機を使用する構成上《塵は塵に》の重いマナコストと噛み合いが悪く、構築やプレイングで負担がかかることがしばしばありました。
《火の中へ投げ捨てる》の登場により、適切なマナカーブを維持しながら親和への対策を行うことができるようになりました。
ついでにフェアリーや他のタフネス1を横並びさせるデッキに対しても睨みを効かせることができるのも魅力で、結果多くのサイドボードスロットの獲得に繋がっており、構成上苦手なコントロールやコンボを見る枠である墓地対策や、バーン等に対抗するライフゲイン系のかさ増しが容易になっています。

他にも、多くの赤いデッキがこのカードを採用することによってサイドボードスロットの獲得が可能で、結果このカードが効かないデッキに対しても相性差が変動することになり、メタゲームに大きな影響を与える可能性が高い1枚です。
一方で、このカード自体を過信しすぎるのも危険です。
例えば親和に対しては、赤い呪文であること、アーティファクト追放が単純な1:1交換であることから、このカードをサイドボードに4枚採用しただけで簡単に勝てるということにはならない点には注意したいです。打ち消しづらい白い呪文であること、1枚で2枚に対して土地破壊を行えるカードパワーが評価されている《塵は塵に》との差はやはり大きいです。
横並び系のデッキに対しても、展開されきった後の返しとしては《電謀》や《ブレス攻撃》に劣ります。

《ロリアンの発見》

各色で登場した1マナの土地サイクリングカードは、採用のハードルが低く、本体スペックが環境上の水準をギリギリ満たしており、基本土地タイプを持つ多色土地がカードプールに存在していることも相まって、様々なデッキでの採用が見込まれる強力なカード群です。

特に《ロリアンの発見》は本体スペックが他のサイクリングカードと比較しても強力で、《渦まく知識》等の他の青いカードとのシナジーも見込まれることから、直近の環境でよく見る1枚になりそうです。

注意したいのは、本体スペックを過信してデッキの構成を壊してしまわないこと、そして1マナサイクリングによるテンポロス及び初手キープ水準の低下を低く見積もらないことです。
各色のサイクリングカードは能力やスタッツだけで見ると環境で戦える水準を満たしていますが、総じてマナコストが重く、バーン等の速いデッキも存在する中で、果たして頻繁にプレイできるカードとして評価して良いのかという疑問が生じます。
土地サイクリングについても、そのカードが代わりに土地であれば1マナ多くアクションが取れるわけですし、初手に土地の代わりにサイクリングカードが来てしまってキープできないということもあり得ます。
《氷のトンネル》等の多色土地と組み合わせてデッキの多色化を図る場合も、大幅なテンポロスが発生することを念頭に置かなければなりません。

土地と入れ替える等の発想で簡単に採用できてしまいがちですが、大抵のデッキのメリットはゲームの中盤から終盤にかけて土地の代わりに本体が使用できることであり、それによって想定敵との相性がどの程度変化するのかを見極めながら採用を検討したいです。

メタゲーム推測

前述したボロスシンセサイザーは直近の大会でも多く好成績を収めており、また比較的回しやすい(≠簡単)デッキであることから増加が予想されます。

アーティファクト関連

グリクシス親和は、相変わらずデッキパワーが他と比較して非常に高く、多く見られるデッキになりそうです。
《火の中へ投げ捨てる》の登場及びそれを採用する赤いデッキが増えることが予想されますが、既存の1:1交換を行うアーティファクト対策カードと同様に《命取りの論争》等で追放を回避することで被害を抑えることが可能ですし、《火の中へ投げ捨てる》が多くのデッキで親和対策として採用され、他のアーティファクト対策カードが相対的に減少するようであれば、赤単に対して割かれている《水流破》《青霊破》の枚数を増やすことで対策が容易になり、逆に親和にとって追い風になる可能性もあります。
《火の中へ投げ捨てる》が親和以外も見れる優秀なカードであることから多くのスロットが割かれ、結果的に親和へのサイドボードの割合が増加する可能性は考慮すべきですが、それに対応する策は十分にあります。
一方、アグロ等に対する強力な1枚であった《ケンクのアーティフィサー》は信頼度が低下しており、それらのデッキへの他のプランを検討することになりそうです。

ジェスカイコントロールジャンド続唱等の、ブリッジランドと《浄化の野火》を有する赤+1~2色のランプデッキは《火の中へ投げ捨てる》の影響を大きく受けています。
単純に、ほとんどの赤いデッキとのマッチアップで《浄化の野火》に対応して対象のブリッジランドを追放されるという苦しい展開が発生する機会が上昇していることに起因します。

赤単は《僧院の速槍》《実験統合機》《無謀なる衝動》《レンの決意》といった強力なカードを有しており、環境に合わせて様々な型が活躍しそうです。

・本体火力である《溶岩の撃ち込み》《針落とし》等を採用した「バーン」
・《実験統合機》等のアーティファクトシナジーを採用した「カルドーサ」
・《無謀なる衝動》《レンの決意》による継戦能力を持つ「8インパルス」
以前から赤単の中でもメタが回っており、流行に合わせて構成を変えて活躍していけそうです。
環境初期に関しては、増加が見込まれるボロスシンセサイザーに対して《無謀なる衝動》等でアドバンテージ面で勝負を仕掛けるのはあまり良いアプローチには思えません。
また、後述する青系デッキの減少、ボロス等のミッドレンジに対して強いコントロールの増加、1マナサイクリングのお試し採用が多く見られると考えると、速度に重きを置いた構成が好成績を収めそうで、逆に「8インパルス」のような構成は減少すると予想しています。
《角笛城での結集》と《炎樹族の使者》を採用した、面で攻めるデッキも多く見られそうです。《火の中へ投げ捨てる》を1/1トークンに当てる展開は増えますが、相手のデッキが《ブレス攻撃》等の2点全体火力を外して《火の中へ投げ捨てる》を採用している場合は、《炎樹族の使者》が強い場面が多く生まれるかもしれません。

青単フェアリーは《火の中へ投げ捨てる》を多くの枚数採用するデッキが増加することや、そもそもメインからかなり不利なマッチアップであるボロスシンセサイザーの増加が見込まれることから、厳しい環境になるかもしれません。
一方で、純粋なデッキパワーは落ちていないため、2マナの呪文に対して《青霊破》を強く撃てる場面が増えたと捉えることもできるかもしれません。

《トレイリアの恐怖》と《グルマグのアンコウ》を有する青黒テラーは、流行しているカルニブラックに対し非常に不利な展開を強いられることが多く、かなり厳しい立ち位置にあります。
一方、《実験統合機》を採用しているデッキとの噛み合いや、青の想定敵として1番に挙がる青単フェアリーに対するサイドボードで《火の中へ投げ捨てる》にスロットが割かれることで《赤霊破》《紅蓮破》の採用が減り、赤系デッキに対する《トレイリアの恐怖》の信頼度は上昇しているように見えます。
また、親和の対青黒テラーのキラーカードであった《ケンクのアーティフィサー》の信頼度が減少していることで採用が減り、相性が改善する可能性もあります。

青白ファミリアは新カードの影響をほとんど受けておらず、前述した《赤霊破》《紅蓮破》の採用が減少傾向にあるというメリットがある一方で、空いたサイドボードスロットに墓地対策が増えることや、赤緑ランデスやカルニブラック等の不利なマッチアップがまだまだ存在しており、少し赤系や他のアグロ等の早いデッキへのガードを下げ、《対抗呪文》《焦点の喪失》等の打ち消し呪文の採用を増やす構成が多く見られるようになると予想します。
相性が良いように見える《ロリアンの発見》は、前述した理由で相対的にデッキ自体の速度が後ろ向きになっているため、採用によってデッキを更に重くさせることになり、早いデッキに対して弱くなることには注意しなければなりません。

総じて、青系のデッキはメタゲームの合間を縫い、対策が減少するタイミングを見計らって駆け抜けることが求められるように感じます。

緑・白

赤緑ランデスは、ボロスシンセサイザーと同様に《火の中へ投げ捨てる》によって強化されたデッキの一つです。
続唱呪文を多く採用している関係上、《赤霊破》《紅蓮破》の採用が難しい構造であり、対青、特に青単フェアリーは飛行生物に対するサイドボードを採用していました。
《火の中へ投げ捨てる》の採用により、サイドボードスロットが空いたおかげで、苦手な赤系デッキや流行している親和へのサイドボードをさらに増やすことが可能です。

緑単ステッカーストンピィは、デッキの構成上タフネス1生物を採用していることが少なく、《火の中へ投げ捨てる》の影響は少ないように感じます。
またデッキによりますが《火の中へ投げ捨てる》を採用するために《ブレス攻撃》等の2点全体火力を不採用にすることもあり得そうで、相対的に立ち位置が良くなっているように見えます。
これは緑単ストンピィだけでなく、スリヴァーや白単ウィニー等の「《火の中へ投げ捨てる》が効きづらい、高スタッツの生物を横並びさせるビートダウン」全般に対して言えることですし、タフネス1を多く有するエルフについても、展開仕切ってしまえば同じことが言えます。

呪禁オーラ白単英雄的は環境に赤系の除去を有したデッキが増加すること、タフネス1生物に対するサイドボードが対象指定が必要な《火の中へ投げ捨てる》に切り替わることで、相対的に有利な立ち位置になると言えそうです。
しかしながら、《火の中へ投げ捨てる》によって空いた他のスロットにエンチャント対策が増加することもあり得るため、油断は禁物です。
また、特に青黒テラーの減少が主な要因ですが、黒の布告除去や青の打ち消し呪文が環境全体で減少傾向にあることも追い風と言えそうです。

カルニブラックは優秀な黒の除去による対応力、《命取りの論争》によるアドバンテージ、《復讐する狩人》《黒薔薇の棘》による制圧力と、多くの強みを兼ね備えたデッキです。
新カードの採用はデッキの構成上あまりなさそうですが、《カザド=ドゥームのトロール》は本体のキャストを行う機会も作れ、またイニシアチブ、統治者の取り合いで有用な能力を持っているため、採用をよく見る1枚になるかもしれません。
流行が予想されるボロスシンセサイザーに対しては、CIPでアドバンテージを得られ、また統治者、イニシアチブ合戦で脅威となる飛行を持った《コーの空漁師》《きらめく鷹》や、使い回しでクリーチャーのかさ増しが可能な《逆棘の骨拳》に対して1:1交換をする除去が多く採用されている分不利に見えます。
対親和に対しては、ケンクのアーティフィサーの採用が減少する場合は追い風と言えますが、メインボードから0になるということもなさそうなので、変わらず警戒はしていきたいところです。
除去コントロールの性質上、環境初期はあまり活躍ができないように感じます。メインボードのチューニングの幅広さがこのデッキの魅力であるため、環境が固まってきた環境中~後期にまた多く見られるデッキになるかもしれません。

オルゾフブリンクもまた新カードの採用はデッキの構成上あまりなさそうに見えます。
《火の中へ投げ捨てる》が当たるクリーチャーを何枚か採用していますが、他に高タフネスを持つクリーチャーも多く採用していることから、それほど影響はないと感じています。
もし《火の中へ投げ捨てる》の流行に伴って親和が《塵は塵に》への対応カードを《青霊破》に寄せる場合は、相対的に《塵は塵に》が通りやすくなるため、今まで以上に親和キラーとしての地位を確立できそうです。

ゲート

カウゲートボロスゲートなどのゲートデッキは、各種門から赤マナを捻出することが容易であり、《火の中へ投げ捨てる》を不自由なく採用することができることから、強化されたと言って良いと思います。
それ以外の多色ゲートデッキについても、非常に見れる範囲が広いサイドカードが登場したのは追い風と言えます。
一方で、カウゲート、ボロスゲートはどちらも《塵は塵に》を採用できていたデッキのため、特に親和に対するサイドボードは充足しており、《火の中へ投げ捨てる》がどれだけ採用されるかはなんとも言えないところです。
タフネス1のクリーチャーを多く採用していますが、プレイングや《虹色の断片》で全体除去をケアできるため、《火の中へ投げ捨てる》の流行による影響はさほどないように見えます。

その他

フリッカートロンは数年前の環境でもそうだったように、ボロス系のデッキに対して有利です。
苦手な青系のテンポデッキの減少が見込まれることから、延命手段である《嵐の乗り切り》と《一瞬の平和》の信頼度が上がっており、強い動きをしやすい環境であると言って良いと思います。
当然、サイドボードから墓地対策が多く投入されることは想定しなければなりません。また、同じく青系のテンポデッキが減少することで相対的に有利になる高速コンボデッキや、強化を貰った赤緑ランデスがいることも考慮しなければなりません。

また、アルタートロンに関しても同様に追い風のように見えますが、こちらはコンボ始動に対して《火の中へ投げ捨てる》で阻害されるようになったことは注意が必要です。

壁コンボサイクリングストームに関しても、有利対面が増えたように見える一方で、サイドボードの墓地対策が増えることは懸念としてあります。

まとめ

《火の中へ投げ捨てる》の影響予想

  • ボロスシンセサイザー、グルールランデスの増加

  • 赤系デッキでの汎用性の高さによる多枚数採用とサイドスロットの増加

  • フェアリーへの被害による青系デッキの減少

  • 青系デッキの減少による《赤霊破》の減少とコンボデッキの増加

  • 親和の《青霊破》の増加

  • 他のタフネス1対策カード(《電謀》《ブレス攻撃》等)の減少

《ロリアンの発見》等土地サイクリングの影響予想

  • お試し採用がちらほら。適正枚数が定着するまでは時間がかかりそう

  • 初手キープへの影響とテンポロスは重く見るべき

環境予想

  • 親和、赤系が強そう

  • 親和は赤対策を増やしそう

  • 赤単は速度重視が多そう

  • ボロスシンセサイザー、グルールランデスが数を増やしそう

  • 青単は数を減らしそう

  • テラーは対赤は相変わらず強いがカルニブラックの増減に左右されそう

  • コントロールやコンボは良い位置にいるが墓地対増加に注意

  • ストンピィ系は全除去が減ってやりやすくなるかも

おわりに

言ってしまえば全部妄想なんですが公開することに価値はあるのでしょうか。
本当に価値があるのは実際に対戦してみた経験なので、早く新環境で対戦したいですね。

パウパーはカード単価が安く、複数のデッキを持ちやすいことから、環境に合わせて自分が使用するデッキを低いハードルで切り替えられるのが魅力だと思っています。
自分なりに環境予想をして、金銭面に縛られずに良い立ち位置にあるデッキを気軽に握れるというのは、他のフォーマット、ひいては他のカードゲームにない利点です。
今後もこんな感じで楽しんでいきたいです。


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