見出し画像

Partner Interview 03 [I’M HERE]

LANCHは、さまざまな分野のパートナーに支えられて仕事をしています。対等な立場で課題に向き合い、フラットに意見を交わしながら取り組むことのできるありがたい存在。ここでは、そんなプロフェッショナルたちをご紹介します。第3回目は、I’M HEREの水上晃一さん。名古屋でのデザイン会社代表兼アートディレクターを経て、現在は生まれ育った福井で写真や映像を中心に据えてクリエイティブと向き合う水上さん。LANCH 加藤との付き合いはもう10年以上になります。

ー グラフィックデザイン、アートディレクション、そこから写真と映像の世界に。一番のきっかけは何でしたか?

生まれ育った福井に戻ったのが2016年頃。その頃から、絵を描いたり前から興味のあったテキスタイルデザインを勉強していたら「動画をやってみないか」と友人が声をかけてくれて。

撮ることはできないけれど、自分の頭の中にイメージはあるから、絵コンテを描いてプレゼンしたら結果的にそれがカタチになったんだよね。グラフィックとはケタ違いの映像の発信力に、驚いたのを覚えてる。日本という枠を超え世界に向けて、いろんな人に届けられる可能性を、映像というツールには感じました。

福井に戻る前、自分が立ち上げた名古屋のデザイン会社を仲間に託して辞めるという大きな決断をしたんだよね。そうしてグラフィックを離れたのに、次のテーマに進み切れない自分にずっと煮詰まっていたけど、映像との出会いで何かが流れ出したような感じがした。すんごい面白くて、ワクワクが止まらなかったから。

ー 映像の技術は、どうやって学んできたんですか?

自分には技術やセンスを模倣できる師匠のような人はいなくて。ひたすらYouTubeを観たり、映画を教科書がわりにしながら自分で模索しています。我ながら、すごいスピードでいろんなものを吸収しているなって思うんだよね。撮ったものを観ると、まだできる、なにかある、もっとこうしたい、というのが湧き出てくるんだ。やればやるほど、見えてくる感じ。


ー これまでグラフィックの世界で良い写真もたくさん見てきているから、目指したいところも見えるんでしょうね。

それはあるかも。どのカメラマンさんの絵を自分の体に入れたいかな?って、研究しながら成長している。

今、映像だけじゃなくて写真も撮っているけど、これまで関わってきた人たちのクリエイティブを改めて見つめ直してみて、そうしようって思ったんだよね。なぜかというと、スチールカメラマンが映像を撮ると、ショッキングなほど丁寧で安定感のある作品になることに気付いたから。「こんな絵を切り取り方をするんだ!」と。自分の中にはない視点で撮られているの。納得のいく映像を撮れるようになるためには写真も撮り続けなきゃいけない。

今は、毎朝いろんな絵や写真や映像を見ています。テクニックの部分も成長したいけど、自分が持っている初々しさや青い感じなんかも、いい意味で残していけたらいいなと思って今は勉強している。

ー ものすごく楽しそうですね。幸せそう、というほうが近いかもしれない。

これまで自分は、カメラマンの撮った写真をデザインに使う側だったけれど、今は自分がカメラマンとして起用されて、それがデザインとしてあがってくるという体験をしていて。

そんな風にデザイナーとは違う世界に身を置いてみると、できたものがあがってきた時の感動も深さも、まったく違う。それに、「撮る」という行為…とくにスチール写真の場合は、たとえばおしゃべりをしながらその人らしい表情をおさめたいという欲があって、カメラというツールを使って相手にどんどん近づいていけるんだよね。それがすごく楽しい。今になってもう一度こうした感覚を味わえるのは、すごく幸せなことなんだと思う。


ー 自分らしいスタイルが、少しずつ言語化できるようになってきましたか?

うん。バランスをとるよりも、直感で「いいな」と思った瞬間にシャッターを切った写真のほうがすごく好きで、それが人にも伝わるっていうことが多い。画面を整理整頓するんじゃなくて、自分が気持ちいい感覚でシャッターを切るという感覚の潤いは、テクニックとは別に大切にしていきたいなと思っています。40代半ばのカメラマンが初々しくそんなこと思いながら撮っているのも、ちょっといい感じなんじゃないかな、と。(笑)

カメラマンとしての技術や経験については、これからまだまだもっと…と思っているから、こうしてインタビューをしてもらっても正直そんなに話せないよ、という思いがあるんです。

でも、少し前の僕みたいに何かに煮詰まっていたり、「今の時間の使い方はちょっと違うな」という感覚を持っていたりするならそれを続けることに意味がないっていうことは身をもって伝えられると思う。環境も仕事もすべて変えてリセットして改めて自分と向き合って、これだ、と思えた時に幸せを感じたから。年齢なんか関係なく、やればいいって思う。自分も今は、先のことは考えてない。今この瞬間に、この場所で、自分が「面白い」と感じたものを、どんどんアウトプットしていきたい。その感情を大事にしたいですね。

ー I’M HEREですしね。そしてリセットしたとしても、グラフィックに向き合ってきた水上さんは今でもここにいますし、その感覚は残りますしね。今は、どんなものを撮るのが好きなんですか?

一番は、人ですね。ひとつ夢があって。僕の母が亡くなった時に遺影に使った写真が、僕にコーヒーを出してくれている写真なんです。ちゃんと撮影したものじゃなくて、スマホでおさめた一枚だったんですけどね。でも、僕だけに向けられた表情だったし、2人の関係性が見えるような空気感が漂っているような、距離の近い写真だった。

こういう瞬間を残したいっていう思い、みんなにあるんじゃないかな?と思って。家族同士で素の表情を見せ合って撮るのがいいのかもしれないけれど、それぞれの家族のそういう幸せな時間や空間を自分が俯瞰で見て、形として残すことができたらいいな、と。家族の記録を残すという行為に、写真や動画で寄り添う。そんなことを続けていきたいんですよね。

ー LANCHと仕事をしていて、感じることがあれば教えてください。

ジンくん(加藤)は、「さぁクリエイティブを始めるぞ!」という時の、道筋をつくることに長けた人だと思っています。だれもが理解できる言葉でそれを表現して、最初の段階で明確にしてくれるから、「なんとなくいい」じゃなくて、真に意味のあるクリエイティブを進めていくためには欠かせない存在です。

あとは、クリエイティブを進めていくためだけじゃなくて、仕事をしていて「なぜこの手法なのか」「なぜこのゴールなのか」という壁に当たった時、言葉で的確に情報を整理して、その場で納得できる理由を伝えてくれる。コピーライターゆえの言葉のセンスと、日常的な思考の量がそうさせるんだろうね。Twitterも面白いもん。「そういう視点でものを見るのか」とか「こうやって理解するのか」って考えさせられる。

ー ちょっとほめすぎな気もするけれど…(笑)。確かに、情報整理をしていくと光が通る道筋ってあるんですよね。自分自身、言葉の整理屋だと思っています。そこに大きな価値を出したい、と。

自分にはできないな、と思わされます。


ー 僕の仕事は、デザイナーさんやカメラマンさんに本来の力を出していただいてなんぼ、というものですからね。タッグを組ませてもらえて、いつも楽しいです。ありがとうございます。

[Partner profile]
I'M HERE 水上晃一


Text:Megumi Danzuka
Photo:Shingo Kato

いただいたサポートは、本と娘との時間に使わせていただきます。