二人で歩きたい

地図で見たら近く思った目的地

初めての駅で降りて

初めて見る景色にワクワクしながら

ナビに導かれて私たちは歩いた

見てあの家、見てあの看板、何?この標識?

そこにあるものすべてが

古くて珍しくて新鮮に感じた

駅から離れるにつれて

人の気配がなくなっていく

同じような形、同じような大きさの家々が

どこまでも並んでいて、誰の声も聞こえてこない

だんだん口数が少なくなる私たち

しばらく歩くと国道に出た

信号もない一本道

相変わらずナビを頼りに歩くのだけど

こっちで合ってる?

まだかな?

何度もあなたに確かめた

あなたが頷きもしなくなるのは

私がいちいち確かめるから?

そのうちあなたは一歩前をあるき出した

二人なのに寂しい気持ち

黙々と歩く。周りの景色を楽しむ余裕もないほどに

二人の距離は二歩、三歩と離れていく

イライラするほど悲しくなってきた

待ってよ

声を出しても振り向いてくれない

私の声は脇を通る車が走る音にかき消された

疲れた。休みたい。

頭の中が不満でパンパンになったとき

前を歩くあなたに電話をかけた

ちょっと待って。少し休みたい

あなたは私の方に戻ってきた

私は不機嫌な顔をした

どうして先に行っちゃうの?

ちょっとは私のこと考えてよ

もうイヤ

あなたは黙った

君が行きたいって言ったんだろ。何だよそれ

長い沈黙が続いた

ほら行くよ

手をさしだしてくれた

私のバッグを持ってくれた

私の手をぐっと引っ張った

行こう?

困った顔をするあなた

うん

私はまた歩きだした

目的地に受かって





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?