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シードラウンドを終えて...創業初期の事業作りと資金調達の裏側

前回は2022年の抱負をまとめましたが、本日はクリプト企業がどうやって3.1億円のシード調達をしたかを書いてみたいと思います!
日本国内では、クリプト企業はなかなか機関投資家からは受け入れにくいビジネスになってしまっているので、資金調達に苦しんでいるスタートアップが多いと思います。少しでも参考になれば幸いです。
まずは、プレスリリースを再度掲載!

会社設立のあれやこれや

2021年3月に会社を設立登記しました。 全てFreeeでやりました。本当に便利な世の中になったものです。設立作業もすぐに終わるし、設立後に必要な会計処理、コーポレートカードの作成など、痒いところに手が届くものばかり揃っていて、本当にSaaSって便利だなと実感。

これ見ればラクチンに会社作れまっす!

マネーフォワードさんも同じやつありますので、どちらでもよろしいかと思います。

銀行はネット銀行でほぼほぼ完結するので、住信SBI、PayPay銀行、GMOあおぞらの3つを開設。実は、メガバンクの中でお付き合いのある人が紹介してくれた銀行で口座開設をトライしたのですが結局口座開設はできず、、、 理由はクリプトを取り扱う会社だから、です。ある程度予測していたとはいえ、未だにクリプト・アレルギーが強いとは。。。。(これ以上書くとネガなことばかり書いてしまうのでやめておきますw)
もちろん、メガでも作ってくださるところはあると思います。

創業初期の事業基盤づくり

会社設立以降、ビットコイン市場環境が非常に良く価格も上昇基調だったので、マイニング投資したい投資家も多く、売り上げも順調に積み上がっていきました。 もともとBITFURYでマイニング案件を扱っていたため、事業基盤と売り上げを作るため、その延長線上の事業に時間を割いてしまっていました…今となっては、この点はすごく反省しているのですが、クリプト企業の資金調達ハードルってかなり高いというのがあったので…当時は資金調達に繋げるための実績を少しでも積んでおかないと、と考えていました。でも、正直、実績はめちゃくちゃ大事です。将来の核となるプロダクトづくりと実績の両方をバランスよく追い求められると良かったなと思っています。

一方で、人手がものすごく必要な事業ではないことから、仲間集めや組織作りはちょっと後回しになっていました。ここも反省ポイント。やはり、最初からプロダクトがないとVCからの資金調達が非常に難しいのです。自分がプロダクトを作れない非エンジニアなので、エンジニアと最初から組んでプロダクトの方向性もしっかり練れていれば資金調達で苦労しなかったかもしれないなと。まあ、結局は資金調達ができたのと、今では素晴らしいチームメンバーが入ってくれているので、なんの問題もないのですが。結果オーライ(笑)

資金調達ってこんなに大変なのか?!

最初はVCに振られ続けた…

今は「Web3.0」という魔法の言葉(笑)があって、クリプトも認知が急速に広まってきましたが、設立以前から動いている中で、最初はVC数社に当たってみましたが、悉くクリプトは投資対象にならないというフィードバックが多かったです。
クリプトが魅力的な領域ではあるのは重々承知されているものの、ファンドの後ろにいるLP投資家には機関投資家が多く、出資者へのアカウンタビリティ(説明責任)や、クリプト関連企業への出資に関する税務・法務面のストラクチャー、Exit論、などなど、実は意外に論点が多かったりします。なので、そういった論点を潰すまではなかなか投資に踏み切れない状況といった感じでした。

当社のミッションは、「クリプトを、当たり前に」ですので、やはりクリプトの社会的信用を上げていくことに貢献したいと考えていました。
それには、クリプト企業がベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けていることが重要だと考えています。ベンチャーキャピタルは、スタートアップの将来性にベットして起業家とともに価値を作っていく機関投資家です。VCから出資を受けている=機関投資家から信用されている、という信用創造になるので、どうしてもVCから出資を受けたかったのです。

アプローチの転換〜ファーストクローズへ!

これは困ったぞ!という状況ではあったのですが、ここで他のVCを回っても同じフィードバックを受けるだけだろうと考え、アプローチする相手をエンジェルの個人投資家とリスクを取れるファミリーオフィスにすぐに切り替えました。まだプロダクトもない本当の本当の創業期に、起業家の将来性にベットしてくれる投資家です。これが奏功しました。 ビットコイン自体のイノベーションへの興味関心と弊社のビジョンへ賛同してくださるリード投資家を中心に、2021年5月末に2億円を調達することができました。 その後、セカンドクローズではこれまで自分がお世話になってきた方々を中心に出資もいただきました。

そして、サードクローズではそれまでの事業進捗実績、当社のビジョンへの共感をいただき、シード中心に投資をしているVCのTHE SEEDさんに株主に入っていただくこととなりました。その時大きく潮目が変わったと感じたのを今でも覚えています。

THE SEED代表の廣澤さんとの出会いは特殊ですw
廣澤さんは有名な若手ベンチャーキャピタリストだったので、お名前は知っていたものの全く会ったことがなかったです。なので、まずはTwitterのDMで突撃!無視されるかなと思ったら、すぐにリプをいただき、DMから1週間以内にはオンライン会議。もちろん、初回のオンライン会議で「はじめまして」をしたのですが(笑)、初回のMTGで当社への出資をコミットしてくださいました!
スピード感がとてつもなかったです。若くしてVCを立ち上げて、2号ファンドまで拡大させている方は張り方が違うなと思いました。
今、投資先でもクリプトやWeb3.0にピボットしている投資先も増えてきているとのことなので、Web3.0のコンテクストで起業をされる方は、THE SEEDの廣澤さんとお話しされることを強くオススメします! 必要であれば喜んでお繋ぎしますので、TwitterのDMでもFB Messengerでもなんでもいつでもご連絡ください。

▼THE SEEDはこんなVC

2号ファンド設立のニュースも!おめでとうございます!!

優先株式でのファイナンス

日本のスタートアップシーンではシードラウンドにおいてJ-KISS型新株予約権普通株式でのファイナンスが通例のようなのですが、今回は3億円というシードラウンドとしては比較的大きめの資金を調達目標にしていたため、バリュエーションも通常より高めで交渉していました。
何もないシード期に、起業家である僕にコミットしてくださる投資家に報いるため、最初から優先株式を発行して、創業者株主が保有する普通株式に対して有利な条件がつくように設計しました。

優先株式・・・優先株式(Preferred Stock)とは、種類株の1つであり、配当や残余財産の分配が、普通株に優先する権利がある株式のことをいう。配当や残余財産の分配について優先権があるなどの条件がつくことが多い。

https://glossary.mizuho-sc.com/faq/show/199?site_domain=default

優先株式を使うメリットは、既存投資家よりも高いバリュエーションで入ってくる新規投資家の優先権を確保しプロテクションをつけることで不公平感をなくす、ことです。
シリーズA以降は優先株式を使ったファイナンスは一般的だと思いますが、シードではそこまで一般的ではないと思います。また、知識がないまま投資家から言われるがままに優先株式の契約を作ると大変なことになりかねませんので、くれぐれも知識を補った上で、弁護士事務所にドキュメンテーションを依頼すべきです。
当社は、スタートアップ界隈では非常に有名なAZX総合法律事務所にドキュメンテーションをサポートいただきました!

ベンチャーファイナンスではかなりのご経験も実績もある事務所であることに加え、先生方はものすごくサポーティブでレスポンスも早く、本当にお世話になりっぱなしでした!!
シードファイナンスをされる方には強くオススメいたしますので、ご紹介希望ありましたら是非ご連絡ください。

エクステンションラウンド実施 〜Headline Asiaとの出会い〜

最終的に、優先株式でのファイナンスは2.3億円でクローズしました。
ただ、目標額は3億円だったのに加え、クリプト市場の急速な価格上昇に伴うマイニング収益の増加により、マイニングマシン需要が世界的に急増しました。そこで、急遽当社としてもこの流れに乗ってマシンを抑えるべく、シード期のエクステンションラウンドを行うことにしました。

このエクステンションラウンドに参加してくださったのが、Headline Asiaです。Infinity Ventures Summit (IVS)という、スタートアップ界隈で大きなカンファレンスを毎年開催されているVCです。

Headline Asiaさんは、FreeeやGroupon、Farfetchなどのメガベンチャーにも出資されています。 また、Headline Asiaさんはクリプトファンドも運用されており、最近ではSorareやYGG、JPYCといったクリプトの中でもホットな銘柄にも出資されていて、クリプト・Web3.0への理解も非常に高いです。

Headline Asiaさんとの出会いは、事業が進捗してきた2021年9月頃に、IVS NASUのピッチイベント予選に参加したことです。 残念ながら、当社は2次予選で落ちてしまったのですが、本戦に勝ち残った企業を見ると、設立からすでに4〜5年ほど経過したスタートアップが多かったので、今回は仕方のないことかなと思うことにしました。(実際には悔しかったですが…)
昨年11月に行われたIVS NASUについては下記をご参照ください。 僕も本戦のピッチを見ましたが、とてもエネルギッシュで面白いプレゼンばかりでした!

この2次予選で、IVSを主催されているHeadline Asiaの田中章雄さんとJonathanさんに出会いました。 ピッチが終了してすぐにFBメッセンジャーで、当社への出資に興味がある、とのご連絡をいただき、すぐに電話会議をして出資の話をいただきましたので、そのスピード感にはかなりビックリしました!

恥ずかしながら、少なくとも最終予選とかに残らないと出資とかには繋がらないんだろうなと勝手に思っていました。先入観って怖いです(笑) スタートアップであれば、こういうピッチイベントには間違いなく参加した方が良いですね。 どこで何がどう繋がるかは誰にも分からないので。 自分が恥をかくだけで可能性が出てくるのであれば、間違いなくGOしましょう。 僕も懲りずに来年もIVS LaunchPadに出ます。今度は本戦狙います。一緒に頑張りましょう!

今回の出資にあたり、Headline Asiaの田中さんとJonathanさんとは色々なディスカッションをさせていただきましたが、日本のVCの中でここまでクリプトに関する理解力が高いキャピタリストはほとんどいないと思いました。 やはり、多数のグローバルのクリプトPJに出資して、生の情報を得ているVCは本当に強いです。 そのようなクリプトへの理解力の高いHeadline Asiaさんに今回ご出資いただけたことは、非常に心強く感じています。

なぜ、J-KISS型新株予約権での資金調達を行なったのか?

J-KISS型新株予約権とは、2016年に500Startups(現Coral Capital)さんが公開してくださった資金調達手法の一つで、現在のスタートアップ界でまさにフォーマットになっている手法です。

J-KISS = 日本版KISS: Keep It Simple Security つまり簡単に早くシンプルに資金調達するための投資契約書です。シード段階ではシンプルに素早く資金調達を行い、素早くプロダクトマーケットフィットまでたどり着く。そしてシリーズAの時に初めて、優先株を使って複雑な条件交渉を行えば良い、というシリコンバレーで蓄積された経験を形にしたものです。

https://coralcap.co/2016/04/j-kiss/

元々言葉としてのJ-KISSは知っていたのですが、実際にJ-KISSを利用したことがなかったので、「なんでスタートアップ界隈では流行しているのかなー?普通に優先株で発行すりゃええやん?」と勝手に偏見を持っていました。

でも、実際にJ-KISS型新株予約権での調達手法を活用してみて、「なんて資金調達がラクになるんだ!!!!もっと早く使ってろよ俺…」と愕然としました。

J-KISSのメリットは大きく2点だと考えています。

①投資契約書がすでにフォーマット化されており、資金調達までのリードタイムが大きく削減できる!! 
創業者にとって何より重要なのは事業をいかに早く大きくするか、プロダクトを作りいかに早くPMFまで持っていくか。資金調達ももちろん重要なんですが、ここの時間が大幅に短縮できるのは創業者にとっては本当に大きいのです!

②特に創業期は一番投資家と議論になり時間がかかるバリュエーションの議論を先送りできる! 
これは創業者にとっても、J-KISSで投資する投資家にとっても重要だと思っています。VCはこれまでの経験からバリュエーションもある程度のレンジで考えるので、そのバリュエーションレンジに入っていれば受け入れやすい。創業者は、できる限りダイリューション(希薄化)を排除したい。

今回J-KISSを採用するにあたり、参考にさせていただいたnoteはこちら。

今回、当社はシードラウンドのエクステンションラウンドとして、J-KISS型新株予約権を使いました。 優先株式などではなく、J-KISSでの資金調達を選択した理由は3つです。

①偶発的に投資家が出てきた

突発的な資金調達ニーズが出てきた(マイニングマシン購入)

③(マーケットの追い風があり)事業が計画よりも大きく進捗している中で、次回ラウンドは2022年3月に予定していた。

今回のエクステンションラウンドはサードクローズから2ヶ月程度しか経過していなかったのですが、事業が急激に進捗しており、次のシリーズAでのファイナンスに向けた仕込みもしていた中でしたので、この段階でバリュエーションを決めたくなかったんです また、前回ラウンドで投資してくれた既存株主へのフェアネス(公平性)の観点からも、同じバリュエーションで入ってもらうというのは考えにくかった。 こうしたことを総合的に判断し、J-KISS型新株予約権での資金調達を選択しました。

もちろん、バリュエーションキャップやディスカウント率の議論は当然に発生します。 それでもJ-KISS型新株予約権は非常に有益な資金調達手法だと言わざるをえません。 やはり、創業者の時間を大幅に節約できるという点で、フォーマットになっている資金調達手法があるというのは創業者にとってはなんともありがたいことです。 こういうナレッジがしっかりとシェアされている日本のスタートアップシーンで起業することができて幸せだなと感じています!

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