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【エッセイ】『剣道失格』

「また、落ちた。」

その時点で連続5回の不合格。


高校時代、
剣道の初段挑戦で見事に落ち続けた・・・
当時、自分の周りでそんなに落ち続けた人は
いなかったように思う。

中学の部活から初心者で剣道を始める。
顧問の先生も私同様、剣道経験がない方。
先輩は幽霊部員。
剣道経験者の同期が私の師匠。
同期のみんなは中学卒業迄に、
剣道初段に受かった。
私は何とかギリギリ、
剣道一級に滑り込みセーフ。

剣道初段への憧れから、
高校でも剣道部に入部。

憧れは、実に遠かった・・・

高校剣道部での凄まじい過酷な稽古。
ガムシャラに食らいついて日々。
しかし、基本がしっかりと
まだ固まっていなかった。
そんな中、自身で勝ち負けにこだわる
基本を無視した当てることを意識した
チャンバラのような
剣道スタイルに変化していった。

こんなに毎日、
中学と比べて過酷な稽古をしているのだから
初段なんて一発合格だ。

とんでもない奢りだった・・・


剣道の初段審査は、
一次審査、実技2人との試合形式。
一次合格者のみ
二次審査で日本剣道形3本まで木刀での実技
と記述式での筆記試験
という流れで行われる。
(地方により一部順序は異なるらしい)

一次審査時は、 
とにかくどんな体制でも
相手の面や胴、小手を当てることのみ
にこだわった。


「自分が多く当てた、勝った!」

当時はそんな心境だったと思う。

最初の挑戦から5回目にいたるまで
一次審査合格者の受審番号が
貼り出されるたびに・・・

私だけの受審番号が抜けていた。

この「えっ、何で?」が5回続き...

初段不合格のたび、
なんだか自分自身そのものが失格
と言われているような気がした・・・
悔しかった。

6回目の受審。

この時初めて、
最初に構えあった瞬間、
相手の目の動きを冷静に見ることも出来た。

今まで自分は相手の目の動きは意識せず、
ただただ、相手よりも手数を出して勝つという
焦りのみで審査を受けていた・・・


一次審査合格者が貼り出された。


泣いた。

しばらくの間、
自分の受審番号を
一人眺めていた記憶が今でもある。
嬉しかった。

あの時の足踏みが、

今もなお、細々ながら剣道を続けてこれた
モチベーションにつながった。

by カツなう

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