カブサッキphoto2

フェルナンド・カブサッキ ツアー2016 に向けて。2

連載第二回 「次は君たちがブエノスアイレスに来る番だ。」

翌年、2003年にもカブサッキは日本にやって来ました。この時には日本人メンバーがカブサッキを迎えての「KIRIE Kabusacki Tokyo Session」というタイトルで発売になるアルバムのレコーディングをします。

メンバーは、山本精一さん(G)、芳垣安洋さん(D)、岡部洋一さん(D,Perc)、沼澤尚さん(D)、鬼怒無月君(G)、僕(Vn)、そしてカブサッキ(G)の8人です。楽器の編成の事は何も考えずにカブサッキと一緒にやって欲しい人達に声をかけたら、トリプルドラム+トリプルギター+バイオリンというちょっと異常な編成になってしまいました。しかし編成や形から決めて行くのではない考え方が結果的にはとても良かったと思っていますし、後の僕らが関わって行くセッションにも良き前例になったと自負しています。

そのレコーディングの時に印象深い事が有りました。それぞれのメンバーがセッティングも終えて、即興でのカブサッキとの演奏を記録すべくセッションが始まったのですが、何か「?」と思う所があり日本人メンバーに集まってもらって相談を持ちかけました。セッションは僕らがいつもやっているように良い流れで進行して行くのですが「いつものように」というのが引っかかる。せっかくカブサッキを迎えてのセッションなのに彼の色が表に出て来ない。これはけっして彼が遠慮しているからでもなく、彼の個性が希薄だからとかという事では無く、カブサッキが完全にこちらに合わせているからだと気付いたのです。カブサッキはもの凄くコニュニケーション能力が高く、即興演奏のスキルも素晴らしい。そして自分の我を出さずにまるで鏡のようにこちらを映すのです。それが彼の特異な個性と言えばそうなのかもしれませんが、この時は皆にこう相談しました。

「カブサッキの色をもっと出してもらえるように、出来るだけ彼の音の世界観に寄り添ってセッションを始めてみよう。」

しかもカブサッキにはそう言うと構えてしまうかもしれないと思い、この事は黙っていました。

これはまるで鏡を合わせた状態と言うか、しかしそこからじわりじわりと僕らにも手に取って掴む事が出来るカブサッキワールドが滲み出て来て、それを皆でキャッチしてまた投げ返すというような素敵なセッションを繰り広げる事が出来たのです。

カブサッキの「鏡体質」は今でもそういう要素は多分にあるので、彼と一緒に音を出すと自分の今の状態が還って見えて来るようでハッとする事が多いですね。もしも、世界が自分を映している鏡だとすれば、自分が変わる事で鏡に映る世界も変わって見えるのかもしれません。

      「KIRIE Kabusacki Tokyo Session」(2004)


2004年にもカブサッキは来日、そのツアーが終わった晩に彼がこう言いました。「次は君たちがブエノスアイレスに来る番だ。」

その言葉を頼りに、2005年に山本精一さんとブエノスアイレスに向かい、カブサッキ、アレハンドロ・フラノフ、サンチャゴ・ヴァスケス、モノ・フォンタナ、フェルナンド・サマレア達とレコーディングとライブを行い、「アルゼンチンロックの神様」チャーリー・ガルシアまで飛び入りするという大ハプニングも有り、アルゼンチンの最も発行部数の多い新聞「La Nation」に「日本から火星人がやって来た」という記事が大きく1面いっぱいに取り上げられ、街ですれ違う人からも「コングラチュレーション!」と声をかけられるような珍道中になりました。

その「アルゼンチンロックの神様」チャーリー・ガルシアについてちょっと。

チャーリーはSUI GENERISという伝説のグループで60年代の末から活動を開始しました。当時アルゼンチンは66年にクーデターで誕生した軍事政権下。その中でチャーリーのメロディと歌のメッセージがアルゼンチンの人の大きな支持を得て、生きる伝説のような存在になっていきます。その後、Serú Giránなどの活動での成功を経てソロになってもカリスマ性はますます強くなって行きました。

僕らがブエノスアイレスに滞在していたときも、大統領官邸でのライブや国営放送での国歌演奏などがあり、そのスーパースターぶりの片鱗が伺いしれました。当時ブエノスアイレスに滞在していて僕らのライブにも来てくれた音楽評論家の栗本斉さんいわく「アルゼンチン人にとっては例えるなら美空ひばり級の超大物」との事。そのチャーリーガルシアのバンドのギターを当時カブサッキが勤めていて、その関係で僕らのライブにチャーリーガルシアが飛び入りしに来たのです。

ブエノスアイレスでの僕らのライブは2部制で、前半が終わってからの休憩時にチャーリーはやって来ました。そしてスタッフが彼の為のセッティングを始めます。すると500~600人くらいいたお客さん達の雰囲気が一変して会場に凄い緊張感が張りつめました。チャーリーがいる事が判ったからです。

実際会ってみたチャーリーガルシアさんはべろべろに酔っていましたが大変気さくな人で、例えて言うなら、美空ひばりさん+長嶋茂雄さん+勝新太郎さん+横山やすしさんみたいな感じの、昭和の大スターみたいな雰囲気のある人でした。きっとサッカーで言う所のマラドーナみたいな存在の人なのでしょう。

まぁ、ぶっ飛んだお方でした。そのチャーリーさんが僕と山本さんの手を握りしめながら「俺は日本に行きたいんだ!協力して欲しい、ぐふふふ。」とおっしゃっています。

              Charly Garcia


僕らは無事に日本に帰る事が出来るのでしょうか?


(続く)

勝井祐二




フェルナンド・カブサッキの来日ツアースケジュールはここで。↓

http://kabusacki.blogspot.jp/


フェルナンド・カブサッキ ツアー2016 スケジュール

4/7 名古屋 TOKUZO

PIKA × 勝井祐二 × 大友良英/SUN・RA・NEW リリースツアー × フェルナンド・カブサッキ ジャパンツアー

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)PIKA(Guitar Vocal and Drums) 大友良英(Guitar) 勝井祐二(Violin)

open 18:30 start 19:30start 前売り¥3000 当日¥3500 

予約 : 052-733-3709

http://www.tokuzo.com/schedule/2016/04/07/


4/8 大阪 伽奈泥庵

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)山本精一(Guitar)、勝井祐二(Violin)

open 18:30 start 19:30start 前売り¥3000 当日¥3500

予約 : 06-6764-6483

http://kanadian.org/


4/9 京都 アバンギルド

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)山本精一(Guitar)、勝井祐二(Violin) senoo ricky(D)

w / 数えきれない

open 18:30 start 19:30start 前売り¥3000 当日¥3500

予約 : 075-212-1125

http://www.urbanguild.net/top.html


4/10 神戸塩屋 旧グッゲンハイム邸

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)山本精一(Guitar)、勝井祐二(Violin)、Haco(Voice,electronics)、森本アリ(electronics,etc)

open 18:30 start 19:30start 前売り¥3000 当日¥3500

予約 : 078-220-3924

http://www.nedogu.com/


4/11 滋賀近江八幡 酒游館

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)ソロ

open 19:00 start 19:30 前売り¥2500 当日¥3000(Drink付)

予約 : 0748-32-2054

http://www.shuyukan.com/sakedelic/index.html


4/13 元住吉POWERS2

FERNANDO KABUSACKI and Friends Super Session #1

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)松下マサナオ(Drums from Yasei Collective)ナカコー(Guitar,etc)ナスノミツル(Bass)勝井祐二(Violin)内田直之(Mix)

open 18:00 start 20:00 前売り¥3000 当日¥3500

予約 : 044-455-0007 powers_two@ybb.ne.jp

http://www.realmusicjapan.com/%E2%98%85fernando-kabusacki-and-friends-super-session%E2%98%85/

4/14 元住吉POWERS2

FERNANDO KABUSACKI and Friends Super Session #2

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)沼澤尚(Drums)大野由美子(Bass from buffalo daughter)シュガー吉永(Guitar from buffalo daughter)勝井祐二(Violin)内田直之(Mix)

open 18:00 start 20:00 前売り¥3000 当日¥3500

予約 : 044-455-0007 powers_two@ybb.ne.jp

http://www.realmusicjapan.com/%E2%98%85fernando-kabusacki-and-friends-super-session%E2%98%85/


4/16 札幌 PROVO

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)+勝井祐二(Violin) デュオ

w / 臼井ミトン(Vocal,Guitar,Keyboard) with 中條卓(Bass)+沼澤尚(Drums)

open 18:30 start 19:00 3000円+1Drink

予約 : yossy.fes@gmail.com

http://provo.jp/about/


4/17 新宿Pit inn

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)七尾旅人(Vocal,Guitar,etc) 勝井祐二(Violin)

open 19:30 start 20:00 ¥3000+税(1DRINK付)

予約 : 03-3354-2024

http://www.pit-inn.com/index_j.php


4/18 下北沢440

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)沼澤尚(Drums) ナカコー(Guitar,etc) U-zhaan(Tabla) 勝井祐二(Violin)

open 19:00 start 19:30 前売り¥3000 当日¥3500 (1order別)

info 03-3422-9440

http://www.club251.co.jp/440/


4/19 下北沢440

フェルナンド・カブサッキ(Guitar) with KOMA(劫魔)

KOMA are 勝井祐二(Violin) U-zhaan(Tabla) 益子樹(Synthsizer,Guitar) 千住宗臣(Drums)

open 19:00 start 19:30 前売り¥3000 当日¥3500 (1order別)

info 03-3422-9440

http://www.club251.co.jp/440/


4/22 吉祥寺キチム

『カブサッキ と パンダ と あそぼ!』

~ 一人とか二人とか全員とか、音とか絵とかアルゼンチンワインとか ~

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)原田郁子(Vocal .Piano)テニスコーツ(さや Vocal.Keyboard 植野隆司 Guitar,Vocal.Drawing)パンダ(chorus)

open 18:30 / start 19:30

料金 3500円+500円(1drink)

予約メール : yoyaku1@kichimu.la

http://www.kichimu.la/file/kabusacki.htm


4/23 千駄木Bar Isshee 

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)+内橋和久(Guitar)デュオ

open 19:30 start 20:00 投げ銭制(別途チャージ ¥500 + 1order )

予約 : barisshee@keh.biglobe.ne.jp

http://www.bloc.jp/barisshee/


4/24 下北沢440 ランチライブ

フェルナンド・カブサッキ(Guitar)+勝井祐二(Violin) デュオ

open 12:30 start 13:30  ¥2000+1 order

info 03-3422-9440

http://www.club251.co.jp/440/



フェルナンド・カブサッキ プロフィール

フェルナンド・カブサッキ(Fernando Kabusacki、1965年 - )は、アルゼンチン、ロサリオ出身の“アルゼンチン音響派”を代表するギタリスト。1965年、アルゼンチン・ロサリオ生まれ。5歳の時に手にした2弦ギターをきっかけにギターを始める。10代でパンクと出会い、バンドを結成。1988年に渡英し、キング・クリムゾンのロバート・フリップ創設のワークショップへの参加。リーグ・オブ・クラフティ・ギタリスツ(LCG)の一員としてフリップの世界ツアーにも度々帯同した。1991年より、ブエノスアイレスのフィルム・アーカイヴと共同で、無声映画のサウンドトラックを即興演奏する不定形のプロジェクト、ナショナル・フィルム・チェンバー・オーケストラを立ち上げる。1992年、LCGの主要メンバーのエルナン・ヌニェスとスティーヴ・ボールとともに、ベルリンでロス・ガウチョス・アレマネス(以下LGA)を結成。断続的に活動を継続している。LGA以外でも活発に活動。1995年からフォルクローレ・シンガー、リリアナ・エレーロのバンドでギタリストを務める。1998年には初のソロ・アルバム『Houses I』を発表。この頃からアレハンドロ・フラノフ、ファナ・モリーナ、モノ・フォンタナらと頻繁に共演を重ね、お互いの作品に参加するようになる。

2002年には、ファナ・モリーナのサポート・ギターとして初来日も果たした。関連作品も次々に紹介され、「アルゼンチン音響派」の最重要人物として一躍注目を集める。これをきっかけに日本の様々なアーティストとの交流を深め、山本精一や勝井祐二をはじめ、大友良英、原田郁子、バッファロー・ドーター、UAらと積極的にコラボレーション、共演を行なっている。

1998年から2011年の『LUCK』まで、多数のソロ・アルバム、コラボレーション・アルバムを発表。また、長短編映画やアニメーションのための作曲も多数行っている。

アルバム

• Kabusacki | Houses I (1998年)

• Kabusacki | The Planet... and its beings (2000年)

• Kabusacki III | Luz de Oro de Chiporrita (2002年)

• Kabusacki 4.5 | Together (2003年)

• Kirie: Kabusacki Tokyo Session (2004年)

• Kabusacki 6.1 | La Maravilla (2005年)

• Kabusacki 7 & 8 | The Flower & The Radio (2006年)

• Kabusacki 9.0 | ND Live (2008年)

• Kabusacki 10 | Luck (2010年)

• Kabusacki 11 | The Champion (2014年)

コラボレーション・アルバム

• La National Film Chamber Orchestra plays Murnau´s Faust Live Kabusacki, Mono Fontana, Mussa Phelps and Ale Franov (2002年)

• Mar Azul Nuria Martínez / Fernando Kabusacki / Valdo Delgado (2002年)

• Musik From the Red Hills Nisenson-Kabusacki-Dawidowicz (2002年)

• Live at Kanadean Kabusacki, Yamamoto, Takashi Kojima and Yoshitake Expe (2004年)

• The 10 Oxherding Pictures Kabusacki, Kei, Dub Marronics & Yoshitake Expe (2005年)

• Chichipío Kabusacki, Franov, Katsui, Yamamoto, Fontana, Vázquez (2005年)

• Izumi Kabusacki, Franov, Katsui, Yamamoto, Fontana, Vázquez (2006年)

• Live at Kinema Club Tokyo Rovo + Fernando Kabusacki + Santiago Vazquez + Ale Franov (2008年)

• Commendatore Los Gauchos Alemanes (2008年)

• Al limiti del mondo Fernando Kabusacki and Fernando Samalea (2011年)

• PHON vol.1- Improvised Session 2011.05.01 Fernando Kabusacki and Otomo Yoshihide (2011年)

Fernando Kabusacki (Rosario, Argentina, 1965) plays electric, synthesized and acoustic guitars and currently lives in Buenos Aires. He is one of the most innovative guitarists in Argentina's new music and rock scene.

Kabusacki recorded and played with musicians from different backgrounds such as Charly Garcia, María Gabriela Epumer, Juana Molina, Marina Fages, The Orchestra of Crafty Guitarists, Vernon Reid, Francisco Bochaton, Flopa, Liliana Herrero, ATirador Laser, Fernando Samalea, Maria Eva Albistur, Nikada, Migue Garcia, The Electric Gauchos, Mono Fontana, Robert Fripp & The League of Crafty Guitarists, El Tronador, Nahuel Briones, Roger McGuinn, Mussa Phelps, Hermeto Pascoal, Axel Krygier, Maxi Trusso, Santiago Vazquez, Alejandro Franov, Roxana Amed, Juan Ravioli, La Congreso World Templation and many others. In Japan he shared the stage with musicians like Seiichi Yamamoto, Yuji Katsui, Buffalo Daughter, Saicobaba, Haco, Kei, China, Yae, Yoshimi, Miu Sakamoto, Jyoji Sawada, Tenniscoats, Yoshitake Expe, Otomo Yoshihide, Dub Marronics, Pika, Miho Hatori, Nanao Tavito, Kazuhisa Uchihashi, Kido Natsuki, Yasuhiro Yoshigaki among others.

Kabusacki is one of the founder members of Los Gauchos Alemanes, a guitar trio that toured extensively through Europe, United States and South America with british guitarist Robert Fripp.

Kabusacki performs playing music for silent films with La National Film Chamber Orchestra (currently residing at Museo de Arte Latinoamericano de Buenos Aires, Malba) and composed several original soundtracks for animations, short films and movies collaborating with directors like Pablo Rodriguez Jauregui, Julia Solomonoff, Lucia Cedron, Ernesto Livon Grossman and Jorge Caterbona.

Kabusacki released 9 CDs as a solo artist: Houses I, The Planet and its beings, Luz de Oro de Chiporrita, Together, La Maravilla, The Flower and the Radio (relased in Argentina and Japan), ND Live, Luck and The Champion (relased in Argentina and Japan). In Japan 6 collaborative records have been released: The Planet Transport, The Ten Oxherding Pictures, Kirie (Kabusacki Tokyo Session), Chichipio, Izumi (produced in collaboration with Yuji Katsui and Seiichi Yamamoto) and "Live at Kinema Club Tokyo" (Rovo + Franov/ Kabusacki/ Vazquez).

Currently plays, tours and records with Kabusacki Band, Sumo x Pettinato, Robert Fripp & The Orchestra of Crafty Guitarists, Marina Fages, Fernando Samalea, Rayos y Centellas and La National Film Chamber Orchestra.