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これ観ました! 芝居見物レポート 五月@明治座

歌舞伎スペクタクル『不死鳥よ 波濤を越えて─平家物語異聞─』

明治座創業百五十周年記念「市川猿之助 奮闘歌舞伎公演」昼の部

歌舞伎スペクタクル 😊フュージョン・キラキラ・エンタメ・眼福
観劇日 2023年5月13日

観劇直後の筆者ツイッターには「明治座、昼。宝塚レビューとミュージカルとスーパー歌舞伎のフュージョン風。衣装も美しく、花形の勢いも感じられました。さらにもっと今どきに演出してもよかった感じもします。隼人さん煌びやかな衣装もお似合い」とあり。

夢とロマンスとキラキラが詰まった『不死鳥よ 波濤を越えて─平家物語異聞─』は、スーパー歌舞伎とはひと味違うフュージョンが眼目。初演は44年前(関連記事)で、宝塚レビューとドッキングさせるという、猿翁(当時猿之助)の革新的な発想は、まさに澤瀉屋の真骨頂。

歌舞伎は文字通り歌・舞踊・演技と三拍子揃った演劇ですが、通常歌は唄方や太夫が担います。今回のように俳優が本格的に歌うのは斬新そのもの。特に下村青の武完はドラマティックで魅せられます。彼と同じく『猿之助と仲間たち』にも出演していた石橋正次、スーパー歌舞伎Ⅱでもおなじみの嘉島典俊も加わり、俳優陣もクロスオーバー。この点はスーパー歌舞伎も同様ですが、さらに女流日本舞踊家も登場。さまざまな要素を巧みに一つにまとめて令和の歌舞伎スペクタクルとして楽しませてくれました。もし叶うなら、次回はもっとスピーディな展開で、いっそのこと、このうえなく贅沢に生オケというのもありかも。すぐにというわけにはいかないとは思いますが、いずれまた澤瀉屋で歌舞伎スペクタクル第2弾を上演してくれる日を楽しみにしています。(2023年7月5日)

※澤瀉屋」の「瀉」のつくりは、正しくは“わかんむり”です。

(参考文献:公演筋書)

三代猿之助四十八撰の内『御贔屓繋馬(ごひいきつなぎうま)』

明治座創業百五十周年記念「市川猿之助 奮闘歌舞伎公演」夜の部

前太平記もの 😊エンタメ・ケレンてんこ盛り・様式美いいとこ取り・眼福
観劇日 2023年5月13日&28日

13日猿之助バージョンの観劇直後の筆者ツイッターには、「わかりやすいストーリーに昨今の話題をセリフでうまく取り込み、立回りも華やかで、大喜利の六役早変わりの所作事もすばらしく楽しかった。劇場を出ると神輿渡御。もう完璧。團子さん可愛く猿之助と仲間たちにも出演していた下村さんの爪も発声法違うのに歌舞伎になっていてアクセントに」とあり。

28日隼人バージョンは「隼人大奮闘で、無事千穐楽がはねました。出演者の魂が感じられる熱い舞台でした。観客去り難く拍手鳴り止まず、隼人が挨拶。いい舞台でした」。

『御贔屓繋馬』は昭和59(1984)年明治座で猿翁(当時猿之助)が、復活通し狂言として初演した演目(関連記事)。四世南北の前太平記もの2作品にさらに黙阿弥の『土蜘』を下敷きにした舞踊劇をつなげた、猿翁の演出力が大いに発揮された大作です。

前太平記ものとは俗史書『前太平記』に記された時代に取材した世界で、平将門とその子の滝夜叉姫や良門にまつわる将門もの、源頼光と彼の四天王が出てくる四天王ものに大別されます。本作はざっくりまとめると前半が将門もの、大喜利が四天王もの。複雑な話をわかりやすくテンポよくまとめ、今どきのネタをせりふで盛り込み、煙を出しながら空中を歩くような宙乗り、だんまり、花四天(よてん)が多数登場する華やかな立ち回り、六役早替りと、様式とケレンを織り交ぜた、密度の濃いおもちゃ箱のような構成。

『歌舞伎夜話特別編「歌舞伎家話(かぶきやわ)」第二十六回に猿之助とともに出演していた隼人と米吉、福之助と美しいだけでなく今や立派な花形の面々、最近キラメキを増してきた感のある男寅、瑞々しいエネルギーを放つ團子と、眼福度も高いのが魅力(笑)。

歌舞伎座に比べるとこぢんまりとした明治座のアットホームな雰囲気も手伝い、猿之助と隼人いずれのバージョンも、役者の情熱と観客の歓喜があいまって、劇場全体が一体感を生み出していました。(2023年7月11日)

(参考文献:『広辞苑第七版』岩波書店、『最新 歌舞伎大辞典』柏書房、公演筋書)

©Katsuma Kineya

😊=推しポイント(以下同)
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