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【エッセイ】ただそれだけのことである#1


はじめに

「ただそれだけのことである」そのことに気づいたとき、すべての悩みが氷解した。
 ただ、それだけのことだったのだ。

 言葉にすれば単純なことなのだが、これは、わたしにとっての「哲学」であった。
 仕事に悩み、お金のことで悩み、生活のことで悩み、持病まで悪化して、気まで狂った。
 だけど、希望はあった。
 ちゃんと、見つけられたのだ。この世界を。

 この世界のすべては、「ただそれだけのことである」で片付けられる。

 アパートのキッチンに立ちながら、釈迦のことを思った。
 悟りを開いた釈迦。
 釈迦はいったい「何を」悟ったのだろう。
 わたしはそのとき、自分がお釈迦様以上の「悟り」を開いたのだと高揚した。

「そうか、そういうことだったのだ」「ただ、それだけのことだったのだ」

 天上天下唯我独尊。と、釈迦はいった。

 その言葉の真意は知らないけれど、わたしの気持ちはわたしにとっての「悟り」を開いてからずっと楽になったのだ。

 その悟りが、「ただそれだけのことである」ということだ。

 そう思うだけで、この世の中は、ずっと簡単で、楽に生きられる。

 わたしは、その最大の気付きを、みなさまにお届けしたい。

 そう思い、筆を取りました。(本当はキーボードを叩いている)

わたしのこと

 まず、わたしのことについて話そう。

 わたしは、統合失調症である。以前では精神分裂症と呼ばれた病気だ。
 仕事をしていて、その症状が悪化し、まったく仕事ができなくなってしまった。
 担当の医師から「一ヶ月何もしないで休むように」と言われ、長期休暇を得た。
 そのあだに、わたしは一編の小説を書き上げた。それはまだ未発表だが、いつか世に送り出したい。
 そしてわたしは、統合失調症とは別に、「現実感消失症」という症状を感じることになった。

 これから語るお話は、その現実感消失症を患って見た世界の話である。

 現実感消失症について説明するのはめんどうなので、気になった方はググってください。

 この世界には、悩みがつきものです。

 人間関係、お金のこと、生活のこと、あるいは「自分のこと」。

 その悩みを解消するために、「ただそれだけのことなのである」という考え方は有効だとわたしは思います。

 この文章を読んでくれた方が、すこしでも未来に希望を抱けるのであれば、わたしは幸いに思います。

 それでは、いってみましょう!

人間関係

職場でのこと

 人生においての悩みの多くを占める「人間関係」。
 そして、人生の大半を占める職場での人間関係。
 そのことで悩んでいる人は多いと思います。

 ここではわたしの経験をもとに、職場での人間関係について考えていきたいと思います。

 わたしは、レストランで働いていました。
 パスタが美味しく、ハンバーグも美味しく、ステーキも美味しい地元では有名なお店です。
 そこで、正社員として働いていました。

 ところが、そこでわたしはパワハラに遭います。

 それは本当にひどく、その人が原因で辞めていった子も多いと聞きます。

 わたしはその人からたくさんの苦痛を与えられてきました。

 どういったパワハラなのかを説明するのはとても難しいことですが、その人はわたしのことを「お前」と呼びます。

 仕事を辞める最終日には、些細なミスをしただけで、わざわざ近寄ってきて、人目のつかないところでこういったことをいいました。
「お前は本当に最後の最後までダメダメだな」と。

 もう仕事を辞めるのだから、思いっきりそいつをぶん殴ろうかと思いました
 でもわたしはそれを我慢し、「すみませんでした」と謝りました。
 そうすると、その人はわたしに「すみませんでした? それだけ?」と言いました。
 他に何をいうのでしょう。どうしようもないので、わたしはただ「すみませんでした」とだけ謝りました。
 非常にめんどくさい人です。

 あなたも周りにもそういうめんどくさい人いませんか? まったく話にならない人。

 ただ、立場が上だという理由だけで常に上から目線で接してきて、本人の気分だけで機嫌をそこねる人。何か気に入らないことがあれば怒り、当たってくる人。そういう人は、自分が先輩であることを自覚しているのかいないのか、こちらが後輩だから何も言えないということに気づいているのか気づいていないのか、わかりませんが、とにかく嫌なことをしてきます。

 どこにでもいる、嫌な人、だけど、職場の先輩だから、逆らえない。

 そういうこと、あなたにもありませんか?

 わたしは、仕事を辞めるかどうかとても悩みました。

 結果として辞めることになるのですが、悩んでいたときに気づいたことがあります。

 それは、「内部」と「外部」の関係です。

「ああ、結局は『外部』の話じゃないか。だったら別にわたしが悩むことなんかない」

 そう思うと、とても気持ちが楽になることができました。

 それはどういうことなのかを、これから説明します。

内部と外部

 職場の人間関係というのは、「内部」の話です。
 平社員、主任、課長、部長、常務、専務、社長会長云々。
 それは、組織内の「内部」の話です。
 先輩後輩という関係も、「内部」の話です。

 わたしはレストランで働いていて、ある先輩からの嫌がらせに悩んでいました。
 仕事を休みたくても休めない。辞めたくても、辞められない。でも、辛い。
 そのあいだにも先輩からの嫌がらせは続いています。

 辞めたくても、辞められない。

 辞められない? 本当にそうでしょうか。

 わたしは、職場の関係で悩んで、どうしようもなくなったときは、「辞めればいい」と思っています。

 辞めるにもいろいろと手続きがいるし、何ヶ月前に申告しなければできないとかいろいろありますが、極端な話、「次の日から行かなければいい」とわたしは思います。
 行かなければいいのです。

 勝手に辞めればいいのです。

 それを世間では「飛ぶ」といいます。

 無断退職です。

 多くの人は、そのことを「悪いことだ」と思ってなかなかできません。

 でもわたしは全然飛んでいいと思います。

 どうして苦しまなければならないのでしょうか。辞めたくても辞められない。休みたくても休めない。どうしてそんな思いをしなければならないのでしょうか。
 
 そんなことないのです。

 だって、我々は、もともとは「外部」の人間なのだから、いいのです。

 ―――

 組織内で働いていると、「内部」の人間になります。
 だから、悩んでしまうのです。

 でも考えてもみてください。

 働く前は、その会社なり職場なりは、まったくの「外部」だったのではないですか?

 自分とは関係のない、「他人」のこと。

 そうなんです。

 他人事なんです。

 店長に恩があるとか、社長に恩があるとか、まあいろいろありますが、でも、その店長にしろ社長にしろ、出会う前は「他人」だったのです。
 それが、他人ではなくなり、「内部」の関係になった。
 だから、しがらみができてしまった。

 抜け出したくても抜け出せない。
 休みたくても休めない。迷惑がかかるから。
 辞めたくても、辞められない。そういう規則があるから。

 辛い。苦しい。

 そんなもの、全部元に戻せばいいのです。

「内部」から「外部」へと戻せばいいのです。

 もともと「外部」のことなのだったのだし、他人事だったのですから。

 苦しい思いをするくらいなら、もういっそ全部捨てて、先輩も店長も社長も全部「外部」「他人事」にしてしまえばいいのです。

 そんなことできない?

 なぜできないのですか?

 できますよ。

 むしろ、なぜそこまでこだわるのでしょう。拘泥するのでしょう。

 こだわる必要なんてないんです。

 人生なんてものは、わずかしかないのです。

 そのわずかな時間を、そういう「自分を苦しめるもの」で満たしていいのでしょうか。

 よくないです。

 もし、自分が属している職場なり人間関係なりが「自分を苦しめるもの」なのだとしたら、そんなところからはさっさと去ればいいのです。

 無断で仕事にいかなくなれば、まあクビでしょう。
 だからなんだというんでしょう。
 クビだ、と言われるだけです。

 法的に問題があって、「会社に損害を与えたのだからその賠償として2ヶ月間強制労働に課す」なんて罰があるわけでもないのです。

 ただ、批判されるだけです。

 ただ、それだけのことなのです。

 だったらもう、何も怖くないじゃないですか。

 ただ、批判されるだけ、嫌われるだけ。

 ただ、それだけのことなのである。

 自分を痛めつけている人に、好かれたいですか?

 自分を苦しめる人に、気に入られたいですか?

 自分に嫌な思いをさせてくる人に、嫌われたからといって、何になるというのでしょう。

 もう、わかっているはずです。

「おれは、わたしは、お前が嫌いだ」と。

 なら、それでいいじゃないですか。

 嫌いな人からはさっさと去ればいい。

 身内から、他人へと変わるだけです。

 元に戻るだけです。

 もし、今現在パワハラに悩まれている人がいるのなら、あれこれ悩まないで、さっさとその職場を辞めましょう。

 明日から行かなければよいのです。

 別にどってことない。

 批判されるかもしれませんが、別にどうでもいい。

 それで、よくないですか?

 ただ、「辞めた」「行かなくなった」

 それだけのこと。

 ただ、それだけのことなのである。


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