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「組織文化」と「組織風土」の違いを調べてみた

はじめまして。Webエンジニアの成澤です。

今日は初note投稿ということで、最近調べた「組織文化と組織風土の違い」について話します。

普段何気なく使っているこの2つの言葉、違いを説明することはできますか?
経営者でもしっかりと違いを理解している人は少ないこの言葉。このnoteを読み終わる頃にはクリアになって、そして「文化をどう作れば良いか?」も分かるようになります!

組織文化とは

まずは「文化」の意味を調べてみましょう。

📕文化:① 〔culture〕社会を構成する人々によって習得・共有・伝達される行動様式ないし生活様式の総体。言語・習俗・道徳・宗教,種々の制度などはその具体例。(スーパー大辞林)

少し言葉が難しいですが、「行動様式」とはすなわち「行動パターン」ということ。文化研究に関する講義資料(内田勝教授)も参考にさせていただくと、文化の意味は以下の通りです。

文化=「集団に共通する行動パターン、またその背後の価値観のこと」

例えば「食器を持って食べる」というのは日本人に共通する行動パターンであり、風習であり、日本の文化ですね。

さて、では「組織文化」と呼ぶと何を指すのか?
学術的にはより詳しい定義があるものの(後述)、上の文化の定義をそのまま使って

組織文化=「その組織に共通する行動パターン、また価値観」

と言ってしまって良いでしょう。

例えば、僕が新卒入社したディー・エヌ・エーという会社には「ことに向かう」という「文化」がありました。「ことに向かう」とは、例えば仕事をするとき、自分の評価を気にしたり、上司へ配慮したり、ミスした部下を責めたりするのではなく、目標を達することだけに集中しろ!という意味です。ディー・エヌ・エーは多くの人がこれを体現している会社でしたし、すなわち「組織に共通する行動パターン」だったと思います。

文化研究の文脈で語られる文化の特徴として「集団の中にいる内は、自分たちの文化には気づけない」というものがあります。文化とは自分たちが当たり前と思っている行動・価値観であるため、自分たちには気づけない、ということですね。
「食器を持って食べる」ことが日本の文化であることに気づくには、外国の方がどうやって食事をしているかを知らないと気づけません。

これを逆に捉えると「自分たちが当たり前だと考えるようになったら文化である」と言えると考えます。文化とはその集団の「当たり前」である、ともいえますね。

ちなみに、細かいですが「クレド(行動指針)」や「バリュー(価値観)」は、「理想の組織文化を言語化したもの」であり、組織文化そのものではありません。
全従業員が当たり前にクレド(バリュー)を守れているときにクレドが組織文化を示していると言えるのであり、例えばクレドを全然守れていない企業ではクレドは組織文化ではありません。クレドはこの後説明する組織風土に含まれます。
DeNAのクレドはDeNA Qualityという形でまとめられており、ここに「ことに向かう」も含まれています。

組織風土とは

こちらも同じく、まずは風土の辞書の定義をみてみましょう。

📕風土土地の状態。住民の慣習や文化に影響を及ぼす,その土地の気候・地形・地質など。(スーパー大辞林)

風土=「土地の状態」

です。例えば「日本の風土」と言ったら四季があることや島国であることなどが挙げられるでしょう。

では「組織風土」とは何か?
これも組織文化と同じく学術的な議論があるのですがやや難しいので後述するとして、ここでは

組織風土=「組織の状態、すなわち仕事環境のこと。組織構造や制度、企業理念や雰囲気など

と定義します。例えば「縦割り組織」というのはその組織の構造であり、組織風土です。

ここまでの説明をまとめると、組織文化と組織風土の違いとは、

組織文化=個々人の「行動パターン・価値観」の集合
組織風土=個々人の行動や価値観などに影響を与える「仕事環境」

と言えるでしょう。そう、組織風土は組織文化に影響を与えます。次の段落で、これについて話しましょう。

※補足。「組織構造が風土なのはともかく、雰囲気や企業理念って風土なの?文化じゃないの?」と思った方。その疑問は尤もです。
実は学術的には「組織風土」と「組織文化」の違いは明確に議論されていない、または同じものと考える人もいるほど、この2つの概念の違いは曖昧です。「組織風土とは、組織文化のうちの目に見える事象のことである」と捉える立場もあります (Hofstead et al., 1990)。また世間的にも、この2つをほとんど同じものとして述べている場合が多いように感じられます。

究極的には、世間の人が同じ意味だと捉えているのであれば、同じ意味だとも言えるのかもしれません。しかし、「風土」「文化」の言葉の意味的にもやはりこの2つは違うものだと思いますし、近年の研究ではこの2つを分けて考えるべきという主張が多く存在します。これらについては、記事の最後で詳しく補足します。

風土が文化を作り上げる

先ほどの風土の定義をよく読むと、風土は住民の慣習や文化に影響を及ぼすと書いてあります。例えば、「はっきりとした四季(=日本の風土)が、情緒豊かな日本の文化を産んだ」と言う文章は自然なものかと思います。

組織風土についても、組織文化に影響を及ぼすものであると考えるのが自然でしょう。
すなわち、組織文化とは組織風土(=組織の構成、制度、雰囲気、企業理念etc…)から作られていくものである、と考えます。
別の言葉で言えば、その組織の様々な仕事環境から育まれていった従業員の価値観、行動パターンがその組織の文化である、と言えます。

「今のままの組織ではダメだ。組織文化を変える必要がある」なんてことを言う経営者は多いと思いますが、文化を変える方法がわかってない、ないし間違っている事例はよく耳にします。

風土と文化の関係性を分かっていれば、組織文化を変えたければ、社員の行動パターンが自然と変わるような仕組みを作らなければならないことが分かります。
例えば「積極的にチャレンジが生まれる文化」を作りたいのであれば「ミスが昇進に悪影響となる人事制度」は撤廃し「挑戦を賞賛する雰囲気」を作るべきですよね。

更に言えば、特にスタートアップのようなまだ小さな会社においては、導入する制度や、制度と言うほどでもない小さな仕組みさえもが、会社の文化を作っていくのだと強く意識する必要があるでしょう。
小さな例で言えば、例えば定例をシニアメンバーのみで行なってしまいジュニアメンバーはそこにいないとか、副業の人はSlackでシングルチャンネルゲストとして扱うとか、(もちろんこれらが悪いかどうかは時と場合によるものの)こういったところから「誰でも主体的に問題解決する組織文化」が生まれるのを邪魔しているのかもしれません。

組織文化と組織風土の特徴に着目すると、以下のようにも言えます。

組織文化:目に見えづらい、内面的、変えるのに時間がかかる
組織風土:目に見える、外面的、変えることができる

人の価値観を変えるのには長い時間がかかりますが、人を取り巻く環境を変えることはそう時間はかかりません。そして、人を取り巻く環境がその人の価値観を形成します。人の価値観を変えたければ、その人の周りの環境を変えるべきなのではないでしょうか。

終わりに:「文化は戦略に勝る」

マネジメントの父、ピーター・ドラッカーは "Culture eats strategy for breakfast." という言葉を残したとされています。この言葉はHow Google WorksMicrosoft 再始動する最強企業でも引用され、Googleの強みとして、またMicrosoftが再び盛り上がりをみせた原動力として「文化」が紹介されています。

事業とは人が生み出すものであり、経営者の仕事は人が働きやすい環境を作ることです。組織文化の重要性は言うまでもないかと思いますが、「組織風土」を意識しながら、いかに文化を作っていくかを考えていくと良いのではないでしょうか。

※この記事では「文化は風土が作る」と結論づけましたが、「リーダーが価値観を発信し続けること」も文化形成には非常に大切です。これについて、また今度記事を書こうと思います!

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【参考】既存研究の紹介

記事中では分かりやすさを重視して「文化」「風土」の辞書上での意味の記述をベースに組織文化と組織風土について語りましたが、両者は学術的にも研究がなされているテーマになります。ここでは簡単に既存研究について触れましょう。

組織風土の研究は1950年代より始まったと考えられています。Litwin and Stringer(1968) は、組織風土を「仕事環境で生活し、活動している人が、
直接的にあるいは間接的に認知し、メンバーのモチベーションや行動に影響を及ぼすと考えられる一連の仕事環境の測定可能な特性」
と定義しており、辞書などではこの定義が引用されることが多いようです。
福間(2006)は、1950年代に始まった組織風土論研究は、50年間の間に様々な研究が行われたが、しかしながら体系化が十分に進まなかったと指摘しています。そのため、年月を経ても現在でも「組織風土と組織文化は何が違うのか」といった問題提起が何度も繰り返されていると述べています。
この問題の1つの要因は、それぞれの論文の問題意識が異なるためであり、例えば1970年代以前の研究は「組織内部の統合を高めるために、いかに組織風土を管理すべきか」という問題意識であり、従業員のモチベーションに重点を置いていたのに対し、1980年代以降の研究は「高い業績を達成するために組織風土をいかに活用するか」という問題意識のもと、会社の業績や成果などの指標を取り上げていたためだと福間(2006)は述べています。

一方の組織文化はというと、 Schein(1985)「所与の集団が外部的適応と内部的統合の諸問題を処理することを学習するにつれて,その集団によって生み出され、発見され、展開された基本的仮定の1つのパターンである」と定義しています。
結局のところ、組織風土と組織文化の違いは何なのかと言うと、両者を区別していない研究があったり(Schneider, 2000)、両者は全く異なる概念であるとする立場もあったりと一貫していません(Glisson & James, 2002; Schein, 2000)。西田(2017)によると「組織風土は社会心理学における心理的風土を理論的基礎としており、産業・組織心理学組織行動論の分野で長い歴史が存在している」「それに対して組織文化は文化人類学の理論を基礎としている」とし、理論背景の違いよる差異があると指摘しています。

このように既存研究では統一された定義がないものの、既存研究で共通して見られる差異として、組織風土は組織の価値体系に基づく組織環境を対象とし、組織文化は組織メンバーによって共有される価値や信条・仮定を対象としているという差異があります。この記事ではこの点に着目し、最大公約数的な定義を使い、分かりやすさを重視して説明させて頂きました。
間違っている点など、ぜひご指摘ください!

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