成長

いたるところで、何度も書いている(話している)事を書きます。

それは『ビーチボーイズ』めっちゃええねん。ってことです。(関西弁)

『ビーチボーイズ』というのはだね、かつてフジテレビで放送されていた伝説的な(俺の中では伝説)ドラマで、反町、竹ノ内、広末、マイク真木、稲盛いずみ等々、豪華キャストで送られたまぁなんとも秀逸なドラマです。脚本は岡田恵和。

このドラマのどこが、なぜいいのかという話をはじめると、やたらと長くなってしまうので、今日は成長というテーマに合わせてひとつだけ。

ドラマの中で反町隆扮する桜井という男は、元水泳のオリンピック候補にまで上り詰めたスイマーです。第5話、元ライバルスイマーであった山本太郎(役名:清水)が反町と再び水泳対決をするという回。話の流れとしては、桜井は完全に引退した選手であり、清水は今なお水泳に情熱を燃やし続けている。要は、引退してなんにもトレーニングしていないかつての英才(桜井)と、今なお汗水たらして日々をもがいている努力の男(清水)の対決なわけだ。仮にドラマを見ていないけれど、これを読んでいる方がもしいたら尋ねたいのだが、どちらが勝つと思いますか?

勝つのは、清水である。

才能あふれる物語の主人公が、嫌味な泥臭い努力男に負けるシーンが当時、中学生であった僕の心にえも言えぬ感情を残したのだが、みなさんはこの話に共感するだろうか。

物語の主人公と言えば、才能あふれ、闊達で、大事な場面ではぎりぎりで勝利するはずなのだ。それがどんなに不利な状況であったとしても。それがヒーローがすることだ。しかし、この回で桜井は負ける。そして、後回でマイク真木扮する民宿の社長(役名は和泉 勝)は、「お前は偉かったな。ただのバカになって。あそこでしっかりと勝負して負けて偉かったよ」と、語る。この言葉の意味がわかるだろうか?僕にはわからなかった。「なんだそれ、ヒーローなら勝って欲しかったよ。」という一抹の残悔がちらつく。

あの頃にはわからなかったけど、今は桜井の格好よさがわかる。おおよそ負けるとわかっている試合、おそらく恥をさらすことになるであろう場面、そしてそれをみんなに悟られてしまうであろう場面でしっかり負けるというのは大切なことなのだ。他人から期待視されているものを手放して、本当にありのままの自分として存在する為に、時に人はリアルな現在地を知るべきなのだ。自分自身に対しても、他者に対しても。その差が開けば、開くほど、自分の人生からは離れてゆくだろう。そして、リアルに現在地を特定するというのはたまらなく嫌であったり、精神的抵抗が生じるものである。(たいがいにして)

だからこそ、そこで、試合に赴いて、しっかりと勝負し、結果を明らかにした桜井は格好いいのである。そこには勝敗とは別の、成長姿勢の美学がある。

ぼくは自分の現在地を吐露する人間を決して無下にしないようにしたいと思っています。僕自身がそうするのには果てしなく勇気を使うので。内容がどうであれ、その正直な観察と態度には常に敬意を持ちたいのです。

そういう態度を選べる、見守れる人でありたいなと思います。

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