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Live in Hiratsuka #1

神奈川県平塚市。
ここで暮らしはじめて10ヶ月ほどが経つ。
数年前に友人のひとり(藤咲和也)が平塚に越したことで私はこの町に縁を持って。何度か遊びに来る間にいつのまにか知り合いが増え、去年末に私もここに越してきた。


平塚駅の南口を出ると、
どこの田舎の駅にもあるようなロータリーとチェーン店という風景がある。
ただし、流れて来る風や空気には海が近いことを予感させる何かが入っていて、気持ちがすこし浮かれる。
おって、空の広さに気がつき、さらによく見ると、駅前の噴水の中のマーメイド像が目に入る。また少し浮かれる。


駅から海までは、まっすぐに大きな通りがのびている。
通りの両サイドには美味しいパン屋さんや、洒落た個人経営のレストランなんかがポツポツとあったりする。ポツポツあるというのがポイントで、とてもたくさんあるわけじゃない。
平塚は他の湘南の街と違って、ちょっとだけのおしゃれだ。(湘南の中でもっとも田舎とも言う)

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「友達と暮らしている。」と話すと、
「シェアハウス?」と訊かれる。
シェアハウスはしていなく。(シェアカーならしているけど)

わりと近所に十数人友人が住んでいて(それぞれは一人暮らしだったり、夫婦、家族で暮らしている)、地域にもちょこちょこ知り合いがいるといった具合。
まぁ、「ご近所づきあいが盛んなんです。」と、説明してしまってもいいのかもしれない。

ただ、それではあまり上手くこの暮らしのことを説明できている気がせず。
その”説明できなさ”によって、私は本稿を書いている。
改めて、ここに住む人たちに話をききながら、この暮らしの成り立ちや構造、楽しさを発見してみたい。

”平塚”というと結構広いけど(人口は25万人)、正確には平塚市の南に位置するいくつかの町内。そこで暮らす人たちの話。となる。

同じ町内にいろんな仲間が住むようになった経緯。
まずはそのあたりの話から。

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-今回、話を聞いた人-
秋濱克大さん(彫金作家)
ちなみに好きな本は『アミ小さな宇宙人』

藤咲和也(革作家)
ちなみに好きな本は『アルケミスト』

大和田いずみさん(画家)
ちなみに好きな本は『強く生きる言葉』
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※改めて書く際に普段と違う呼び方も不自然だったので、基本的には普段の呼び方でそのまま書いてます。

はじまりの、はじまり。

−今の状態(いろんな人が近くに住んでいて交流が多い状態)は、最初は和也を呼んだことがきっかけかな?

秋濱さん
「うん。そうだね。」

−じゃあその時のことを教えてください。

秋濱さん
「その時、僕は平塚市内の別の場所に住んでいて。今、住居兼アトリエとして使っているここをアトリエとしてだけ使うという生活で、部屋もふたつあるし、誰かとここをシェアできないかな?と思ったんだよね。そうすると家賃的にも助かるし。そのときに、藤咲君のことがすぐ頭に浮かんで」

−秋濱さんから連絡をもらって、和也はどう思ったの?

和也
「おぉ!と思って、たしか1日考えて。平塚に行った場合と、行かなかった場合どんな展開になるか書き出したりして。で、行くほうが面白いことが起こりそうって思って。むしろ俺はノーリスクだけど、秋濱さんのほうがリスクあるなぁと思った。やってみてダメなら俺はどっか移ればいいけど、秋濱さんはもともと居る場所に俺を呼ぶわけだから。ずっと神奈川にいきたいとも思っていたし、チャンスだと思ったなぁ。」

2014年12月16日。
和也が(埼玉から)平塚に居を移し、現在の秋濱さんの住居兼アトリエとなっている部屋をふたりで使いはじめる。

アトリエを共同で使うと同時に、秋濱さんと和也は、ふたりでF lineというブランド名で作品を作るようになった。
2人の初期の作品。和也が創った財布。金具を秋濱さんが創り、前面には大きな羽の刻印を入れた。ボタン部分にも羽根が彫ってある。

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割とスピーディーに事態は展開する。
画家の大和田いずみさんがこの財布を買ったのだ。

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こうも芸術家ばかり近くに住んでいるものかと思うけれど、
2015年5月8日。同じ町内に住んでいた、いずみさんがSNSで青い財布を見て、2人のアトリエを訪れる。その場で財布を購入し、同タイミングで、「2人がつくったものにペイントさせてほしい」と申し出る。

秋濱さんと和也は、革のハギレをいずみさんに渡し、「ひとまずここにペイントしてみて下さい」と伝える。そうすると翌日には、いずみさんがペイントしたハギレを持って2人のアトリエを再訪。

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(写真は、いずみさんが最初にペイントしたハギレ。ダリアが描かれている。今回、記事を書くにあたって発掘。)

これに端を発し、F lineは現在のカタチ(和也が成形と縫製、秋濱さんがパーツと刻印、いずみさんがペイント)となる。
以後、伊勢丹の展示販売会で華々しいデビューを飾るなど、今日まで3人での共作は続いている。


今、いろんな人がこの町に住むようになっているファーストフェーズはこのF line結成に至る流れだろう。

秋濱さんが和也を呼び、財布を作り、
いずみさんが財布を買いにきて、今度は3人で共作するようになる。

さらに、3人それぞれを訪ねて、お客さんや友人がかわるがわるアトリエに遊びに来るようになり、人の流れが発生しだす。

私はこの話を聞くと、竜巻の話を連想する。
2人のやりとりの往復は線だけど、3人のパス回しは渦になる。
3人が生成した渦は、様々なものをひきつけはじめる。

アトリエという空間性も絶妙で。
完全に家(プライベート)ではなく、かといって店というわけでもなく。家とカフェと遊び場と仕事場を足して4で割ったような滞在のしやすさと面白さがある。

F lineの3人には明るいエネルギーがある。
有り体だけど、ポジティブというかハッピーというか。そういう類の。

もちろんいつでもそんな状態でいるわけじゃないのは知っているけれど、空間や関係性に明るいものをもたらすようなひらけた感じが3人にはあると思う。それが作品からも放出されているので、彼らの顧客も彼らも嬉しそうにみえる。

ひとつの思いつきが、ひとつのメールが、ひとつの買い物が。事態を動かしていくインシデントになりえる。何かが駆動しはじめるレバーはけっこう日常に転がっているものなのかもしれない。3人の話をきいているとそんなことを思う。


さて、次回は、3人がつくり始めた渦が実際に人を巻き込みはじめ、何人かの人が越してくるあたりまでを書く。


2019年10月、秋濱さんのアトリエにて。(左から和也、いずみさん、秋濱さん。)

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