ゲームにおける運と知識のバランス

記事の前半は真面目です。記事の後半は子供時代のテレビゲームの思い出話を書いてるだけです。今日はチームメンバーと熱い議論になったことを書きます。

今振り返るとたぶんどちらも言ってることは正しいです。お互いに意見を理解したとき、完全に話し合いの進展が滞ってしまったのでそういうことです。

今はデザインスプリントという5日間の集中ワークショップをやっています。今日は4日目です。アイデアが決まり、プロトタイプをグループで作っていました。

あるわかりにくい概念をユーザーに学んでもらうために、ボードゲームを提案することとなりました。数人でスゴロク形式のボードゲームを遊ぶことで楽しみながら概念を獲得してもらおうという提案です。

議論の的は教育のゲーミフィケーションについてです。教育を目的とした、数人で遊ぶボードゲームのルールを話し合っていて議論になりました。ゲームの勝負を分ける要素は「運」であるべきか、それとも「知識」であるべきかという議論です。

議論の発端は、スゴロク形式において、あるマスに止まった時に強制的に失点させるべきか否かという話でした。スゴロクはダイスを振って出た目の数だけ進むので、どのマスに止まるかは完全に運です。つまりこのマスでの失点につながる要素は運の良し悪しのみとなります。

ぼくの意見は運の良し悪しで失点させるべきではない方でした。理由は提案の大元は「ユーザーの教育」だからです。勝負を分ける要素は「知識」であるべきであり、対象の概念をより理解した(知識を身に付けた)プレイヤーが勝つべきだと意見しました。つまり、完全に「運」で失点することが決まるのではなく、「知識」により失点を回避できるようにすべきだということです。

しかしこれに対するチームメンバーからの反論は的を射ていました。勝負を分ける要素を「知識」のみとしたときのデメリットは、1回でもプレイしたことがあれば(記憶力が悪くない限り)2回目以降誰も失点しなくなることです。確かにゲームとしての面白さが失われます。

勝負の要素に「運」を入れた場合、初心者でも経験者に勝てるようになり、経験の有無に関係のない劇的な逆転勝利を演出できます。たしかにゲームの面白さのキーポイントになります。しかし、経験者の立場から見ると今度は「知識」を持っていてもそれが一切活かされずに失点してしまうことがあります。

特に「ユーザーの教育」が提案の大元である以上、身についている知識が活かされずに失点するのはかなりストレスフルになるでしょう。しかし運要素も入れないと、ゲームとしての楽しさは担保されない。議論が煮詰まってしまいました。

結局先生からの提案で議論は解決しました。運の要素を入れつつ、ユーザーには運要素の前に「選択」をさせ、もし運が悪くてもユーザーは自分の選択を後悔するような設計になりました。今考えてみると人生ゲームをはじめとしたスゴロクボードゲームはこのような「ルート選択」と「運」を組み合わせた設計になっています。選択肢は「リスキー(運要素が多い)だけど早い」か「安定だけど遅い」のどちらかが多いです。

最終的に、提案するボードゲーム中には「知識」を試すイベントマスは満遍なく配置され、「運」を試すイベントマス(止まればほぼ失点する)は近道を選んだ時により多く遭遇するように配置されました。これでやっと「知識」要素と「運」要素の両立ができました。

真面目な話は終わりです。

「知識」要素は「経験の差」とも言えます。対戦型のゲームでは、「運」と「経験の差」の2つのバランスをとる必要があります。マリオカートなんかはすごく上手いバランスだと思います。アイテムさえなければただの「経験の差」のレーシングゲームになり、テクニックの優れたプレイヤーが必ず勝ちます。キラーが出てくれるかもしれない、誰かがトゲゾーを投げてくれるかもしれない、という「運」要素があるからこそ、最後まで勝負が白熱します。でもどこかしらに固定要素がないと、ユーザーは自分が上達していることを認識できません。だからコースの形状は固定です。

少しマイナーなゲームですが、子供のとき「スターフォックスアサルト」というGCのゲームで友達と対戦していました。箱庭型のステージで、様々な武器アイテムを集め、地形を利用しつつ武器を使い分けながら相手をシューティングし倒すというものでした。こちらのゲームは殴り合い系の対戦ゲームとしては当時スマブラと同じくらいに盛り上がっていました。しかし、スマブラやマリカーよりも如実に勝率の個人差が出ました。

理由の一つはアイテム配置が固定であることです。各ステージにおいて、どの位置にどのアイテムが出現するかは毎回固定で、配置を覚えた奴が必ずそのアイテムを先にゲットできるのです。もちろん強い武器を手に入れた奴が無双できます。「運」よりも「経験の差」が上回るということです。きっとスターフォックスの開発陣もアイテム配置を固定にするかランダムにするかで議論になったことでしょう。

思い出すとスマブラでも、子供ながらに「ガチ実力で勝負するぞ!」ってときは無意識にアイテム出現無しにしていました。(スマッシュボールも無しにしていました、出現位置が不定だったので。)考えれば当たり前なんですが、実力勝負において最も邪魔なことはランダム要素です。最近のマイブームはアクションRPGのゲームのRTA(Real Time Attack)を視聴することなのですが、ゲームのRTA界でも乱数が使われるイベントはRTA走者に非常に嫌われています。その一方、「最後のあの場面で良い乱数が引けるかもしれない...」と考えることが、最後まで走り切るモチベーションになっています。

雑なまとめとなりますが、「運」と「ユーザーの選択」を絡ませながらゲームに取り入れることで、「経験の差」による最初から結果の分かり切った勝敗を良い具合に打ち消すことができます。特にユーザーの感情面において「運」は最後まで何かを続けるための大きな支えになります。しかし必ず「ユーザーの選択」を絡ませないと、ユーザーはただただ理不尽さを感じるだけです。

お疲れ様でした。

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