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マンガ版電子書籍化記念 『オナニーマスター黒沢』 原作者コメンタリー(1/4)

 マンガ版『オナニーマスター黒沢』の電子書籍化を記念したコメンタリーです。
 本稿では同第一巻の内容を解説しています。

 また、『オナニーマスター黒沢』(以下、オナマス)には複数のバージョンが存在するため、ここでは横断的にそれらすべてをあつかっています。
 下記にざっくりまとめました。

・小説版(原作は新都社『文芸新都』で連載。のちに『キャッチャー・イン・ザ・トイレット!』と改題し単行本化、加筆修正を加えて文庫化)
・マンガ版(原作のコミカライズ。新都社『週刊ヤングVIP』および第四十工房で連載。公開停止後、ニコニコ静画『月刊のアクション』で再公開)
・オーディオドラマ版(制作者が行方不明)

 時系列はこちらをご参照ください。

第一発『めぐりあい、女子トイレ』(原作:第一発〜第二発)
 原作の第一発を公開した時点ではその後のストーリー展開はまったくの白紙でした。なんならヒロインの名前(北原綾)も白紙でした。掃除用具の詰め替えをしていたという黒沢の言いわけは伏線になっていますが、僕もあとから「伏線やったんかいワレ!」と驚きました。こういう見切り発車が許されるのは投稿サイトのいいところですね。
 サブタイトルは『機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙』のパロディです。

第二発『さいしょのおかず』(原作:第三発〜第四発)
 主要なキャラクターがほぼ出そろう回です。
 小林隆太は当時『VIP STAR』で人気を集めていたkobaryu氏が名前の元ネタになっていて、自己紹介で平井堅の歌をうたっているのはそのためです。ニコニコ静画でのマンガ版再公開にあたっては担当編集者さんから待ったがかかり、YOKO先生と協議して該当のコマを修正しました。ぜんぶジャス●ックが悪い。
 北原の自己紹介は当時放送されていた某人材派遣会社のテレビコマーシャルが元ネタです。

第三発『人気者と、嫌われ者と』(原作:第五発)
 須川がカフェラテ茶漬けという画期的な創作料理を披露する回です。
 原作連載時はこのあたりからストーリー展開の青写真ができあがったような気がします。また、原作の単行本および文庫本では「セーラー服色情飼育」「完全なる飼育」という言葉が本文に出てきますが、これらのワードはいずれも同名の映画から拝借しました。

第四発『ピザ太をめぐるアクシデント』(原作:第六発)
 マンガ版ではこのエピソードから原作にない小ネタが少しずつ増えてきます。
 いじめの描写に関しては、原作連載時から現在にいたるまでさまざまなご意見をいただきました。「手拍子を打っていたクラスメイトたちも罰せられるべき」「主犯格の須川たちが平然と学校生活を送っているのが許せない」という声もありましたが、残念ながらオナマスはそういう話ではありません。黒沢翔という少年がオナニーを武器に戦う学園バトルモノだと思ってください。

第五発『白濁(しろ)き制裁』(原作:第七発)
 黒沢が早起きして二発抜く回です。なんとなくハウダニットっぽいノリになっています。
 小窓から無人の教室に侵入するのは僕が通っていた中学校で実際に見られた光景です。セキュリティガバガバでした。

第六発『黒沢のブルーマンデー』(原作:第八発)
 野宮先生は僕が中学二、三年生のころの担任をモデルにしています。オーディオドラマ版のキャラクター紹介では野宮先生の担当教科は地理となっていますが、あれは僕のミスで、正しくは体育です。
 サブタイトルはNew Orderの楽曲『Blue Monday』から。サブタイトルを考えるのは楽しいのですが苦手で、このような借用が目立ちます。

第七発『キャッチャー・イン・ザ・女子トイレ!』(原作:第九発)
 北原の「私は女子トイレの捕まえ役になりたいのよ」という台詞や文庫版のタイトルはJ.D.サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』(原題『The Catcher in the Rye』)へのオマージュです。もしかしたら黒沢翔というキャラクターにもホールデン少年の影響があるかもしれません。

第八発『雨の日の出来事』(原作:第十発)
 文庫版では黒沢と滝川の対比を明確にするためサブタイトルを変更しています。また、冒頭に加筆しています。
 図書室の場面ではなつかしの吉野家コピペが出てきます。オナマスを連載していた新都社はニュース速報VIPに由来する投稿サイトですので、当時2ちゃんねるで使われていたインターネット・ミームをちょこちょこ盛りこんでいます。

こぼれ話
 マンガ版のキャラクターデザインは、僕が原作連載時に公開していた自作のイラストや、新都社の読者ページに寄せられたファンアートがもとになっています。
しかし長岡だけはそれまであまりビジュアル化されておらず、YOKO先生からデザイン案をもらったときは正直驚きました。ただ受け入れるのに時間はかかりませんでしたし、あのデザインだからこそ読者に愛されるキャラクターに育ったと思っています。

 次回につづきます。

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