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マンガ版電子書籍化記念『オナニーマスター黒沢』原作者コメンタリー(2/4)

 マンガ版『オナニーマスター黒沢』の電子書籍化を記念したコメンタリーの第二弾です。
 本稿では同第二巻の内容をあつかっています。なお、本編のネタバレをふくみますので未読のかたはご注意ください。

第九発『オナニストの休息』(原作:第十一発)
 第八発に引きつづき滝川をフィーチャーした回です。
 滝川マギステルという名前は『魔法先生ネギま!』の「立派な魔法使い(マギステル・マギ)」から。『魔法先生ネギま!』はニュース速報VIPとかかわりが深く、ゼロ年代前半のサブカルチャーを語る上では欠くことのできない作品です。僕も『ハッピー☆マテリアル』のCD三枚買いました。

第十発『黒沢翔の退屈』(原作:第十二発)
 修学旅行回その一。マンガ版連載時、YOKO先生は資料集めのため実際に奈良と京都まで足を運ばれたそうです。
 近畿二府四県で定番の修学旅行先といえば京都ですが、黒沢たちの中学校の旅程には組みこまれていません。これは原作を連載していた当時僕が京都に通じていなかったためで、京女に捨てられたとか、先斗町でぼったくられたとか、決してそのような事情ではございません。京都のみなさん、ごめんどすえ。

第十一発『対話篇上空112.5m』(原作:第十二発〜第十三発)
 修学旅行回その二。このエピソードと体育祭のエピソードで北原をポニーテールにしたことはYOKO先生が成した偉大な仕事のひとつと言えます。
 文庫版では黒沢が教師に扮して屋代摩子に生徒指導をおこなう描写を加筆しています。不良娘三人組のなかで彼女だけ影が薄かったので。
 サブタイトルはプラトンの『対話篇』がもとになっていますが、直接の影響は金城一紀氏の同名作品からです。

第十二発『負け戦』(原作:第十三発)
 修学旅行回その三。滝川と北原がジュラシック・パーク・ザ・ライドでめっちゃ濡れます(YOKO先生はあまり濡れなかったそうです)。
 みっくんこと山田光義のキャラクターは『トリビアの泉 ~素晴らしきムダ知識~』に出演していた同名の役者のパロディです。というかほぼそのままです。興味があるかたは「トリビア 不良」で検索してみてください。マンガ版のキャラクターデザインが特攻(ぶっこ)んでいるのはYOKO先生のアイディアです。

第十三発『幕間劇』(原作:第十四発)
 貴重な水着回です。ブーメランパンツを履いた黒沢も拝めます。
 黒沢が日課をおえたあとの「オシャレ……完了……」という台詞は新都社の黎明期を支えた伝説的な作品『腐った果実』へのオマージュです。インディー作品からの引用になりますので、文庫版では文言を修正しました。

第十四発『ハートビート下半身』(原作:第十四発〜第十五発)
 黒沢とSOS団のメンバーが『ハレ晴レユカイ』をおどる回です。
 ここでもやはりニコニコ静画でのマンガ版再公開にあたって担当さんから待ったがかかり、該当の場面を修正しています。未修正のバージョンが読めるのはマンガ版連載終了後の無料ダウンロード期間にダウンロードした人だけです。どう考えてもぜんぶジャ●ラックが悪い。
 劇中劇として登場する映画はかつて新都社で連載されていた石先生の『レズノート』という作品です。

第十五発『イチモツの鼓動は愛』(原作:第十五発)
 散歩の楽しさに目覚めた黒沢がめちゃくちゃ日焼けします。
 このエピソードで初登場となる黒沢の妹は小学六年生であびるという名前です。原作では名無しだったのですが、コミカライズに際してYOKO先生がつけてくれました。突き抜けたネーミングセンスです。
 サブタイトルは『機動戦士ΖガンダムⅢ -星の鼓動は愛-』から。

第十六発『人気者のひみつ』(原作:第十六発)
 物語の大きな転換点となる回です。マンガ版の回想シーンにあたるコマではロリ川マギステルが描かれます。
 滝川の過去は原作のこのエピソードを執筆中に思いついたあとづけの設定です。おかげで文庫版で本文を修正するのに苦労しました。

こぼれ話
 僕がYOKO先生とはじめてお会いしたのはマンガ版の第十四発が公開されて間もないころだったと記憶しています。そのときこの巻に収録されている第十五発のネームを見せてもらい、以降は毎週最新話のネームが送られてくるようになりました。
 ですがこちらから修正の指示を出したことは一度もありません。原作者としての仕事(でもありませんが)をサボっていたわけではなく、その必要がなかったからです。おそらくYOKO先生は僕以上に原作を読みこんでいたと思います。それは原作とマンガ版を読み比べながら文庫化の加筆修正作業をしているときにも感じました。
 ヨイショみたいになってしまいましたが事実です。いまでもYOKO先生という職人から学ぶことは多いです。

 次回につづきます。

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