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『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第10巻原作者コメンタリー

 『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』第10巻の発売を記念した原作者コメンタリーです。
 第9巻のコメンタリーはこちら

第37話『俺たちの新時代(後編)』
 ページ数が過去最長となったエピソードです。過密スケジュールのなか作画してくださった横田卓馬先生、心底有難(マジアザ)っス。

 レイモンドのR.O.P.は、厳密にはピリオドを用いずに「ROP」と表記します。テフェリーっぽいキャラクターにテフェリーっぽい色構成のデッキを使わせたくて、パララクス補充の出現を待たずにこちらのデッキを取り上げることにしました。「I Know my responsibilities!」や幕間のひとコママンガに出てくる「Keep up the Pace!」といった台詞もテフェリーを意識したものです。長く『マジック:ザ・ギャザリング アリーナ』を遊んでいる人は聞き覚えがあるのでは。
 この回で「領域」という概念が出てきますが、これはスポーツ分野におけるゾーンのようなものだとお考えください。領域だからと言って術式に必中効果は付与されませんし、対戦相手の術式も相殺できません。いまのところ超能力バトルをやるつもりはないです。
 ところで、こちらのミスにより月刊少年エース本誌では《補充》がソーサリーではなくインスタントと誤記されていました。指摘してくださったみなさま、心底有難(マジアザ)っス。

第38話『俺たちの祈り』
 七夕回です。この回を最後に、読切のころから並走してくださった担当さんが作品をはなれました。新天地でのご活躍をお祈り申し上げます。
 連載初期の沢渡理慧(慧美ママ)の設定に関するメモには、「娘の教育に厳しいが、その実慧美を溺愛しており」、「「慧美ちゃんがいないと生きていけない」が口癖」「慧美に服を買ってあげるのが人生で一番の楽しみ」といった記述があります。その後、横田先生の単著『ポンコツ風紀委員とスカート丈が不適切なJKの話』にも娘を溺愛するお母さんが登場しまして、キャラ被りを避けるため西住しほ路線に変更しました。常夫さん……ごめんなさい……。

 コマ枠外にも記載があるように、詰めマジックの問題は『GAMEぎゃざ』1999年9月号の『マジック:ザ・ギャザリング 実践魔道師養成講座 次の一手』に掲載されていたものです。本当は自分で問題を考えたかったのですが、時間的制約により断念しました。インディアン・マジックも『RPGマガジン12月号別冊 ドミニアへの招待』掲載の『気分を変えて!さまざまな〝マジック”の楽しみ方……』という記事で紹介されていた遊びかたですね。どちらの記事も執筆者は朱鷺田祐介(スザク・ゲームズ)さんです。

第39話『俺たちの憂鬱』
 このエピソードから修学旅行編に入ります。冒頭で『マジック:ザ・ギャザリング』の黎明期に人気を博したイラストレーターを数名紹介していますが、《意志の力》が働いて紹介できなかったかたもいます。
 動物占いはこの年の一大ムーブメントでした。性格傾向をグループ別、色別に分けるという手法は、近年はやりのパーソナルカラー診断(イエベ春とかそういうやつ)に似ているかもしれませんね。「悲しいときー!」のくだりはお笑いコンビのいつもここからのネタ。野宮の「飲もう!! 今日はとことん盛り上がろう!」という台詞は森高千里の『気分爽快』からの引用です。こちらはビールのコマーシャルソングとしてお茶の間に浸透していました。また、はじめたちが宿泊している「HOTEL FUTURE CAPITAL」というホテルは架空の施設で、つぼイノリオの『名古屋はええよ!やっとかめ』の歌詞が名前の元ネタになっています。

 『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』はラブコメとしては硬派な部類だと思います。だからこそ、「いきなり入浴シーンぶちこんだらみんな驚くやろなあ……(ニチャア)」という浅はかな発想で入浴シーンを書いたのですが、またもや《意志の力》が働いて、女子はバスタオル着用となりました。直接の関係者はみな理解を示してくれたことをここに書き添えておきます。

第40話『俺たちの邂逅(前編)』
 久遠との連続バトルの前編です。史上もっともメインヒロインの出番が少ない回でもあります。扉絵は横田先生に布袋寅泰の『バンビーナ』をイメージして描いてもらいました。
 はじめが神納家の家訓を復唱しているシーンは『めちゃ×2イケてるッ!』内の人気コーナー『爆裂お父さん』のパロディです。KinKi KidsがMCをしていた番組のタイトルもさりげなく出てきますが、みなさまお気づきでしたか?
 志摩スペイン村の噴水は九十年代には存在しなかったようです。周央サンゴさんが本作を読んでいたらツッコミを受けそうですが、それはそれ、ということで。補足しておくと、周央サンゴさんはこのエピソードが月刊少年エース本誌に掲載される少し前に志摩スペイン村をバズらせたバーチャルライバーさんです。

 カササギブルーは僕も中学生のころ実際に使っていたデッキです。《泥棒カササギ》で《禁止》のバイバック・コストを稼ぐ、通してしまったアーティファクトとクリーチャーは《火薬樽》で流す、といった戦いかたができます。同じくドローに長けたエンチャントレスとの対決の行方は、次巻をお待ちください。

こぼれ話
 読切のころから、新出の『マジック:ザ・ギャザリング』関連用語にはかならず注釈をつけるようにしています。もちろん未経験者への配慮からそうしているのですが、これがなかなかなくならない。この巻収録の第38話で、ようやく注釈がゼロになりました。
 関連用語のほかにも、『マジック:ザ・ギャザリング』には「プレインズウォーカー構文」とでも呼ぶべき独特の言いまわしがあります。カードショップで「セットランド、コンバット入ります。ブロック指定まで。3コスでスペル唱えたいです。通りますか?」というような言いまわしを聞いたことはないでしょうか? あれは未経験者には奇異に感じられると思うので、作中ではやらないようにしています。みなさまも初心者と対戦する際は気をつけてあげてください。
 話は戻って注釈です。数えてみたら、この巻までで合計百七十一個の注釈がありました。未経験者でも、注釈まで熱心に読めば一冊あたり十七の関連用語を覚えられる計算ですね(そんな人はあまりいないと思いますが)。
 これからも別名『マンガでわかる! マジック:ザ・ギャザリング大辞典』として、本作の執筆に励む所存です。

 てな感じで第10巻でした。
 制作にご協力いただいた名古屋城、博物館明治村、鳥羽水族館、志摩スペイン村、ミキモト真珠島の関係者のみなさまに、この場を借りて御礼申し上げます。
 コミックスのカバーをはずしたところにあるスペシャルサンクスの欄がだんだん豪華になってきましたね。最終的に東○義和の告発リストくらい長くなるんじゃないでしょうか。
 それではまた次巻で。

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