子育て中はダサくなる(もしくは、プレゼント・イズ・ナウ)【#アドカレ2015】


「6年生まで使うんだからね? ちゃんと大人になっても使えるものを選びなさいね?」

母はそう言った。母はそう言ったのに、僕が小学校1年生のときに選んだ学習机は、ウルトラマンがスペシウム光線を放っているものだった。

6歳児に「自分が生きてきた時間と同じ年数分、未来を考えろ」と言っても、なかなか伝わらないものである。むしろ当時9歳だった兄が、きちんと世界地図が描かれた勉強机を選んでいたのが、今となっては不思議なくらいだ。

6年後、12歳になった僕は6年まえの自分を恨みながら、ウルトラマンを隠すために必死に机をデコレーションする。好きなミュージシャンのポスターを切っては貼り、それでも隠せない部分には、ペン立てや貯金箱を置いてごまかした。

後悔は先に立たない。でも、あれほど母の教えを守ればよかったと思う出来事も、あまりない。



あれから17年が経ち、僕は29歳になった。

いま、我が家で話題になっているのは、家じゅうにある「角(かど)」だ。

子どもが生後11カ月を迎え、ハイハイをするようになった。異常なほどに狭い視野で家じゅうを這いずり回る彼にとって、クローゼットやテレビ台、テーブルの脚などの「角」は、全て凶器となる。

「ケガをすると危ないから、角にはぜんぶ、クッションをつけよう」

妻の提案によって我が家にやってきたカバーは、確かに柔らかくて安心なものだった。しかし、僕が23年まえと同じように「絶対にこれがいい」とダダをこねて買った「白のガラスでできた大きなダイニングテーブル」には、どう考えてもクッションなど似合わないのである。

「ぜったいにテレビと合う」と思って買った「光沢のある真っ黒なテレビラック」の角にも、茶色のクッションカバーは、似合わないと思うのである。



「雑誌に出てくるような、スタイリッシュな子育てをしたい」

そう思ったものだった。うちの子はアンパンマンなんて好きにならないし、北欧のおもちゃでしか遊ばない。機関車トーマスなんて見向きもしないし、プラレールなんて騒音にしか思わないだろう。そう思ったものだった。

でも、いま、僕の買った「光沢のある真っ黒なテレビラック(クッションつき)」の上には、「はらぺこ青むし」や「ノンタンといっしょ」といった絵本がズラリと並び、プラレールや機関車トーマスのゼンマイ式おもちゃが無造作に積まれている。

ハイハイしながら笑顔で近づいてくる子どもの靴下には、かわいすぎるライオンのイラストが描かれているし、我が家に「北欧のおもちゃ」なんて、一つも置いていないのである。



ある日、妻が友人の結婚式に参列した。

付き添いで僕と子どもは式場の近くで待機していたが、二次会にも参加するというので、僕は先に子どもを連れて帰ることになった。

僕は今シーズン買ったばかりのお気に入りのモッズコートに、スキニージーンズを合わせていた。帰りは、そこに抱っこひもとベビーカー(引き出物アリ)というオプションが乗っかっている。

スタイリッシュな恵比寿駅に止まった山手線はとても混雑しているが、「モッズコート・抱っこひもベビーカーおじさん」はその中に突っ込んでいくのである。

満員に近い車内の空気は重く、場所を取りすぎている僕はどことなく罪悪感を覚える。子どもも、どこかバツが悪そうな顔をしている。車窓に映った「モッズコート・抱っこひもベビーカーおじさん」は、スタイリッシュとは程遠い存在としてそこに立っていたのである。



現実とは、そんなものなのだろうな。

あたり前のようにそれを受け入れる自分がいる。23年前、ウルトラマンを選んだ自分は、23年後、「モッズコート・抱っこひもベビーカーおじさん」として相変わらずの日々を過ごしている。

ツモリチサトの服を着た子どもと、フラボアの服を着た僕がピクニックをする日もあるかもしれないが、6歳でウルトラマンを選んだ僕は、これからもアンパンマンや機関車トーマスに囲まれた暮らしをしていくのだろう。

そして、妻はまた5、6年後に、きっとこう言う。

「6年生まで使うんだからね? ちゃんと大人になっても使えるものを選びなさいね?」

僕はそのセリフを聞いて、きっとクスリと笑うに決まっているのだ。



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コメント1件

子育てって自分の理想通りにならないこともあるけど…子どもの笑顔に救われ、がんばろ‼︎っていう気持ちになる。そして…達成感がある。お子さんへの愛が伝わってくる。
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