それでも細田守が好きだ。

バケモノの子を見ました。
以下、ネタバレ。

オープニングが好きだ。
導入からワクワクさせてくれる。大泉洋が演じる多々良も、リリーフランキーが演じる百秋坊も、めちゃくちゃ声が馴染むし、いいコンビだと思う。この二人のやりとりはずっと見ていたくなる。

熊鉄と九太の師弟関係も好きだ。
九太は17歳になっても、年齢をきかれると指を折って応える。背が伸びて強くなっても、九太は九太であり、そのシーンがなんだかくすぐったくてドキドキする。

青年期の九太の怒り方、怒鳴り方は、完全に熊鉄のソレに寄せていて、これを演じた染谷将太の表現力はすごいと思う。役所広司とどのぐらい一緒にいたら、ここまでシンクロさせられるんだろうと感心する。


トリハダが立ったのは二回だった。
一つは、宗師になるために、熊鉄が闘技場で猪王山と戦い、九太と一緒に10カウントを奪ったシーン。単純に胸が熱くなった。こういうシーンに多くの言葉はいらない。

もう一つは、最後の最後。一郎彦と戦う九太の前に、赤く燃える剣が落ちてくるシーン。やっぱり男の子的には、「ピンチのところで剣が手に入る」っていうシチュエーションはめちゃシビれるわけです。キター!ってなるでしょ。それで全て良しと思えた。


それでも、結論を言えば、前作「おおかみ子どもの雨と雪」より好きになれなかったです。

理由のひとつは、楓というヒロインの存在が「現代の若者の象徴」として映すにはやや真面目すぎで真っ直ぐすぎで九太に尽くしすぎたこと。

細田守の描く女性は「時かけ」以降、いつだって強すぎる気がして、その理想に視聴者は置いてけぼりを食らう気がする。彼女の存在がもう少し丁寧であれば、この茶番っぽさは薄れるんじゃないかと思った。

もうひとつ、あまり感情移入できなかったのは、映像表現として本当に美しかった「渋谷・代々木とクジラ」。

ストーリーを多少無理させてでも、「渋谷」という現代社会の象徴に「クジラ」という哺乳類最大の動物(肥大した自分というモンスターの鏡)を描きたかったのであろう、制作側の頑固な意思がビシビシと感じられるのだけれど、でも、そこまで不自然な構図を僕は求めてなかった。

単純に、「ええやん、クジラにならんでも」と思ってしまうのだ。

そして倒し方もやはり、急に王道のRPGみたいな発想になって、弱点を見抜き、抜刀で一閃。都合よく爆発し、本人は無傷。急に「ありふれたバトル漫画の総まとめ」みたいな映画になってしまうのである。

そこらへんがなんとも、残念に思えなくもなかった。


でも、考えてみたらサマーウォーズだって、「なんで花札やねん?」って思いませんでした? 「そこ、いる??」って。

おおかみ子どもも、雪山を三人で全力で走るシーンは、映像と音楽がめちゃくちゃ印象的だけど、でもストーリー的には「え、それいる??」って要素。

そうやって細田守作品は、何かを優先した結果、ストーリーがちょっと不自然になる瞬間があって、でもそれこそ細田守作品じゃん! って、愛すべきところじゃないかって思えるわけです。

今回も、まっすぐすぎる冒険活劇でした。9歳でバケモノの世界に入った少年が、イケメンで、強くて、頭よくて、無敵になってくサクセスストーリー。そのまっすぐさこそ、今回描きたかったものなんじゃないでしょうか。

そしたら問答無用に、一周回らずとも、この作品を愛せるようになりました。きちんと好き。おおかみこどもよりは好きじゃないけど。


ダラダラと感想を書くと、そんな感じでした。

また見たいな。発見もありそうだしな。

発見といえば、超序盤、九太が最初の家から引っ越しを迫られるシーン、ダンボールの中にたしか「白クジラ」って書かれた本が入ってたのを、僕は見逃しませんでした。そこは自慢だ。

おしまい

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

31

今週のおすすめ記事

note編集部がおすすめする記事を集めました! 不定期に更新いたします!
1つのマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。