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グラフィックレコーディングをワークショップに織り込む - 対話の可視化の可能性を探る

様々なシーンで見聞きする機会が増えている「グラフィックレコーディング」、皆さんはどのようなイメージを持っているでしょうか。
イベントの様子を描いている、まとめている、といったイメージが多いかもしれません。
私自身はグラフィックレコーディングを行うことはありませんが、自分がファシリテーションするワークショップにおいて、参加者の思考や対話を広げ深めるためにグラフィックレコーダーをアサインし、レコーディング、そして場に参加してもらうことがあります。

グラフィックレコーディングについては、清水淳子さんがご自身のnoteでまとめられているので、こちらもご参照ください。

グラフィックレコーディングは誰のためのもの?

イベントで実施されると仮定した場合、前後の文脈や目的によって変わるとは思うのですが、私はグラフィックレコーディングはその場に参加している参加者のために実施されるものと考えています。
もちろん、イベントに参加できなかった人にイベントの様子を伝えることを目的とすることもあるとは思うのですが、その場合はグラフィックレコーディングだけではなく、イベントレポートの方がどういったことが行われたかを把握しやすかとも思っています。(イベントレポートにグラフィックレコードが掲載されることもあります)
その場に参加していない人にはグラフィックとして描かれる、その前後のプロセスが共有されないため、最終的なアウトプットとしてのグラフィックレコードからしか、その場を窺い知ることができません。でも、実際にはグラフィックレコードとしては描かれていない部分があり、その描かれていない部分が共有されていないと、その場におけるグラフィックレコーディングの本質が伝わらないこともあります。
そのため、私は参加者のためのものと考えています。

きれいなグラフィックレコードがいい?

グラフィックレコーディングしたものをさらにグラフィックツールで成形してアーカイブ化する、またそれをイベントとしての成果物とするケースもありますが、リアルタイムに描かれるグラフィックレコーディングは必ずしもきれいで見やすいものばかりではありません。
例えば、あるワークショップで描かれたグラフィックレコードは参加者が対話しながら描き込んだりするため、後から他の人が見ると、何が何やら...ということもあります。でも、その場に参加していた人たちは自分たちの対話の様子が可視化されたグラフィックレコードを眺めて、「自分たちの対話はこのように見えていたんだ」「自分たちの発話がこのように繋がっていたんだ」ということに気づき、そこからさらに思考を広げる・深めるためにグラフィックレコードに描き込んでいくこともあるでしょう。
そうした場合は記録としては後から確認しづらいかもしれませんが、その場の参加者にとってはとても影響を与えるものであり、また有効なものになっていると思います。

いろいろと描き込んだグラフィックレコード

グラフィックレコーダーもワークショップの参加者

ワークショップにおいてグラフィックレコーダーをたんなる記録者としてしまうことには以前から違和感があって、グラフィックレコーディングを行っているからこその視点があり、それをもって場に参加することで参加者の思考を広げる・深めることができるのではないかと考えています。
ワークショップの目的や、ファシリテーターのスタンスによって様々であるとは思いますので、一概には言えないのですが、なるべく観察者や傍観者に留まらないよう、場を自由に行き来する参加者であってほしいと思い、そのことをグラフィックレコーダーやワークショップの参加者全員にも伝えるようにしています。
(注)ワークショップの目的によってはそれができないこともあります

参加者と対話するグラフィックレコーダー

グラフィックレコーディングをワークショップに織り込む

上述のように、グラフィックレコーダーをワークショップの参加者とするためには、グラフィックレコーダーが参加者に背を向けて描いているだけではなく、参加者と向き合うシーンをワークショップのプログラムにおいてデザインする必要があると考えています。
一例ですが、以下のようにワークショップに織り込むことはできるのではないかと思うのですがいかがでしょう。

・ワークショップが始まる前に参加者がコメントできる、描けるようにグラフィックを用意しておく
・ファシリテーターがグラフィックレコーダーに問いかけ、それに回答してもらうシーンを設定する
・プログラムにグラフィックレコードを眺めて対話する
・グラフィックレコードにコメントできるように付箋やペンを用意する
・最後はグラフィックレコードの前で全体共有するようにする

ワークショップをストーリー仕立てに可視化し、吹き出し型の付箋を使って参加できるようにした例

グループワークのアウトプットをグラフィックレコード上に貼りだして、最後に参加者全員で共有した例

対話の可視化の可能性を探る

昨年末に「対話の可視化の可能性を探る」ワークショップイベントを実施しました。
これはワールドカフェ+グラフィックレコーディングの手法を用いたもので、ワールドカフェのテーブルごとにグラフィックレコーダーをアサインし、テーブル内の対話を可視化、可視化されたグラフィックを参加者で眺めつつ、対話を深めていくことを狙ったものでした。

実験的な意味合いが強かったこともあり、プログラムとしては改良点が多々あったのですが、参加者たちもテーブルで自分たちの対話を描きつつ、さらにグラフィックレコーディングにも参加するという場となり、短時間で対話を深めることに繋がったのではないかと思われました。


今回はワークショップにおけるグラフィックレコーディングを取り上げましたが、「対話の可視化」はワークショップだけに留まりません。
例えば、1on1での対話の可視化であったり、グラフィックレコーディング+コーチングという組み合わせを実践している方もいらっしゃると思います。
私もまた別の形で「対話の可視化の可能性」についての場をデザインしてみたいと考えていますので、その際はぜひご参加ください!


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