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サツマ芋スイーツを販売するマーケティング~実務と理論

だいぶご好評をいただきましたので、2回目の記事を投稿させていただくことにしました。ありがとうございます。

私の開発しているお芋スイーツは、販売開始以来、額はまだまだ小さいですが、1ヶ月経たずして、販売初回の4倍近い売上を記録し、順調に成長しています。

行き当たりばったりと思われるかもしれないですが、マーケティングを取り入れているつもりだったりします。そのあたりの背景情報なども盛り込んだ第2回、お芋スイーツのマーケティングnoteのはじまり、はじまり~

1,食品の売上拡大プロセス

うちは、母体は和菓子屋です。


和菓子屋さんに限らず、飲食店でよくある話。

「美味しい物を作れば売れる」

これは、事実でもあり、嘘でもあります。

兄も両親もこの考えでお店を経営しています。ただ、僕は違います。


ちょっと、ブームが生まれる流れを考えてみましょう。

ブームが生まれるまでには、だいぶ気が長い道のりです。

美味しい商品を作れば、ブームは発生するかもしれない。ただし、何十年後にそのブームは発生するか、もしくはブームは発生しないかもしれない。そんな甘い考えで経営されても困るわけです。。。。。

では、なぜ、「美味しいものを作ると売上が増える」という考え方が生まれたのでしょうか。実は、このロジック。以前は機能していました。

この売上拡大モデルは、お中元やお歳暮文化の衰退とともに成立しなくなっていきました。では、現在の売上拡大のロジックはどうなっているでしょう。

▼以前の成功モデル

たとえば、一世を風靡したビアードパパというシュークリーム屋さん。一説には、渋谷駅に併設した店舗の月商は2,000万円という噂を聞いたことがありますが、1個200円程度の商品を1ヶ月で10万個以上販売したようです。

リピート購入ではなく、お店の付近を歩いた人に対し、高確率で販売していくモデルを構築していました。浮き沈みの激しいスイーツ業界で息の長い活躍を続けています。

▼現在の販売モデル

最近だとInstagramを中心に、ヴィジュアルを重視した展開というのが一般的だったりします。

海外だと、パティシエは自分の作ったお菓子をInstagramに投稿し、ブランディングを行い、自分の名前をブランディングしていくというのが主流になってきているようです。つまり、現在のスイーツマーケティングでは、味より見た目の時代に入ってきているのかなという印象です。

★お菓子屋さんとして誤解がないように注記させていただくと、味だけでなく、見た目にコストを掛けるという話で、味を全く捨てているという話はしていないです。

問題は、どのようにSNSへの投稿数を増やしていくか。ここが課題だったりします。

2,競合調査

そんな状況の中で、私が何を狙っているかという話をさせていただきます。

まず、どんな商品を作るか。その先に、商品の販売戦略の組み立てがあるかなと思います。商品の方向性を決めてから、販売戦略、マーケティングを行っていこうと考えていきました。

前回のノートで記載をした通り、女性をターゲットにしています。女性をターゲットにした結果、芋を使ったお菓子開発を進めています。

芋のお菓子といっても、シンプルに焼き芋、定番ならスイートポテト、大学芋などがあります。他には、芋チップス、芋けんぴなども考えられます。

お店の立地しているエリアによって来店客は異なるため、他店で売れている商品を持ってきて販売しても、成功するかどうかはわかりません。立地環境は非常に重要です。

しかし、”投資”という判断から考えると、他エリアで成功している商品を参考にさせていただいた方が、ヒットする可能性は高いと考えられます。そこで、他エリアで成功している商品を参考に、うちでも類似の商品を売ってみることにしました。

では、競合環境を調べてみましょう。

ネットで話題な芋スイーツ屋さんたちはこのあたりです。

▼浅草のスイートポテト屋さん

前回のノートでも記載しましたが、浅草で高齢女性向けに成功し、店舗を恐ろしく店舗拡大をしているお店です。

▼川越のチップス屋さん

Twitterやインスタでも写真がたくさん掲載されている有名店。若い女の子をターゲットにしているようです。商品はインスタ映えするように、芋を横にスライスをした大きなものをチップスにしています。

※同様の芋チップスは、大阪でもヒットしているようです。

▼浅草の大学芋屋さん

大正創業の老舗ですが、若い女の子が多いお店のようです。脇にある人気のジェラート屋さんに来店したついで買いを取り込めたのではないかと推測しています。そのため、人気のジェラート屋さんの成長とともに食べログでも最近人気が出てきているようです。

▼日本橋の芋けんぴ屋さん

有名な商業施設の入り口付近に店舗展開しているため、だいぶ売れているようです。私も何度かお店に行きましたが、お客さんが居る印象が全くありません。でも、立地的には年配の方が買っているのでしょうか。

3,事前の想定

事前の想定では、私のお店の立地は浅草に似た観光地のため、スイートポテトがヒットの可能性が高いかなと思いました。

また、重要な話ですが、ネットで話題=儲かっているわけではありません。たとえば、食べログで評価が高いこととお店の収益性が連動しているわけではありません。

お店を拡大している=利益が大きいという仮説の元、最初はスイートポテトに力を入れました。スイートポテトは、中高年の女性のお土産需要を掘り起こすと、大きな売上が期待出来ると思いました。

チップスは、川越でも大阪でも成功しているため、ある程度の成功は見込めるだろうと思っていました。ただ、前回のノートでも記載いたしますが、基本的にはお土産需要を喚起しにくい商品のため、大きな利益が見込める商品ではないというのが事前の想定でした。

4,テストマーケティングの結果

ビアードパパのように、販売戦略が長けているお店の可能性もありますが、一旦どのような商品の反応率が高いかを検証してみることじゃ重要です。なおポップコーンは、和菓子屋とは全く関係ないと思いますが、ディズニーランドで売れているし、作りたてなら売れる可能性もあると思い、候補に入れてみました。

以下、初回販売時点での売上実績です。

当初の想定では、一番売れるであろうと想定していたスイートポテトでしたが、全く売れませんでした。逆に、ポテトチップスが売れました。

販売してわかったことは、当初のターゲットとして想定していませんでしたが、「アクティブシニア」という意識的に若い高齢者がポテトチップスを買うということでした。

私のお店の立地は、アクティブシニア向けの商品がなかったわけです。いわゆるヨボヨボな高齢者とアクティブシニアでは志向が違うんだなというのが新しい発見でした。このアクティブシニア層向けの商品は、スイートポテトではないんだなというのが大きな発見でした。

チップスのメイン客は、アクティブシニアと30代以上の夫婦、20代カップルがメイン顧客だということが見えてきました。

芋チップスの反応率が高いことはわかったので、芋チップスの売上を拡大するための戦略について考えていきたいと思います。

5,事前に考えた施策

売上を増やす施策としては、客数を増やすことと、客単価を増やす事の2つの進め方があります。

■客数の増やし方

インターネット屋さんとして考えると、以下の2つの施策が考えられます。

▼見込み客の拡げ方

見込み客を増やすには、フレーバーを拡大するという戦略を採用しました。

▼見込み客の刈り取り方

バターやクリームと言った脂を活用することで、日高屋ではなくラーメン二郎を志向することにしました。

上記の考えのもと、前回のノートに記載をしたようなターゲティングの設定に展開していきます。

  全方位   =塩

  子供向け  =チョコ

  男性向け  =醤油バター

  女性向け  =はちみつバター

6,結果

■客数の拡大施策について

前回のノートでも記載しましたが、チョコは売れませんでした。

これは、お店の立地に問題が大きいと思いますが、駅から当店に至るまでに露天商のチョコバナナ屋さんがあるため、既に見込み客が刈り取られていることに問題があると考えます。

醤油バター、はちみつバターは売れる時間帯が異なり、醤油バターは午前~13時30分まで。はちみつバターは13時30分以降。購入客は男女関係なさそうなので、代替関係にありそうです。主に20~30代のカップル(夫婦)と思われる二人組が買って行くことが多いです。

また、塩に関しては、テストマーケティングで実施をした通り、世代・性別を問わず売れていきました。

■客単価の引き上げ施策

▼複数買い促進施策

チップスは、1個350円で販売しています。そのため、基本的には1グループにつき、1個しか売れません。そこで、2個買ったら50円引きという施策を展開していきました。結果、購入客の10~20%のグループは複数購入をするようになりました。

いくら揚げたてとはいえ、チップスを1カップで350円は高すぎるという可能性があります。ここは業務用のフライヤーを使うなど製造オペレーションを改善することで、売価を引き下げ販売量を引き上げるという事も模索が必要なのかもしれません。

▼お土産需要の掘り起こし

お土産需要を掘り起すためには、他店舗で販売しているチップスでは厳しいです。チップスが薄いと湿気る可能性があるためです。そのため、厚切りを展開していく事を考えないといけません。

お土産需要を掘り起こすにはターゲットを中高年に据えたほうが良さそうです。そのため、中高年(特にアクティブシニア向け)の商品開発を考える必要がありそうです。

ここから、チップスの厚切り化を考えるとともに、中高年が好きそうなフレーバー、たとえばブランデー入り大学芋)などを展開するという検証内容が出てきました。

意外と厚切りチップスの開発に時間がかかり、ブランデー入りなど展開がまだ出来ていませんが、売上は順調に右肩上がりになってきています。

某フードイベントへの出店要請など、諸々作業が溜まっているので、戦略検討などが遅れるなど、中々実務は大変です^^;


つづく。







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