自意識過剰小説 2 アーティストへの嫉妬

暗闇の中でネックレスの鎖を指で探した。トラムの音で、ここがそう街から遠くないのがわかった。彼はまだ眠りに落ちる前に私に背を向けたが、それが自分の中で波紋となって広がらないように私は注意深く息を吸い込んだ。

ダウンタウンの芸術家のたむろするそのバーでは、マスターも客も彼らの非常識な振る舞いを多めに見て、そして普通の勤め人をほんの少し馬鹿にする空気があった。月給取り達は自分たちの仕事の愚痴を自虐的な冗談とともに語り、画家やバンドマン、役者たちは、有名であろうとなかろうと、この店だけで通用する免罪符を与えられていたから、この夜も彼らは遠慮無く女達に絡んだり、ライターで紙ナプキンに火を点けたりしていた。

私がこの中の一人の画家の男に出会い、すぐに夢中になってしまったのは小さな缶詰輸入会社で事務仕事をする自分を恥ずかしく思い、そしてアーティストと呼ばれる彼らに嫉妬していたからだと思う。彼は傲慢な芸術家たちの中では控えめに見えたが、私をがらんとしたアトリエ兼自宅に連れてくると、出窓に私を座らせ、壁に立てかけていた絵の具をぶちまけたような自分の作品について次々と説明をした。こちらに向き直ると、少し私たちの間で沈黙があったが、こちらに歩み寄り、迷うことなく私のスカートに手を入れた。

窓の外には、ビルの屋上に取り付けられた航空会社の看板が照らし出されている。ぴったりとした青い制服を着たスチュワーデスが白人男性に微笑みかけながら料理の乗ったお皿を渡している。自分が少女の頃思い描いた場所とは全く違うところ、これは比喩なんかじゃなくて、まさに今この中途半端な高さのビルのベッドに浮かんでいると思うと体の中で大きな黒っぽい波が起こった。私を支えるものは何一つない。朝が来たら、傷ついていないふりをする。
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