負けないの殻を破る次の力

リーグを連勝して調子が戻ってきたと思えてきた刹那、ミッドウィークに行われたACLでの蔚山との再戦は見ててフラストレーションの溜まる試合になってしまった。

先制点が待望のキャプテン小林に生まれたり、ダミアンか知念かどっちだかよくわからないとはいえ、どっちも得点に大きく関与。

点を取るべき人が点を取れたり、負傷者が帰ってきたりとポジティブな要素はいくつかあった。

一番のポジティブな要素は、あれほど「悪い内容でも負けなかった」ということ。

しかし、ACLグループステージ突破や、リーグ戦優勝争いに名乗りをあげるには勝つことが求められる。

勝つことというか、勝ち続けることが求められる。

勝ち続けるためには、引き分けをもう一歩勝ちに引き寄せないといけない。そのための力となりうる要素を探すことが、フロンターレの更なる復調の要因になることは間違いない。

実を言うと本当に負け数は少ない

現時点でJ1の各チームは、リーグ戦に加えてACLとルヴァンに別れてほとんど同じ試合数をこなしている。

広島などがACLプレーオフからの参加で試合数が多いなどの要素はあるが、大幅な試合数の差は無い。

現時点でリーグとカップ戦の負け数の合計で一番少ないのは2チーム、共に2敗。

その2敗の2チームはFC東京とサンフレッチェ広島。

リーグ無敗でルヴァンは2敗のFC東京

リーグもACLも1敗ずつ、しかし試合数では多いサンフレッチェ広島

この2チームがトップタイで、その下に位置するのがフロンターレなどの3敗。

3敗で並ぶチームは、鹿島アントラーズ、名古屋グランパス、横浜F・マリノスの3チームとなっている。

3敗以内のチームは上の方に居る傾向がある

好調と言えるFC東京とサンフレッチェは言うまでもなく上に居る。

マリノスは、ルヴァンはステージ突破圏内、リーグもまだまだ上に食いつける位置に居る。

グランパスは、ルヴァンは3位だが勝ち点では2位と並び、リーグはトップ争いに入っている。

アントラーズは、ACLは混線模様ながら首位、リーグもACL圏を目前にしている。

4敗や5敗まで喫しているチームは辛抱強くやっている浦和と、リーグで早くも5勝している大分が両方共可能性を残しているとはいえ、どちらも余裕のある状況とは言えない。

それら以外には、どちらかのタイトルがかなり苦しい立場になっているチームも出てきている。

接戦の多いJ1と言われているが、今シーズンもかなりその傾向ははっきりと見える。

特にルヴァンは勝ち点の差が小さく、まだまだ諦めるには早い段階ではあるが、それでも既に負け数が増えているチームがここから競争相手をまくっていくという難しさから比べれば、1試合分でもリードしている現実は大きな余裕と言えるはずだ。

ルヴァンは突破を狙うだけであれば、上に居れば状況次第では引き分け狙いも選択肢に入ってくる。追い越す必要のある下のチームとの明確な余裕の差はこういう部分だ。

大分と名古屋、浦和と川崎

勝ち点など広い目で見ればそこまで大差は無いこの2つに分けられた4チームだが、全く違う部分がある。

閉塞感の違いだ

名古屋も大分も勝ってることで自信に満ちているし、点をまとめて取って勝つという余裕のある試合もできている。

現時点で

大分と名古屋は6勝、浦和が5勝で、フロンターレが4勝

引き分け数は多い順に、フロンターレ5、浦和と名古屋3、大分2

となっている。

負け数では下を行く大分がリーグ好調とルヴァンあと一歩を両立。

負け数でフロンターレと並ぶ名古屋が両方を上の方で推移できている。

こういった差は確実に勝利数での差であるが、勝てないモヤモヤ感と勝ったことでのポジティブのメンタルに大きな差があると見える。

退場者が出ても追い付く名古屋、点取り屋が揃う大分

言うほどたいして差がないじゃんと数字だけ示してると言われてしまいそうなので、わかりやすい試合のことで話すとしよう。

昨日のグランパスは、1点ビハインドの状況でCBの千葉を退場して欠くものの、赤崎の得点で追い付き同点に持ち込んでいる。

相変わらず守備に問題がある(15失点)が、攻撃力は抜群で22得点(リーグ16ルヴァン6)を取っている。1試合平均2に近い数値だ。

大分は3点目を取れた試合こそ無いが、12試合中半数の6試合で複数得点。無得点は3試合のみ。複数得点した試合の多くを勝利し、全てで勝ち点を獲得している。

どちらも自分達の得点で試合運びができているため、勝ち点を落とすにしても失点や複数失点がなければ安定して勝ち点が重ねられる雰囲気がある。

それに、半数を複数得点にしたり、完全なビハインドから追い付くなどの、得点の取り方も効果的だったり驚異的だと言える。

これだけ攻撃陣が躍動すれば、チームの雰囲気はおのずと明るくなる。順位が良ければなおのこと。

点が取れない浦和とフロンターレ

やはりこの両チームの閉塞感の一番の要因は得点力不足。

浦和は試合数の12を下回る10得点。ゼロックスも無得点だ。

フロンターレも試合数と同じ12得点。ゼロックス含めても同じく13。

この時点で既に、複数得点をすればその分無得点試合が増えるということ。

無得点ではチームは勝てない。どうやっても勝ち点1が最高で、失点すれば即負けとなる。

複数得点を勝ち点に必ずつなげる大分と比べて、この状況はかなり厳しい。

ギリギリを耐え抜いて勝ち点を獲得してるという辛さが滲み出ている。

浦和

浦和は失点数10とわりと少なめではあるが、特筆すべきは無失点試合で、6試合を無失点に抑え、内4試合に1-0で勝利している。

無失点の試合の大半を勝利につなげる勝負強さがこの順位の要因な反転、複数失点をした試合は1試合を除き無得点。もちろん全て負けている。

複数得点はセレッソ戦の2得点とブリーラム戦の3得点のみで、攻撃力がいかに苦しいかがわかる。

フロンターレ

12得点9失点と失点の少なさで耐えている以上に、無失点試合5のうち4つに勝利し、複数失点した試合には全て同じだけ点を取って引き分けている。

結果的に複数得点した試合は2勝2分と全てで勝ち点を獲得できている。しかも2勝は共に2-0の勝利のため、2分の4失点を除けば10試合で5失点という安定ぶりが一際目立つ。

点が取れるようになれば確実に状況が良くなるのは間違いない。

点を取って上に行く、それができるチームなはず

攻撃と守備は表裏一体で、バランスを崩すと悪い方向に傾く可能性もあるため、一概に得点力を高めれば上に行けるとは言い切れない。

しかし、フロンターレの守備は複数得点した2試合を除いた10試合で見れば1試合平均0.5という驚異的な数値。

これは好調のサンフレッチェの7失点(リーグ4ACL3)とほぼ同等の数値。

引き分けを勝ちに持っていく、先制点で試合を優位に進めて守備力を発揮しやすくする。

そういった自分達からアクションをかけての試合運びができれば必ずフロンターレは上に立てるチームだと確信している。

知念が引っ張ってるだけではダメ

ACLのツインシュートが知念になったことを踏まえれば、知念は公式戦連続ゴールを5に伸ばしたということになる。

リーグも4得点で一気に得点ランキングも上位陣に仲間入りした。

裏抜けとフィジカルを中心に、ゴール前での押し込みというFWらしさを見せてくれた。

彼の好調に乗っかるように他の選手も得点を重ねるようになれば、相手としてもマークが難しくなるし、勝利が近づいてくる。

やはりこういう時に重要なのは他のFW

名指しをすると、ダミアンと小林

ダミアンはフォーメーションと出場時間

ダミアンはある程度試合に出してあげれば毎回ゴールの匂いを示してくれるし、出場時間から見れば得点量は多い。

小林と比べて圧倒的に時間も少なく、出るときの状況も悪いのに比べれば、実際に怖いのはダミアンの方とも言えるだろう。

ダミアンは4-2-3-1の擬似2トップよりしっかりとした2トップの方が向いてると公言している。

しかし、現在のフロンターレは完全に前を増やすのはビハインド時の遅い時間。

出場時間を数分ではなく15分以上にすると結果が出るという意見もtwitterにあったように、できることなら早い段階から使ってあげたいのが本音だ。

しかし、知念がこれだから、先発となると両立するには鬼木監督が頑なにやろうとしない純正の2トップしか無いのが難しい。

小林はとにかく決定力

小林はやっと点が取れて、そのシュートも素晴らしいものだったが、試合終盤の枠外などの試合を通して見てみれば決定力不足はまだまだ深刻。

4-2-3-1では右を務めながら、中に入ってきてトップ下のような立ち位置をよくするため、シュート回数は少なくはない。

しかし、それがことごとく凡シュート。いいのが飛んでもキーパー。

伝説の仙台戦の小林劇場のようなレベルまでは求めないが、なにかもう一歩が欲しい。

ペナルティエリア外からだってぶちこむ能力はあるはずだが、クロスに対して変に知念と被る立ち位置をしてみたりと、不馴れな感じがやはり強い。

2トップの方が適してるかどうかは確実なことは言えないが、少なくとも右の小林は可能性が低すぎる。

フィットして新境地を開くのか、ベテランのこれからに中心が集まる。

4-2-3-1のトップ下、いわばポスト憲剛

中村憲剛はまだまだ混んでが上がってこない。

格下相手や、相手の守備の勢いが無くなってきた短時間だけなら輝けるが、しっかりと戦いに来る相手にはどうしてもやられてしまい続けている。

これまでの私の文章で何度も言ってきたように、フロンターレの4-2-3-1は、中村憲剛を使うためだけのフォーメーションだ。

もっと言えば、調子が良いときの

あべちゃん、憲剛、家長の3人が揃ったとき限定で輝くフォーメーション

トップ下を家長にして、抜群のキープ力を発揮させるという使い方も、ベストな活用方法ではない。なぜなら、右に不馴れな小林を使わなければいけないから。

家長はコンディションさえ悪くなければ右でも真ん中でも使えるため、その相方を探すことでしか憲剛抜きの4-2-3-1はうまく回らない。

となると、RSHかトップ下の専門家が必要になってくる。

残念なことにLSHは2人も余剰があるが、RSHには専門家の余剰は無い。

あべちゃんを中央にというやり方でも辛い。

となると、現時点でトップ下かRSHの適正があるスタメン外の保有戦力から抜擢するしかない。

となると…脇坂に白羽の矢が

脇坂は見込みがある。しかもかなり。

リーグ戦でのデビューから、ACLでの途中出場と、だんだんとフロンターレの試合に絡み始めた脇坂。

プロフィールなどを見ると、フロンターレお手製のポスト中村憲剛という触れ込み。

実際にプレーを見てみると、守備に駆け回り、パスを受けて出すだけでなく、多少遠くからでもシュートをしていき、セットプレーも蹴れる。

確かに中村憲剛と同じプレースタイルだ。

最近のフロンターレの育成や若手の育ち方通りに、フィジカルコンタクトも積極的に行うという面では、確実に憲剛より上。若さ故のスタミナも間違いなく上だ。

ネット流出からポジションを獲得して一気に花開いた守田、守田の不調からポジション争いをヒートアップさせた碧。

この二人のように、デビューからすぐに戦力化することも夢ではないと思えるプレーを見せてくれたことはかなり好印象。

トップ下が本職の脇坂を戦力化して、RSHも本職の家長にすることができれば、どのポジションも本職が揃って状況が良くなるはずだ。

ダミアンと小林の競争も激しくなり、小林はRSHと2つの位置でユーティリティを持ったサブなんて贅沢な使い方も考えられる。

しかし、ダミアンと小林を知念と絡めるなら、絶対2トップの方が面白い。

ダイヤモンド4-4-2の可能性

大島ワンボランチのダイヤモンド形と言われる4-4-2という選択肢を見せた鬼木監督の采配は称賛に値する。

確かに、トップ下が憲剛と家長以外に使える選手が居るのであれば、かなり攻撃的な4-4-2を組むことも可能である。

大島以外にもフロンターレのボランチは守備に定評があるため、上がらないようにしておけば守備の脆さもそこまで露呈しないと予想できる。

だが、重要なトップ下をフィットしているかも定かではない若手に委ねて、これまでに無い形を取らせるというのは確かにリスキーでもある。

攻撃偏重で今の良さである守備に陰りが見えてしまっては元も子もなくなってしまうし、奈良や大島の中距離のパスを重視すれば、トップ下無しの4-2-2-2の方が変化が少ないとも思う。

今からあれこれたくさんのテコ入れをして昇り調子になるのが遅れて、取り返しがつかなくなるのも怖い。

とにかく、スムーズな変化が重要だ。

変化の痛みを点で消す選手を必要としている

フロンターレは憲剛を使わない形を考える必要性に迫られている。そして、前線の選手の使い方や1トップ2トップの部分でも変化が及ぶ。

そういった変化をすれば、確実にチームは苦しむことになる。いわゆる産みの苦しみというやつだ。

そういったときでも試合はやって来る。

そこで重要なのは、苦しい中でも点を取って勝利に導けるヒーローだ。

今は知念がその役目を担ってくれて、あべちゃんも要所で絶技をもってこなしてくれている。

ヒーローが居れば苦しみを乗り越えられる。

本来ならゾーンに入った小林がその大役を担うことになる。

夏場の小林がまた覚醒すれば、知念と小林のセットで2トップを悪いなりにこなして点を取り、走りきった知念に代えてダミアンで仕留めきるというストーリーも十分に考えられる。

ヒーローが出てくる、得点が増える、そして選手の軸が移行する

こういった一連の殻を破る力を、選手達に求めたい。

それが完了すれば、フロンターレはまた一回りも二周りも強くなる。

お気持ちよろしくです。