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神社へのお賽銭に関する話。

ごきげんよう。
今回は、個人的に見過ごせないお話を拝見した事もあり、神社へのお賽銭についてのお話をしようと思います。

ことの始まりは、Twitter某神職系アカウントの方が話題にされていたツイートが目に止まり、話題に上がっていた某宗派一僧侶の方のYouTube配信を視聴してのことです。

写真:『YouTube』の動画より

この方は初詣の裏ワザと称して、願い事が届きやすくなる?ようにするためには、神社に5円玉を奉納してはいけないというようなテーマで、神社でのお賽銭奉納額について、明確な資料がない説をあたかも真実のように話しておられ、信憑性に欠けた性的表現を踏まえてお話されているなど(単なる便宜上の配置だと思いますが…) 私が聞いたこともない説をお話されていたので、衝撃を受けました…

それにしても願い事が届きやすくなる金額?ってどういうことなのでしょうか??

なので、以前に投稿した記事中でお話しました「お賽銭に関する基本的な話」を改めて、こちらでもしようと思います。

【お賽銭さいせんとは】

まずは、基本を押さえるため『神道事典』によりまして、お賽銭についての話を以下に引用します。

賽銭(さいせん)
本来、祈願成就の礼参れいまいりの際に報賽ほうさいとして
神仏に捧げた供物そなえものの1つ。今日こんにちでは、社寺への祈願・崇敬すうけいの表現として献納けんのうする金銭の意となっている。

恒例こうれいの行事の供進物きょうしんもつとは異なり、主として個人的な臨時の祈願を目的とした神供じんく(神様へのお供え物)であり、古くは神前に米を散米さんまい、あるいは洗米せんまいを紙に包んで供えるオヒネリであった。

それが、中世後期以降に貨幣かへい経済が広まり、また庶民しょみんによる他所への社寺参詣しゃじさんけいが盛んになるにつれ、米の代わりにぜにけんじる散銭さんせんとなった。

鶴岡八幡宮の別当の日記には、天文年間(1523~55年)の頃に散銭櫃さんせんひつ社頭しゃとうに置いたことがしるされている。さらに江戸時代になって散銭さんせん賽銭さいせんと改められたらしい。ただし、これは都市部においてのことであり、辺地の末社寺まっしゃじでは米を供えることが長く続けられた。金銭となって以来、賽銭箱に投じられる賽銭は、神社経済の一角をなすようになる。(以下略)

出典:國學院大學日本文化研究所編『神道事典』(204ページ)より引用

以上を拝読すると、昔のお賽銭さいせんは、お米をいておそなえをしていて、これを「散米さんまい」と言うのですが、この散米とはどういう意味合いでなされていたのかを、再び『神道事典』より引用します。

散米(さんまい)
はらえ(おはらい)のとき、または神拝しんぱいのときに神前で打ちいたり、けんじたりする米、もしくはその儀礼のこと。「うちまき」ともいう。

(中略)散米さんまいは米をくもので、はらえに米を用いたのは、米に呪術的力を認める信仰が背後にあったと考えられる。

散米さんまいとはいっても、四方しほうくとは限らず、かわらけに盛って神饌しんせん※としてそなえる場合もある。

神前にけんずるものは「おひねり」と呼ばれることもあり、
賽銭さいせんの原形とする説がある。すなわち、参拝者が散米を紙包みに入れて賽銭箱の上に撒いたり置いたりした。後世、米の代わりに金銭を入れる例が増え、今日では金銭の方が一般的である。

※神饌(しんせん):神に供える飲食の総称。古くはミケという。

出典:國學院大學日本文化研究所編『神道事典』(204ページ)より引用

以上を踏まえますと
個々人が祈願した内容が成就した際に、その御礼としてお供え物をけんじたことからはじまって、そのお供え物はお米からはじまり、のちに貨幣かへい経済へと変化したことにより、貨幣かへいに変わり

現在では、祈願・崇敬すうけいの表現として参拝時に金銭を納めるようになっていったことがわかるかと思います。

そういった意味では
お賽銭は、神仏と個人との間において生じる行為なので、他者が間を介してお賽銭を斡旋あっせんするなどの行為はタブーであるといえると思います。

また、紙幣の原材料は「植物」、硬貨の原材料は「鉱物こうぶつ」でありますから、神道的視点でみますと、神話で語り継がれている神々より賜っているとともに、神々のおみたまが宿っておる自然のお恵みを頂戴ちょうだいしまして、人智と技を持って製造し変化させているものでもあるともいえると思いますし、現在の人間生活において必要不可欠なものでもありますから、一般的大衆が神仏へ金銭をお供えするのは当然の行為であると思います。

神社仏閣側といたしましても、かすみを食べて生きていける訳ではありませんから、神仏への日々のお祈りやお祭りをするために必要となる用具やお供え物などの物品、日々奉仕する正職員の生活等の保証、伝統的建造物などの修復等々や、崇敬すうけい・参拝するみなさまにおさずけする、おふだ・お守り・縁起物などを奉製ほうせいするためなどで用いるものなどなど、必要となる資金は多額を要しますので、キレイ事ではおさまらない所はあります。

また、聖職者であり商売人ではありませんから、聖と俗とのバランスを取るのが難しいところでもあると思います。

ただ、ハッキリと言えることは、神社でのお賽銭でお願い事が届きやすい金額というものはありません。どなたであっても日々お祈りをすることが大切で、本人の努力や行いなどに沿ってのお導きがあるのだと、長年の経験から私はそのように思っております。

神々様とのご縁をより深く繋げるためにも自宅にて日々お祈りすることがとても大切です。

個人的なお願い事をより聞き届けて頂きたいと思われるのならば、昇殿しょうでん参拝をされた方がよろしいのではないかとは思います。

昇殿しょうでん参拝とは

御鎮座ごちんざされます神様の御社おやしろ・御本殿により近い所にて、お祈りができます正式で特別な参拝のことで、祈願者は御社殿ごしゃでんまたは神楽殿かぐらでんの中に入りまして、神職さんを介して 個人的お祈りができる参拝となります。こちらは昇殿しょうでん参拝または正式参拝とも申します。

「おはらい」をしてもらうという認識の方が多いと思いますが、神様にご祈願をする前に
おはらいをしています。

神職しんしょくさんは、神社の御祭神ごさいじんと祈願者との間をとり持ちまして、御祭神へ失礼がなきよう丁重なお祈りの作法をされまして、祈願者のお願いごとや感謝の意を、大和言葉やまとことばという和語わご(古語)を用いた祝詞のりとを通して代理でお伝えしてくださいます。祈願者は神職さんから「玉串たまぐし」というおささげものをいただいたのちに、御神前に近い所まで案内されて、祈願者は神様へ玉串たまぐしをお供えしてお祈りすることができます。

玉串(たまぐし)イメージ

玉串拝礼の参考動画

『YouTube 神青協チャンネル(神道青年全国協議会)』より

また、祈願者用としてご用意された、おふだやお守りなども祈願する時に御神前にあげられます。こちらはあとでいただけます。

おふだのイメージ
形式は各神社によって様々あります


こちらの昇殿しょうでん参拝は、個人や団体の祈祷きとう・祈願として、神社の社務所などの受付窓口やお電話・FAXなどでお申し込みできます。お日にちが決まっている場合は、事前に日時を予約することもできます(参拝する時期によっては予約不可な時も) 神社によっては予約制の所もあります。

どなたでもわかりやすい一般的な祈祷きとう・祈願の例をあげてみますと、「厄年やくどし」の厄除やくよけ「七五三」や企業・店舗等の「新年の仕事始め」「商売繁盛」「工事安全」などがございます。

また、お礼参りの「神恩感謝しんおんかんしゃ」もございます。

祈願に要するお時間は約15~20分ほど。
お正月や七五三などの時期によっては待ち時間がある場合もあります。当日直接のお申し込みだと、神職さんは祈願するための装束を着られ、祈願者用のおふだ・お守りなどのご用意もいたしますので、開始まで少々お待ちいただくことになります。なので、前後のお時間に余裕があるときにお申し込みください。

個人祈祷料きとうりょうの相場としては、5千円(あとはお気持ち次第での増額…) からが一般的ですが、各神社の祈祷きとう内容などによっても異なる場合もあるので、正式に昇殿参拝しょうでんさんぱいをされたい神社でお問い合わせして頂くことをおすすめします。この時にご祈願内容もご相談してくだされば、職員さんが対応してくださいます。

こちらの祈祷料きとうりょうは、神様へのお供え物としての料金で、神社では「初穂料はつほりょう」または「玉串料たまぐしりょう」と申します。

神社に納めるお金は神様へのお供え物

こちらは、その年のお米、または祈願の時にお供えする玉串たまぐしの変わりとして、お供えしているものだとお考えいただければと思います。

こちらの料金については、あとでいただけます、おふだ・お守りなどの代金だと勘違いされている方もいらっしゃるようですが、わかりやすく言いますと、お賽銭さいせんと同様的なものだと思っていただければ幸いに思います。

祈祷きとう・祈願の料金を定めていることについては、諸々のトラブル回避等の理由から、ある程度神社側で定めておかないと…という理由から一律的な金額になっているのではないかと個人的には思っております。

やはり、お賽銭箱の前で手を合わせて祈るのと、御社殿の中で手を合わせて祈るのでは全然違いますし、神々様と個人とのご縁をより深めるきっかけになっていくとも思いますので、個人的におすすめいたします。

最後はなんだかまとまりがない文となってしまいましたが、
今回のお話は以上とさせていただきます。
ご拝読ありがとうございました。
みなさまにとりまして、みのりの多き年となりますようお祈り申しあげます。拝