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シン・エヴァンゲリオンと私とブリガンダイン

シン・エヴァンゲリオンを鑑賞して、ご多分に漏れず自分語りしたくなり、駄文を綴りました。

ブリガンダイン 幻想大陸戦記/GE

私が企画・監督・プログラムを担当し、1998年に発売したPSゲーム「ブリガンダイン 幻想大陸戦記」、2000年発売の「ブリガンダイン グランドエディション」。
このゲームを開発し始めた1996年頃。エヴァは熱病のように多く人を虜にしながら広がっていて、当時の開発スタッフも皆ハマり、私も録画ビデオ(VHS!)を借りて観始めたら、一晩で全話を観てしまうほど引き込まれました。
エヴァの登場は衝撃的で、その後の日本のアニメやゲーム、漫画などに不可逆的に大きな影響を与えたことは疑いありません。

でも、私はエヴァが嫌いと言ってはばかりませんでした。まるでハーメルンの笛吹きのように、心の内側へ内側へと、答えのない暗闇に大勢の人を導いているように感じられ、反発心を抱いていました。
私も開発スタッフも、エヴァの世界に魅了されていましたが、開発中のゲームは、そうではない方向、人と人がぶつかり合う、命を燃やす物語にするのだと、何度も何度もスタッフと話したものです。
当時もう一方の注目アニメ「ジャイアントロボ」もよく引き合いに出し、ケレン味を合い言葉に、エヴァに傾かないよう心を砕きました。
結局、ゲームにエヴァの影響は(表面上は)ほぼなく完成し、隠しクラスの名前「リリス」にわずかに爪痕を残すのみです。
きっとあの頃、私たちだけでなく、至る所でエヴァの呪縛から逃れようとする戦いが繰り広げられていたと思います。
(以降、ネタバレあり。)

シン・エヴァンゲリオン劇場版

さて、シン・エヴァンゲリオンです。
鑑賞前は正直言って、またぐだぐだになり、もしかしたら完結せずさらに続くかもと、斜に構えていました。
しかし、それが第三村という小さな社会で、自分の殻に閉じこもったシンジが、アヤナミやアスカや懐かしい級友たちと生活する中で、これまでのように強いられて反発するのではなく、眼前で失われた大切な命をきっかけに、世界を理解し、自分の意志で外に向かって行動し始める、その静かに丁寧に積み重ねられた描写に胸打たれました。
観終わった今は、この瞬間が”全てのエヴァンゲリオン”の物語の転換点、終わりの始まりだったことがわかります。
ただそれだけのことで、シンジ自身と彼をとりまく登場人物たち、エヴァの世界が救済されて終わったことが、とても美しく感じられ、今もじわじわと感動が広がっています。
後半の決戦は、もういつでも終われる状態なので、庵野監督のやりたいこと&ファンへのサービス・サービスですかね。私は存分に楽しみました。
エヴァに影響を与えた作品と、エヴァの影響を受けた作品の力も取り込みながら、収拾不能と思われた物語が手品のように綺麗に畳まれていく様が気持ちよかったです。

そして、マリ。
綾波でなく、アスカでなく、マリ!
少年漫画やゲームのヒロインは守るべき存在で、運命の人。
そんなテンプレを、25年前から続く人気作が覆してみせたことに驚き、感服しています。

旧劇場版のアスカの「気持ち悪い」という有名なセリフ。
誰でも自分が想う相手、思い出を共有する相手と結ばれたいと願い、運命を感じるもの。フィクションの世界では叶うこの願いは、しかし、現実では相手次第で成立しない。どころか、望まない相手に無理を通せば、醜いストーカーとなり果てる。
あるとき想い、想われた相手でも、時とともにその想いも変わるもの。
好きだったよ。さよなら
長い時間ファンとともにあったからこそ、心に残るセリフ。
時計の針を進め大人になったシンジが、まだよく知らないマリとともに走り出す姿はとても爽やかで、この映画らしいラストシーンでした。
未完成で不安定だからこそもちえたサグラダ・ファミリアのような魅力は、今回で失われたかもしれない。でも、今という時代にふさわしい新たな魅力を得た。新劇場版が作られた意義はあった。

昔、魅了され、同時に嫌いでもあったエヴァンゲリオン。
25年後、これほど美しく終わるとは思ってもみませんでした。
庵野監督をはじめ、このエポックメイキングで困難な作品に関わられたすべての方々、その方々を支えられた多くの方々。
素晴らしい作品をありがとうございました!
私の心に残る作品です。

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