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駒田徳広/ヤジとの闘争

「駒田く〜ん、守備についたらエラーをしてくれ」
「やかましいは、コラっ」
「黙ってろ!コラッ!」

「駒田くん、そう怒ることないよ、応援してるんだから」
「うるせーんっだよ。だまっとけボケっ!」

「駒田くーん」
「野球っつうのはな野次るためにやってんじゃないんだよ」
「バカっ」
「エラーしたやつが怒るなよ」
「駒田く〜ん」
「こっちだって頭にきてんだよ」

これぞプロ野球だ。
プロ野球の華といえばやはり乱闘とヤジ。

昭和のプロ野球??
違う、そうじゃない。

これは平成のプロ野球の一場面だ。

今日は野次について駒田徳広を軸に語ってみよう。

併殺の駒田徳広


駒田徳広は巨人で4番打者もつとめたエリートだが、その本来のフォースを発揮したのは横浜ベイスターズに移籍してからのキャリア後半だったのではないか。


駒田徳広
日本プロ野球実働18年(83年〜00年)
巨人→横浜ベイスターズ

内野手、左打者

2063試合 打率.289 195本塁打 
953打点 2006安打 
229併殺打(歴代11位)


この記録は実は物凄いものを含有している。
駒田徳広は左打者だ。
左打者というのは一塁ベースにより近いため理論上併殺打は打てない。
打てないは言い過ぎだろうが、まあまずもって簡単には打てない。
ところが駒田徳広は併殺打を量産した。

229併殺打は歴代11位タイである。
これだけだと11位であって大したことがないように思えるが、左打者としてベスト20に名を連ねているのは駒田徳広ただ一人である。

併殺打歴代20傑
1 野村 克也 378
2 衣笠 祥雄 267
3 大杉 勝男 266
4 長嶋 茂雄 257
4 中村 紀洋 257
6 新井 貴浩 242
7 落合 博満 236
7 谷繁 元信 236
9 土井 正博 235
10 山崎 武司 230
11 小玉 明利 229
11 大島 康徳 229
11 駒田 徳広 229(左)
14  白 仁天 225
15 古田 敦也 223
15 和田 一浩 223
17 山内 一弘 222
18 松原 誠    217
19 木俣 達彦 214
20 村田 修一 208

錚々たる顔ぶれだが駒田以外はくまなく右打者なのだ。
なぜ左打者であるにもかかわらず併殺打をこれほどまでに量産できたのか研究課題である。



ヤジとの闘争

昭和の野球においてはヤジがつきものだった。
観客から浴びせられる罵詈雑言からちょっとした茶々までヤジの範囲は広範にわたる。
そんなヤジに対し、
塩対応する選手もいれば、神対応する選手もいた。
だが駒田徳広は塩でもなければ神でもなかった。

駒田徳広は力の信奉者でありヤジに唯一力で対応できた名選手だ。
何が凄いかといえば、1のヤジに2以上のフォースを返していることだ。


「駒田く〜ん、守備についたらエラーをしてくれ」
「やかましいは、コラっ」
「黙ってろ!コラッ!」

「駒田くん、そう怒ることないよ、応援してるんだから」
「うるせーんっだよ。だまっとけボケっ!」

「駒田くーん」
「野球っつうのはな野次るためにやってんじゃないんだよ」
「バカっ」

「エラーしたやつが怒るなよ」
「駒田く〜ん」
「こっちだって頭にきてんだよ」


このように1やられたら2返していくのが駒田徳広の流儀だ。
しかも音量は観客の3倍以上でマイクは駒田徳広の野球論すらもしっかりと拾っていた。

ヤスシ師匠顔負けのキレっぷりだが、決してお客さんを威嚇したり危害は加えない。
それどころかギャラリーを笑いの渦に包んでいるじゃないか。
これは「紳士たれ」を金科玉条とする読売巨人軍ではできない離れ業だ。

「こっちだって頭にきてんだよ」
とヤジ男に腹を割って相談を持ちかけるほどのフレンドリーぶり。


体もデカいし記録も凄いが、駒田徳広は何よりも熱い選手だった。

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