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源氏物語は愛と恋の物語(だけ)ではない!? | 岸本久美子先生インタビュー1 | 弘道館留学番外

岸本久美子先生。古文教諭。いや教諭の域はすでに余裕のよっちゃんで超えている。源氏物語愛好家として「岸本久美子の風信帖」という連載をされ、さらに源氏物語をテーマにしたコンサートまで開催されているというツワモノ。

実は、私の紫野高校時代の3年間通しての担任(私が1.5類文系だったため担任交代なし)その後、スーパーサイエンスハイスクール&音楽コース!!で有名な堀川高校で教頭へ、ほとんど大学みたいな空気感の銅駝美術工芸高校の校長を歴任。さすがわが恩師、出世してはります(笑)堀川高校、銅駝高校へも過去に見学に行かせてもらってたし、同窓会でも何度か会ってたから、久しぶりの再会ということでもなかったのですが。

なぜ、先生に会いに行こうと思ったかというと、お察しいただけるかもしれませんが、私がこの1ヶ月悩み続けている「手のひらの自然ー京菓子展 源氏物語」の菓子展デザイン公募の課題に苦心しているからです。プロセスは下記のnoteへ。

源氏物語の教科書を手に入れた!(note)
・京菓子展のデザインめちゃ悩んでまして私の途中経過をお見せします(note)
・京菓子デザイン途中経過2:母性(note)

で、岸本先生は、現在でも源氏物語の講演活動、堀川高校の非常勤講師として現役で古文、主に「源氏物語」に特化して教えておられるからきっと何か得られると思ったのです。自分も少し学んだからこそ、先生から今まで聞けなかった話が聞けるだろう、そんな予感もしていました。

さて、タイトルの、「源氏物語は愛と恋の物語(だけ)ではない」という言葉は、あえて少しセンセーショナルに書かせてもらいました。もちろん源氏物語は「愛と恋の物語」です。しかもその描写の繊細さは先生をしても「本当に美しい表現力」といわれており、私もその一端は感じられます。しかし「違う側面もあると考えると、より深く読めるのではないか」という先生の提案です。

先生が今度、某所で主に男性が多い講演会で話される原稿の草案を読ませてもらいました。

『実はこれは アイ と コイ ならぬ オイ と クイ の物語なのです』(岸本久美子)

愛と恋 ならぬ 老いと悔い。
きらきらした、源氏物語、そして光源氏のイメージからすると、驚くべき解釈です。つまり、これは、光源氏というキラキライケメンかつ高貴な身分の人間が、後年にいくにしたがい、老いと悔いとの戦いをするという、光源氏の人生の物語、という側面を持っているというのです。

ここからは昨日お聞きした内容の私がさっと記憶しているポイントのみ。伝聞情報かつ私の記憶ですので、正否などは私の責任で書かせていただきます。

まず、源氏物語は3部構成だそうです(諸説あり)

第1部はいわゆる有名な、光源氏がイケメンで数々の女性と素晴らしい和歌のラブレターのやりとりで恋を愛を語っていく話が中心になっています。人間としての懐の深さもみせ、本当にスーパーマンとして描かれていきます。(第1部は藤裏葉まで。参考Wiki

しかし第2部から様相が異なってきます。光源氏は40歳を迎えます。当時の40というと現在の還暦くらい。一段階、年寄りになったというか、世間の見る目が変わってきます。そこで、これまで百戦錬磨だった光源氏は、若くていきのいいライバルに、恋の競争で負けてしまうのです。また同じく年を重ねてきた妻である紫の上も、光源氏が若い人のところにいき、かつ彼も挫折を抱えていくものだから、それを感じストレスを抱え、病弱になっていきます。そして紫の上は亡くなります。光源氏もそのあと自分の人生を振り返りつつ、幻のように消えてしまう。というところで第2部は終わるそうです。(文字通り、「幻」というの巻が第2部の最終巻です)

どうですか。第2部、やばいですよね。女性好みの源氏物語といわれていまして実際に男性には苦手な人も多いのですが、この第2部の悲劇。このおっさんの悲哀。われわれにも共感できるポイントが出て参ります!!(笑)かくいう私も源氏物語の第1部がもうキラキラしすぎてて全然入ってこなくて困っていたのですが、第2部までがんばるべきだった。

8/31の菓子展〆切までに第2部を読むべきだ!間に合うか。間に合うかもw

そして、第3部は、光源氏がいなくなった世の話(これも驚きました。光源氏がいなくなったあとまで一連のストーリーがあるとは。ハリウッド映画の続編のようなドラマチックさです)息子と孫が主役として登場しますが、光源氏ほどのスーパースターではなく、光源氏の実直さと包容力を片方が、光源氏の情熱的な部分を片方が受け継いでいるというような感じと考えればよいとのこと。老いと悔いの話とは少し外れてきますので、これはまた次回に話を続けたいと思います。

ちなみに、この日8/27は私の39歳の誕生日でした。誕生日は、親や先祖に感謝をする日だと思うよ、という言葉を、何人かの人からいただきました。この日、育ての親のひとりといえる、高校時代の担任にお会いできたこと。しかも30代最後の誕生日に(あ、しかも平成も最後ね)これまでの私の中でも最高の誕生日かもしれません。

当時私は15~16歳の年。先生が今の私に近いくらいの年齢。先生がその後50歳になって道をより明確に固め、60歳をこえて、時間をより集中して源氏物語などの調査や指導に充てることができるようになったと。「当時の私はまだまだだったわ。いまの私はずいぶん成長したわよ、おほほほ」という言葉はおもろいし、元気ももらいました。いや、先生は当時から、国語の先生、特に古文への愛着は強かったのは知ってたし、その時点でもまわりから一目おかれておられたことも知ってますが、その方が、当時はまだまだだったわ、というのだから重みが違いますね。そして、ここから20年の蓄積ってすごいことを生むよなと気づかされもしました。

さて、お菓子のデザイン。どうなることやら。この第2部の老いと悔いを表現できるお菓子ができるかどうか。とにかく前進あるのみ。

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2018/09/11
インタビュー第2回はこちら
源氏物語第三部には光源氏がいない!?|岸本久美子先生インタビュー2|弘道館留学番外


また、この話の結果、お菓子の最終提出案(のちょい前)も公開しました。
京菓子展のデザイン案1 銘「一筋の追い風」 | 社長の弘道館留学
京菓子展のデザイン案2 銘「紫の愛」 | 社長の弘道館留学

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