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ショートトラックは偶然のスポーツ?

現在、平昌で開催中のオリンピック。ショートトラックは、開催国の韓国では大変な人気スポーツで、今回も会場はいつも満席。多くの金メダル獲得が期待されています。私も、かつてはこの競技の選手として世界の大会に出たりしていました。

つい先日、仕事でお世話になっているある方から、「かわいさんが、あんな理不尽なショートトラックをしていたのが信じられない」と言われました。私を知るその方の周りの人たちで、ショートトラックを見ながら、そんな話をしていたそうです。

私は「ショートトラックは、ぜんぜん理不尽でも、運の要素が強いスポーツでもないですよ。見てればだれが転びそうか、だれとだれが同じ組だとぶつかりそうかわかるので、その近くに行かないようにすればいいんですよ」と答えました。

実は、それを利用すれば、「あばれるクン」をうまく配置して強い選手にぶつかってもらったりして、労せずして良いポジションをとったりできます。もちろん、毎回うまくいくとは限りませんが、少なくとも自分がその選手に近づかないことで、リスクを減らすことができます。

私は、ショートトラックはリスク・マネジメントのスポーツだと考えています。多くの方が感じるように、転倒に巻き込まれたり、割り込まれて弾き飛ばされたり、一見、たいへん理不尽なスポーツに思えます。しかし、上記のように大半のリスクは予測できるのです。また逆に、脚(の余力)が残っていなくて自分の勝ち上がる可能性が低くなったら、あばれるクンに押し出してもらってアドバンス(救済措置)をねらうことも可能です。

もっとも、それなりの実力がなければ、リスク・マネジメント以前に勝負のステージには立てません。また、組み合わせによっては、リスクを負っても集団の中や前方でレースする必要がある時もありますが、いつもリスクとリターンは秤にかけながらレースをしていました。

また、準決勝までと決勝ではポジション取りの仕方は違うし、組の人数でも異なります。

(もう日が変わってしまいましたが)今日、一緒に世界で戦っていた先輩とオリンピックの映像を見ながら話していて、選手のポジション取りの話題になり、私と同じように考えていたことを再確認しました(同じ指導者のもとで育ったのである意味当たり前ですが...)。 私たちの指導者は「そんなところにいるから、やられるんだ。やられるお前が悪い」というスタンスでした。そう言われれば、自然と周りをよく観察し、巻き込まれる兆候を事前に感じて避けるようになります。

ショートトラックは、運のスポーツでも理不尽なスポーツでもなく、強い(≠速い)選手が勝つスポーツです。ソルトレークのブラッドバリーのケースはかなり特殊で、オリンピックの決勝ゴール前だからこそ起こった本当にレアなケースです。現在は、ビデオリプレーを使った判定や、レースとして成立していない場合の中断、再レースなどが徹底されているので、不可解な判定や、ああいった結末になることはありません(たぶん...)

このところ、テレビ中継の解説を聞いていて、そういったことがわかっていない日本の関係者が多いのでは、と気づきました。その先輩(元世界チャンピオン)とは当たり前のようにリスク感覚が共有できていたので、ある程度のレベルにあった人たちなら当然わかっているだろうと思っていたのですが、どうやら私たちが少数派だったようです。運が良かった、悪かっただけでは勝てるわけがありません。

ペースが上がる前に出ていくことだけが良いのではなく、時には後ろで我慢して見ていること、そしてイザというときに備えて準備しておくとも重要なことです。実力的に劣る者が勝ち上がっていくときにも、それが有効な場合があることは理解しておくべきでしょう。

今日、テレビ観戦をした帰路で、そんなことをツラツラ考えたので、記録がわりに記してみました。

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