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オフセット印刷と、最高品質のオンデマンド印刷の現場を見学させていただいたお話。

ピースオブケイクでデザイナーをしてる川井田です。

一足先に同僚の佐加野が記事をまとめていますが、先日加藤文明社さんの印刷所を見学する機会をいただきました。

見学した一連の内容は写真が得意な佐賀野が綺麗にわかりやすくまとめてくれているので、ぜひともそちらも読んでいただければ。

佐賀野がまとめてくれている通り、見学した内容は主にオフセット印刷の印刷の工程と、最高品質のインクジェットプリントの現場になります。

このnoteでは、オフセット印刷のしくみをイラストも使って解説します。また、インクジェット印刷についても、見学を通して学んだことをまとめてみようと思います。


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オフセット印刷

オフセット印刷とは、書籍やチラシ、ポスターなどを、高いクオリティーでたくさん刷る時に選ばれる印刷方法です。自分自身も一番お世話になる機会が多い印刷方法です。


0.データを入稿する

例えば、こういうデータを入稿したとします。


1.CMYKの金属版を作る

入稿したデータを元に、オフセット印刷用の版を作ります。

オフセット印刷の版は平らなアルミの板です。この板に塗られている感光剤の性質を利用して、水と馴染む部分と、インクと馴染む部分をつくります。

このようなオフセット印刷用の版をCMYKの4色分作ります。

(CMYKとは・・・一般的な印刷にはC=シアン、M=マゼンタ、Y=イエロー、K=Kの由来は諸説ありますが黒 の4色の分量を調整して、様々な色を再現しています。)

↑実物はこういう結構な厚さの金属板でした。面積もかなり大きかったです。

この版を印刷機のローラーにセットして印刷開始です。


2. 印刷する

この版をローラーにセットし、水ローラーで版を湿らせ、インクローラーで版にインクをのせます。この版は直接紙には触れず、ブランケットと呼ばれるローラーに一度インクが移され(OFF)、そのブランケットを介して紙に転写されます(SET)。

↑簡単に説明するとこんな感じです。

↑実物の機械の写真がこちら。なんとなく、「水で湿らせて印刷」と聞くと紙も濡れそうなイメージがありますが、実際にはほとんど濡れることはないみたいでした。

こういう印刷を、CMYKの4版ぶん繰り返して絵を印刷していきます。


3. ミスをチェックする、色をチェックする

印刷中に小さなゴミが入って、不良品が生まれたりすることがあるらしいのですが、それらはセンサーでチェックして、自動的に印刷不備があった箇所を教えてくれるそうです。

驚きなのが、このセンサーが導入されたのは比較的最近らしく、それまでは人の目で確認していたとか。

また、グラフィックデザイナーは「色校正」と言って、しっかりと印刷物が理想の色になっているかを確認・調整する作業をします。それを印刷所のオペレーターとやりとりしながら行うことがあり、自分も前職でこの工程の時に、「この色をもっと発色良く」や「少しだけ色味を修正してください」などとお願いして、限られた時間でものすごく細かく調整していただいたことがあります。印刷所のみなさん、いつもありがとうございます。

加藤文明社さんでは、色を確認するのに、目視だけでなく機械も使っていました。

↑この機械で、理想の色が出ているか、色の値を確認しているそうです。

↑可能な限り色見本に近づけるために、こちらのコントロールパネルで最終的なインク量を微調整をして印刷するそうです。

見学時に、案内していただいた技術調査・開発部 取締役の田中さんが「いくら機械で近い数字が出ていても、最終的には人間の目で確認する」とおっしゃっていましたが、それくらい色というのは繊細な要素なんだなぁと再確認しました。

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さらに、加藤文明社さんの色への繊細なこだわりが強く見えるのが、二階に設置されたatelier grayという空間でした。

一階のオフセット印刷に特化した機械の無骨なかっこよさがある空間とは違い、こちらはデザイナーと打ち合わせをすることも想定しているそうで、一階とは全く違う雰囲気がありました。作業所というより最新のラボみたい。空間がかっこいいです。

オンデマンド印刷

オンデマンド印刷とは、”必要なものを必要なだけ”印刷する印刷方式です。例えば、10部だけ印刷するポスターなど、ごく少部数を印刷する時に使われる印刷方法です。

多くの人が馴染みのあるものといえばインクジェットプリンターとレーザープリンターだと思いますが、馴染みがありすぎる分、オフセット印刷に比べて少しクオリティが落ちそうなイメージがあるかもしれません。

しかし、最高級のインクジェットプリンターは、むしろオフセット印刷よりクオリティが高かったです。

ギャラリーの中央に鎮座するプリンターが、最高級のインクジェットプリンターでした。速度こそオフセットに劣るものの、実際に刷り上がった印刷の色の表現の幅が広く、いわゆるオンデマンドの印象からかけ離れたすごいクオリティでした。

↑注意深く見ないとオフセット印刷との色味の差がわからないくらいになっているので、機会があればぜひ現物で見比べてほしいです。

このプリンター以外にも、二階には色へのこだわりを感じるものがたくさんありました。

棚にところ狭しと並んだ、調合されたインク類に

実際に特色を生み出す場所もありました。

この他、実際に加藤文明社さんで印刷を手がけた書籍などを数点見せていただいたのですが、もはや書籍というより美術作品という趣でした。さすがに載せるわけには行かないですが、載せれないのが惜しい!

興味がある方はぜひとも下記のサイトもチェックしてみてください。


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見学を通して、印刷の繊細さと、加藤文明社さんの強いこだわりが見えてきて、個人的にも一度一緒にお仕事してみたいな、と強く思った見学会でした。

また、印刷方法のしくみとプロセスを理解すると、創作に生きる部分も多分にあることが再確認でき、自分としても貴重な機会になりました。

加藤文明社さん、お時間をいただき、このような機会をいただいて、本当にありがとうございました。

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