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インクレディブル・ハルク -日本では本作がMCU一作目! 超人気キャラなのに色々と不遇な問題作-

アイアンマン - DIYとアドリブの快感が詰まった、MCU伝説の始まりの映画-

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前の記事で取り上げたアイアンマンがMCU一作目と書いたんですが、実は日本での公開は本作と前後しており、日本での公開一作目は本作「インクレディブル・ハルク」でした。

このハルクはMCUに登場するキャラクターでもトップクラスに人気で有名なキャラクターなので、この扱いも順当なのですが、色々な事情が重なってMCU作品で一番不遇な作品になってしまった作品であり、これは自分が一番筆が重い作品でもあります。。。。

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伝説のドラマ版ハルク! ハルクの声は永遠にルー・フェリグノ!

この映画の説明をするまえに、まず問いかけたいことがあります。

映画前にハルクの存在を知ってた人ってどれくらいいるのでしょうか??

冒頭に書いた通り、実はMCU作品では映画補正抜きで一番有名なキャラクターなのではと思うのですが、みなさんいかがでしょう??(スパイダーマンは途中参戦だし、権利はいまだにSONYが持ってるので一旦除く。)

なんでそう思うかというと、1977年〜1982年に放送されていたらしい、「超人ハルク」というドラマがめちゃめちゃ人気のようだからです。

自分はこのドラマの放映後に生まれていますし、当時の様子なんて知る由もないのですが、少なくともアメリカではこのドラマの影響力はとても強かったようです。その影響力を象徴する事実に、実写版ハルクの「声」の扱いがあります。

ハルクというと、バナー博士の感情が高ぶると自制の効かない緑色の筋肉巨人になるお話なんですが、このドラマ版では変身したハルクをボディビルダーのルー・フェリグノが肌を緑に塗って演じています。CGとかじゃなくて持ち前の筋肉で演じているわけですから、相当なインパクトだったんでしょうね、、、今見てもインパクトすごい。

このルー・フェリグノのハルクのイメージがとても強く残っているからか、アンリー監督が2003年に撮影した実写版「ハルク」も、そこからリブートした2008年の本作「インクレディブル・ハルク」も、声はこのルー・フェリグノが演じているのです。姿はCGでリアリティを追求しても、声はこのドラマ版から変更されていないわけですから、このドラマの影響力を垣間見る思いです。声って言っても唸ったり叫んだりするのがほとんどですけど。

さらに、インクレディブル・ハルクにはこのルー・フェリグノがムキムキなゲートマンとしてカメオ出演しているので、探してみてください。言われたら顔わかんなくても筋肉ですぐわかると思います。

このドラマの影響か、1979年にこのハルクを名前の由来にしたハルク・ホーガンというプロレスラーも現れたり、なんだか実はいたるところに影響を与えたキャラクターでありドラマだったんだな、と後追いながら影響を感じることができます。


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古典的に語り継がれるハルクの物語

いきなりドラマ版のハルクから説明しちゃって、ハルクがどういう人物なのかも説明していないので、改めてキャラクターと物語の大枠から説明しましょう。

ハルクの物語は小説のジキルとハイドをモデルにしています。バナー博士が誤ってガンマ線を浴びたことにより、感情が高ぶると緑色の筋肉巨人「ハルク」になってしまう体質になった、というのが大まかなあらすじです。

自ら望んで変身したわけでもなく、生まれついてのヒーローだったりというわけではなく、事故で身長も3メートル近いムキムキ人間になってしまい、自制も効かない悲しい側面を持った人物です。

他のヒーローと比べてもあまりにも強すぎるし、コントロールもできないので、ヒーローたちからも若干面倒臭がられたり敵っぽく描かれたりしがちです。実はコミックスでは初期の頃は灰色の肌をしており、今よりフランケンシュタイン的な見え方もしていました。(その後、印刷技術の問題でグレーの印刷が難しかったようで、緑色に変更されました。今でも格闘ゲームの2Pカラーはグレーです。)

そしてそして、何回オリジンを描き直されても、大体の物語でハルクを付け回すサンダーボルト・ロス将軍というキャラクターが出てきて、美人な恋人としてロス将軍の娘のベティ・ロスが登場し、恋人と将軍との複雑な運命に振り回される悲しい筋肉巨人の物語です。


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原作に忠実な強さの、2003年アンリー版「ハルク」

上記の通り、すでにかなりの有名キャラクターであり、また悲しい背景によりドラマのある物語も作りやすいキャラクターだったため、MCUのシリーズが始まる直前に、ハルクは一度最新のCGを駆使して映画化しています。

それが、アン・リー監督が撮影した2003年公開の映画「ハルク」です。

スパイダーマン、Xメンの影に隠れちゃって、あんまり注目されない作品になっちゃったような気がしますが、実はこの作品も大ヒットしてます。さらに、強さだけを抜き出すと、こっちの作品のハルクがあらゆる実写ハルクで最強です。

戦車(60トンくらい?)をハンマーみたいに持ち上げてぶん投げたり、跳躍ももはや数kmどころじゃなく、明らかに数十km以上跳躍してたり、さらには生身で大気圏に突入したり、怪我しても一瞬で治ったり、、、、原作通りすぎてギャグみたいな強さをしているハルクです。この強さのハルクがMCUに参戦するところが見たかった気もします。

映画としては若干間延びしすぎで退屈だし、無駄にアメコミ感出そうとしたコマ割りとか、結局あんまり悪い奴じゃない気がするサンダーボルト・ロス将軍とか、、、色々と気になるところも多いですが、主演のエリック・バナがめちゃめちゃハルクが似合っていて、CGでハルク化した時のイメージはこの映画が一番自分のハルクのイメージに近くて嫌いになれません。この役者で最強のハルクが見れるんだから、それだけで見る価値アリ、という偏愛しちゃう独特の映画です。

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不遇なMCU版、インクレディブル・ハルク

その実写版ハルクを経て、MCUの作品として2008年にリブートしたのが今作「インクレディブル・ハルク」です。

悲壮感を全体に滲ませてテンポの悪かった2003年版のハルクに比べると、今作はテンポもよく、アクションも多めで非常に見やすくなっています。戦闘シーンも2003年版にはいなかった強力な敵が現れ、アクションもこちらの方が数段良く描けています。さらには恋愛のシーンも実はアンリー版より繊細に心情を描いていて、トータルで比較すると映画としては明らかにこちらの方が見応えがあります。そして忘れちゃいけないのが、恋人ベティ・ロスを演じるリヴ・タイラーの美貌も凄まじいです。

ついでに、色々なところに他のヒーローとの接点がわかりやすい伏線として散りばめられているので、MCU作品を通った後に見ても色々と発見が多い作品ですね。今作だけ飛ばして見ている人は、一度全て通っているからこそ見直す価値がある映画になっていますよ、、、!!


そういうわけで、決して見る価値がない作品ではないのですが、今作はいくつかの理由により、他のMCU作品に比べて、結果的に価値を落としちゃった悲しい作品でもあるのです、、、

結果的に価値を落としちゃったのには色々な理由がありますが、一番大きな理由は、今作で主演を務めるエドワード・ノートンが、今作以降ハルクを演じない事が最大の不遇な点です。このインクレディブル・ハルクでは脚本にまで関わるほどの気合の入れようだったのに、、、

アベンジャーズでヒーローが集まる時にもハルクは出てくるのですが、次にハルクが出てくるときはマーク・ラファロに変更されています。これは役者のスケジュールの問題など、仕方のない事情があるとは思いながら、正直この影響で今作は見なくてもMCU作品全部理解できるような作りになってしまっているのです。。。

そう

「今作は見なくてもMCU作品は理解できる」のです

これは悲しすぎる。。

しかも、「アベンジャーズ」見たらわかるんですが、マーク・ラファロのハルクが、これまたかなり良いのです。正直、今作のエドワード・ノートンの印象を上書きしちゃうくらい良いです。。。この映画も良いんだけどなぁ、、



さらに価値を落としちゃった二つ目の理由として、「アンリー版からたった5年でリブートしちゃった」ことが挙げられます。

きっとそのせいだと思うのですが、このインクレディブル・ハルク、ハルクがどうしてこんな悲しい二重人格を背負うことになったのか、オリジンをあまり見せてくれないのです。これって、MCU作品をアメコミ作品の入門として扱おうという人たちに対して、かなり厳しい作りになっているように思うのです。


最後に、他のヒーローとの関わりや、原作との繋がりを描こうとしすぎて、この映画だけ見ても他のキャラや原作知らない人にはわけがわからないシーンが多すぎるのです、、、


うーん 振り返れば振り返るほど勿体無い作品です。


ただ、MCUを一度通った人や、原作に触れた事がある人にはオススメできる映画であることは確かです!!

今作だけは無理に順番通りに見る必要はない作品なのですが、ずーっと見ないでいるのは勿体無い、ハルクファンは楽しめる映画である!! ということは言っておこうと思います!!


なんとも語りづらい映画だ!!!!!



つづく